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ソフトバンクが粉飾決算の携帯ショップを異例の子会社化した事情

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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携帯ショップ 東京都品川区のテレニシ店舗
ソフトバンクの専業代理店、テレニシが運営するソフトバンクショップは、経営破綻を回避した。写真は東京都品川区のテレニシ店舗 Photo by Reiji Murai

ソフトバンクグループが世界の最先端分野への投資を加速する一方で、携帯子会社のソフトバンクが不可解な出資を行っていることが明らかとなった。不正会計で経営危機に陥った携帯ショップを完全子会社化したのだ。新規上場(IPO)の準備に入ったソフトバンクの内部で一体何が起こっているのか。(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 村井令二)

 全国で約2400店舗を展開する「ソフトバンクショップ」。その中で第3位の規模を持つ携帯電話ショップ運営会社が経営危機に陥り、ソフトバンクを揺さぶっている。

 それは関西を中心に82店舗を運営する携帯販売代理店、テレニシ(大阪市中央区)。4月10日付でソフトバンクがひそかに完全子会社化していたことが本誌の調べで分かった。出資金は19億5000万円で、ソフトバンクには微々たる金額。だが、キャリアが販売代理店を完全子会社にするのは異例だ。

 キャリアの出店リスクと運営コストを抑えるため、「ドコモショップ」でも「auショップ」でも、ほとんどの携帯ショップは、外部企業が運営する代理店だ。

 ソフトバンクも、銀座店や表参道店など直営店を10店舗持つが、これ以上携帯ショップを直接運営する経済的メリットは見当たらない。それでも一挙に82店舗もの携帯ショップを抱え込むことになったのは、テレニシとの切っても切れない関係があるためだ。

 テレニシは1990年に京都市のマンションの一室で創業し、95年から関西デジタルホン(後のJフォン、ボーダフォン)の携帯ショップ事業に参入した老舗代理店だ。創業者の辻野秀信社長は、ソフトバンクの宮内謙社長と同世代で「個人的な盟友関係にある」(業界関係者)とされる。

 2006年にソフトバンクがボーダフォン日本法人を買収したことで、テレニシはボーダフォンショップからソフトバンクショップにくら替えした。当時18店舗だったショップ数は82店舗まで急拡大し、ソフトバンクの専売代理店として確固たる地位を築く。

 テレニシは優良ショップとして何度もソフトバンクから表彰されてきたが、両者の関係が転機を迎えたのは昨年10月。テレニシのメーンバンクのりそな銀行に匿名の内部告発メールが届き、同社が01年から16年間にわたって架空売り上げや費用の過少計上で不正会計を繰り返していたことが発覚したのだ。店舗拡大で借り入れ依存の強いテレニシは、銀行取引を継続するために赤字決算を隠し続けてきたのだった。

 テレニシの売り上げ規模は300億円だが、これに対する直近の銀行借り入れは取引銀行26行の合計で117億円。取引銀行に不正会計の事実が伝わると、一部で資金回収の動きが出て、一挙に資金繰りの危機に陥った。

 10月中旬には、企業再生の専門弁護士が代理人となり、私的整理の一種である事業再生ADR(裁判以外の紛争解決)を申請して借入金の返済を一時停止したが、ここで不正会計の累計額が40億円、同年7月末の債務超過額は50億円に上ることが明らかになった。

「もはや法的整理しか道はない」(関係者)と思われたが、土壇場でテレニシの命脈を保ったのがソフトバンクの支援だった。

 ソフトバンクは11月の段階で早々に支援方針を固め、最終的に出資と融資を含めて30億円超の資金拠出を決定。キャリアから代理店に支払う販売手数料も増額し、ソフトバンク本体から経営改革推進室長の室木達哉氏や、LINEモバイルの取締役も務める高洲史弥氏などエース級人材を役員として派遣し、一代理店にすぎないテレニシの経営再建に深く関与する。

携帯ショップの苦境深刻
第2、第3のテレニシも
店舗の再編・淘汰が課題に

 これにより倒産を回避。今年3月末までにADRの再生計画は銀行団の同意を得て、ソフトバンクの完全子会社化に至った。

 不正会計で経営が傾いた代理店を丸ごと抱え込む投資に踏み切ったソフトバンクには、「テレニシは大き過ぎて潰せない」(関係者)という苦しい内情がある。

 さらに、もともとテレニシの経営危機は、ソフトバンクの販売施策に合わせて、既存店舗の大型化投資や新規出店投資がかさんだことも一因だ。

 実は、再建の協議の中で、不正会計に手を染めていた野社長が、一族で2億円近くの報酬を得ていた事実も露呈しながら、同社長は留任が決まっている。経営権を取ったソフトバンクには放漫経営で会社を危機に陥れたオーナー社長に対するガバナンスが問われる。

 この救済劇で浮き彫りになったのは、スマートフォンの成長で拡大してきた代理店が、スマホ市場の飽和を迎え、一転して経営が苦境に陥っているという実態だ。キャリアが高い収益を確保する一方、携帯ショップの経営は厳しさを増しており、テレニシに続く代理店の危機の表面化が懸念される。

 ソフトバンクは、テレニシ出資の事実を適時開示していない。だが、不正会計で経営危機に陥った代理店を救済するという経営判断は、上場準備を進める会社として自ら積極的に公表し、説明責任を果たすべきだ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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