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中国語を話せる社員が1000人突破、伊藤忠商事の課題

2018年04月16日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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中国語人材1000人の計画を達成した伊藤忠商事。東京本社で行われた記念集会では約700人の社員の他、中国の程永華駐日大使、CPグループ副会長、CITIC副社長らも出席した

「日本中を見渡して1000人の社員が中国語を話せる会社は例を見ない。非常に誇らしく思う」(岡藤正広・伊藤忠商事会長)

 伊藤忠商事は4月13日、中国語を話せる社員の数が、総合職の3分の1にあたる1000人を超え、記念集会を開いた。

 当日は中国語を学んだ社員約700人の他、中国の程永華駐日大使、アジア有数のコングロマリットであるタイのCPグループ副会長、中国政府系企業で、金融やエネルギー、製造業など多岐にわたる事業を展開するCITIC(中国中信集団)副社長らが出席した。

 真っ赤に飾られた壇上には日中両国の国旗が掲げられ、中国語の司会進行とともに、伊藤忠の鈴木善久社長の音頭により紹興酒で「ガンペイ(乾杯)!」。程駐日大使は挨拶で「まるで中国にいるようだ」と満足気な表情を浮かべた。

 岡藤社長自らが旗振り役となって「中国語人材1000人育成プロジェクト」を始めたのは15年のこと。背景にあるのは伊藤忠商事、CITIC、CPグループの3社が15年1月に業務・資本提携契約を締結したことだ。伊藤忠とCPはそれぞれ6000億円をCITICに出資した。

「業務・資本提携を成功させる上で何よりも重要なのがコミュニケーション」(人事・総務部)として、3社間での意思疎通を図りビジネス創出に結び付けることを狙い、18年3月末までに、中国語人材を当時の361人から1000人へ増やすことを目標に掲げた。

 なお、伊藤忠がいう中国語人材とは、中国政府公認の中国語検定試験「HSK」の合格者のこと。伊藤忠では中国語のレベルを、HSKの級によって初級・中級・上級に分類。1000人の内訳は、ネイティブレベルの会話ができる上級者が2割、ビジネスでのコミュニケーションができる中級者が3割、日常会話ができる初級者が5割となっている。

求められる中国語人材の有効活用

 中国語人材を育成するため、伊藤忠は社員に対して三つの支援を行ってきた。

 一つ目は中国語圏への派遣研修の強化だ。

 伊藤忠ではもともと二つの海外研修制度がある。一つは05年度から始めた「海外特定地域派遣」で、海外での語学、商習慣、市場、法律などの高度な専門知識をもつスペシャリストの育成を目的とし、語学研修と実務研修をセットとして2年間の派遣を行うもの。

 もう一つは10年度から始めたJOT-M派遣という海外語学研修で、これは若手社員の語学力向上やグローバルマインドの習得を目的として約6ヵ月、中国語圏へ派遣する制度だ。

 これら二つの制度による派遣人数は10年度から14年度までの5年間で30名程度だったが、中国語人材の育成計画が始まった15年度以降は人数枠を広げ、毎年45人以上を派遣してきた。

 二つ目が中国語レッスン費用の支援強化だ。従来は受講料の一部は個人負担だったが、15年度からは中国語レッスン受講料及び受験費用を全額会社負担とした。

 そして三つ目は中国語を使う場の提供だ。16年からの朝型勤務にあわせて、朝食をとりながら中国語の時事ネタなどを話し合う「朝活中国語カフェ」を実施している。

 こうした取り組みに加えて、各カンパニーでの独自研修や海外駐在員向け研修など、さまざまな機会を設けることで、全社として中国語人材の育成を強化してきた。

 だが、中国語人材は1000人を越えたものの、現在のところ、中国語を毎日の業務で使う社員の数は、現地駐在員などの150人程度にすぎない。

「中国語人材が増えたことで、業務上のコミュニケーションが活性化し、人員配置の選択肢が広がった」(人事・総務部)とはいうものの、せっかく身に着けた語学力も、使う機会がなければあっという間に錆ついてしまう。

 CITIC、CPとの業務・資本提携からすでに3年以上経つが、いまだ3社による大きな協業の案件はなく、投資家などからは早期の成果を期待する声が高い。さらに今後は社内の1000人超の中国語人材からも、活躍の場を求める声が高まりそうだ。

(週刊ダイヤモンド編集部 松本裕樹)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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