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職員会で吊るし上げ、羞恥刑…教職のブラック化が学校を荒ませる

2018年04月12日 06時00分更新

文● 岡田光雄(ダイヤモンド・オンライン

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学校教育のブラックぶりがクローズアップされている。しかし、これを「質の悪い教員が増えている」と考えるのは、少し短絡的だ。カウンセリングサービス所属の心理カウンセラー・近藤あきとし氏に、教育現場に蔓延するブラックの真相を聞いた。(清談社 岡田光雄)

経済の長期低迷により
日本全体がブラック化

.今、教員の職場環境はブラックになっている。子どもへのブラック対応を糾弾する前に、教職のブラック化を改善しなければ根本解決にはならない

 東京都中央区立泰明小学校がアルマーニの高級服を標準服に導入した問題や、大阪府立高校が、茶色い地毛の女子生徒に対して黒染めを強要した問題など、「ブラック校則」が話題となっている。

 近年はいたるところで、このように頭に“ブラック”が付く言葉を聞くようになった。「ブラック」+「企業、社員、バイト、校則、教師、部活」など枚挙にいとまがない。

 これらのブラックシリーズには、“理不尽の強要”という共通性がある。

「今や日本そのものが“ブラック化”しており、人々は何らかの理不尽を強いられて不安を抱いているようです。ほとんどの人は心に余裕がなく、自分が攻撃されないために責任を押し付けたり、犯人探しに注力している状況にも見えます。ブラック企業でよくある“吊るし上げ会議”や、芸能人の不倫叩き、度重なるCM炎上なども、その一連の現象かもしれませんね」(近藤氏、以下同)

 近藤氏は、「これらの連鎖が始まった主な発端は、日本経済の低迷にあるのではないか」と考えている。1991年のバブル崩壊以降、日本はデフレ不況に陥り企業業績が悪化。派遣切りなども相次ぎ、人々の心に余裕がなくなっていった。経済不安はやがて、人々の生活や教育の場にも浸食していったのだ。

多層ブラック構造の教育現場
うつ病にかかる教師が急増

 特に最近、ブラックが問題になるのが教育現場だ。昔から厳しい校則は存在したが、ここ最近になって生徒や保護者、メディアの追求も激しさを増してきた印象だ。

「学校は、保護者やマスコミからの抗議に敏感で、新しいものを取り入れることに臆病になっている傾向にあります。多くの学校は、変化することをリスクと考えており、何十年も前の価値観のまま、茶髪や恋愛禁止などの校則が残っている状況です」

 変化を恐れるがあまりに古臭い校則にしがみつき、逆に「ブラックだ」と抗議されるという悪循環に陥っているのだ。それほどに、今の時代の学校や教師は、常に保護者をはじめ世間から監視カメラを向けられ、怯えているとも言える。少しでも異端な行動をとれば、先のアルマーニ標準服問題のように大炎上する危険性を孕んでいる。

 しかし、世間や保護者の厳しい監視は、学校を良い方向には向かわせていない。学校内にそういった恐怖心が芽生えると、企業と同じように職員会議でも、吊るし上げ会議が開催されるからだ。

「やる気のある若手教師は学年主任に叱責され、学年主任は教頭に、教頭は校長に、校長は親や教育委員会に責められ…と、圧力が多層構造で連鎖しています。その結果、教師は追いつめられていき、心身を病んでしまってカウンセリングに来るケースも珍しくありません」

 文科省によれば、公立学校教員の精神疾患休職者は、1990年度は1017人だったが、2014年度は5045人と、5倍近くに膨れ上がっている。

 そして教師だけではなく、やがてそのしわ寄せは生徒にも行ってしまうのだ。

無意識のうちに生贄を探す
ブラックマインドを養成

「よく特定の生徒に対して、みんなが見ている前で叱責する“羞恥刑”を行う教師がいます。そんな教師も、普段から職員会議や保護者会で吊るし上げられていたり、そうされている同僚を見ている立場なのかもしれません。そうなると、心理的に攻撃する側に回らなければ、自分も同じ目に遭うのではないかと強迫観念に駆られ、無意識的に生徒をスケープゴートにしてしまっているという現実もあるのでしょう」

 こういった心理状態の教師と接すれば当然、生徒にも悪影響が出てくる。

「教師が特定の生徒に羞恥刑を行った場合、それと同じことを生徒同士もしてしまい、イジメに繋がる危険性もあると思います。そうなると生徒は、いつ羞恥刑をされるかも分からない教師に対して、従順になり“忖度”ばかり覚えてしまう。その結果、上司の理不尽に対して “NO”と言えず、自分が助かるために弱者を貶めるような大人に成長してしまうことも考えられるのです」

 近藤氏によれば、同様のことは過干渉な家庭に育った子どもにも言えるという。

 親が何でも先回りして正解を用意してしまう家庭で育った子どもは、すべてにおいて受け身になってしまう。また、頻繁に親からダメ出しをされて育つため、“いい子にしていないと誰からも愛されない”と自己肯定感がどんどん低くなっていくのだ。

保護者はクレームではなく
教師の待遇改善を訴える

 この悪しき連鎖を断ち切るにはどうしたらいいのだろうか。

 近藤氏は現実的な解決策として、まずは保護者が教師の苦しい立場を理解することが大切だという。もちろん言葉の暴力を含め、教師の横暴は許されるものではなく、処分されて然るべしだが、それを糾弾するだけでは根本的な解決にはならない。

 教師という職業自体が非常にブラック化しているという現実に目を向けずに、単に教師を責めるだけでは、さらに重圧がかかるだけ。この悪循環からは、良い教育現場は生まれるべくもない。

「保護者は、教育委員会に対してクレームを入れるよりも、学校の人材不足の解消や教師の待遇改善を求める声を上げることで、事態を改善する方向へ進めてみてはどうでしょうか。教師が生徒を一律管理する今の教育方針を変え、生徒一人ひとりに注力するには、どうしても人員が必要です。それが解決されれば、教師はストレスから解放されて今以上にパフォーマンスを発揮でき、生徒も健やかに育っていくと、私は思います。そして、学校と保護者が、どうしたら手を取り合い協力することができるのか、を考えてみることが必要かもしれません。その道を模索していくことが、本当の意味で“子どもたちを守る場を創ること”に繋がるのではないでしょうか」

 メディアを通してよく目にする、“学校vs保護者”の対立構造だが、一番被害を被るのは板挟みに遭う生徒だ。そして子どもは着々とブラック社員の素養を身につけていく。このブラック化した社会を息苦しいと感じるなら、まずは未来を担う子どもたちを、理不尽極まりない環境から救い出さなくてはならない。そのためには、教職のブラック化を見直すことが、一番の近道なのだ。

<近藤あきとしのオフィシャルブログ>
http://blog.livedoor.jp/cs_akitoshi/


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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