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タイ向け防空レーダー輸出の成否、安さと脱・過剰品質が鍵

2018年03月27日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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日本が輸出を目指す防空レーダーFPS-3。戦闘機に加え、ミサイルも探知できるよう改良された 写真提供:航空自衛隊

 タイが3月に行う防空レーダーの入札に三菱電機が参加する。日本政府もレーダーの運用支援などで提案に加わる。安倍晋三首相の肝いりで始まった武器輸出は掛け声倒れに終わっている。相手国のニーズを見誤った過去の反省を踏まえ、売り込みを成功させることができるか。官民の提案力が問われている。

 輸出を目指すレーダーは航空自衛隊が1991年から運用する「FPS-3」だ。26年間にわたって敵の戦闘機や弾道ミサイルを監視してきた実績があり、「性能は申し分ない」(元航空自衛隊幹部)。

 タイ政府は早ければ4月にも結論を出す。FPS-3が選ばれれば日本初の本格的武器輸出となる。

 政府は2014年に武器輸出の要件を緩和したが、その後、オーストラリアへの潜水艦輸出に失敗。この他にインドには救難艇、ニュージーランドには空から潜水艦を探知する哨戒機を売り込んだが契約には至っていない。

 タイに輸出を目指すレーダーの価格は10億円超とみられ、総額4兆円超だった対豪潜水艦輸出に比べて小粒感は否めない。

 だが、「輸出できれば同系レーダーの連続受注や戦闘機との通信、情報処理装置の受注など波及効果が期待できる」(政府関係者)。撤退する企業さえある斜陽の国内防衛産業にとっては朗報になる。

脱ガラパゴスの提案必須

 とはいえ、タイへの武器輸出実績がある欧米のメーカーに勝つのは容易ではない。

 入札で勝利するには相手国のニーズを察知し、柔軟に対応することが欠かせない。豪州への潜水艦の売り込みでは同国の優先事項が途中で安全保障から潜水艦の現地建造による雇用創出にシフトした。この変化への対応が遅れ、日本勢はフランス企業に敗れた。

 タイへのレーダー輸出の結果を左右するのは、ずばり価格だ。

 政府関係者は「中国の奥地まで監視する必要はないといった先方のニーズに合わせて機能をそぎ落とし、価格を下げる必要がある」と話す。過剰品質と高価格は、水道、鉄道などのインフラ輸出でも日系企業が苦戦する要因だった。こうした教訓を武器輸出で生かす必要があるというわけだ。

 また、タイへの輸出では運用支援も重要になる。FPS-3は数百個の小型レーダーの集合体であり、個々のレーダーの補修が必要だ。使い方を教えるといった自衛隊の役割も含め、官民でどう運用をサポートするかが焦点だ。

 今回の案件をめぐっては、技術漏えいリスクや、タイへの影響力を強める中国の妨害を懸念する声もある。だが、そうした難題をクリアできなければ、そもそも武器輸出などできない。コア技術をブラックボックス化したり、他国軍隊への技術協力で関係を深めたりといった既存の武器輸出国が行ってきた安全保障戦略が、難問を解く鍵になる。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 千本木啓文)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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