このページの本文へ

日生は総額300億円!大手生保が運用難でも契約者に還元する事情

2018年03月13日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷
日本生命保険は700万件の有配当の個人契約を対象に、300億円に上る大規模な増配を計画している Photo:JIJI

大手の生命保険会社が相次いで、既契約者に大規模な増配方針を打ち出している。その姿には、どこを主な対立軸として戦略を練っているかという各社のスタンスが如実に表れている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 中村正毅)

 生命保険業界で今春、大きな焦点となっていた長寿化(標準生命表の死亡率の改善)に伴う保険料率の改定。各社が頭を悩ませた末に料率の見直しを相次いで発表する中で、話題をかっさらっていった企業がある。最大手の日本生命保険だ。

 日生は4月以降、新規の契約者に対し定期保険を中心にして死亡保険の保険料を平均で12%、最大で約24%引き下げると打ち出したのに続き、既契約者の個人への還元策として、実に300億円にも上る増配を固めたことが明らかになったからだ。

 対象は有配当の個人保険契約の5割弱に当たる700万件で、2006年度以来11年ぶりの大規模な増配になる見込みという。

 日本銀行のマイナス金利政策の導入による運用難で、厳しい経営環境に置かれる中にあっての大規模な増配は、日生が誇る強大な財務体力をこれでもかと見せつけているかのようだ。

 既契約者への利益還元をめぐっては、監督当局の金融庁が日生をはじめとした相互会社に対し、「配当を絞って内部に資本としてため込み過ぎている」(幹部)という問題意識を、業界団体を通じて繰り返し伝えてきた経緯がある。

 ここ数年、ため込んだ内部留保を海外資本の企業買収に活用する場面が増え、契約者利益を最優先にという相互会社の意義が揺らぎ始めてもいたが、今回の大規模な増配によって、そうした懸念を霞が関に向かって吹き飛ばそうとしているようにも映る。

 一方で、大手生保の中で唯一、相互会社から株式会社に転換した第一生命保険はどうか。

 第一は、死亡率の改善に伴う収益増を約400万件の契約者に増配で還元する方向だが、運用難による減配分約145万件と相殺するかたちで、トータルで見ると配当はほぼ横ばいになる見込みだ。

 相互会社の日生のように契約者配当で分かりやすく恩恵を魅せられない分、こだわったのが業界初と銘打った「健康増進型」の新商品の投入だ。

 新商品は、健康診断書を提出するだけで最大10%、体格指数(BMI)や血圧、血液の状態など健康状態によって、さらに最大10%の保険料を割り引くのが特徴だ。年間約100万件に上る新契約のうち、約6割が割引の対象になる見通しだという。

 医療保険分野でも踏み込んだ。長寿化によって医療費がかさむリスクが高まり、医療保険に値上げ圧力がかかる中で、日生をはじめ生保の多くは値上げ分をのみ込むかたちで保険料をほぼ据え置くものの、第一は逆に、平均2%保険料を下げるというからだ。

 入院日数が年々減少する傾向にあり、長寿化でも保険金の支払いは抑えられると判断したことに加え、運用難によって生保の主戦場が、貯蓄性(投資性)商品から医療保険に移りつつあるため、ここがまさに勝負どころだとみているわけだ。

 そうした中、第一は今回、長寿化による死亡保険料率の改定部分について、一切開示していない。対外的には新商品に織り込んであるためだと説明するが、そこには日生をはじめ競合他社と、改定に伴う割引率で単純比較されることを避けたいという思いが、色濃くにじみ出ている。

料率改定で崩れた横並び意識

 そうした上位2社の出方をうかがい、「後出し」で反転攻勢をかけようとしているのが、明治安田生命保険と住友生命保険だ。

 住生は今夏に、健康状態によって保険料を割り引く大型新商品の投入を予定。明治安田は来年4月、BMIや血圧などの数値を基に健康状態を測り、2段階で保険料をキャッシュバックする健康増進型の新商品を計画している。

 明治安田は既契約者に対して、有配当の個人契約の4割に当たる300万件を対象に増配する方針で、規模は過去2番目に大きい70億円に上る見通しだという。住生も同じく、増配によって既契約者には還元をするとみられている。

 生保による増配方針は、大手3社だけでも合計で約1400万件に上る計算で、国内の保険契約者の多くがその恩恵を受けることになる。

 その一方で、これだけの大規模な増配は生保各社にとって「寝た子を起こす」可能性もある。これまで関心が薄かった契約者たちが一部で契約の切り替えに動きだし、流動化する部分が少なからずあるからだ。

 保険料の値下げや新商品によってどこまで顧客をグリップし、きっちりと囲い込めるのか。大手4社の異なる対立軸が、今回はもろに商品戦略の大きな違いとして表れるかたちとなり、横並びが崩れた分、今後はっきりと明暗が分かれることになりそうだ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

カテゴリートップへ

最新記事
最新記事

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

アスキー・ビジネスセレクション

ピックアップ