公共とシェア
シェア○○の多くは、個人が持たないことによって、無駄なコストを排除したり、結果的に街の中のリソースが最適化されるという考え方です。つまり、利用者の母数が多ければ多いほど、その最適化が成立しやすくなっていきます。
Uberは都市の中で移動したいという人と、一定の数のドライバーのなかでマッチングを行ない、現状「便利なサービス」という位置に落ち着いています。しかし、1人の彼氏を2人の彼女でシェアする場合、おそらく最適化し続けることはないでしょう。
恋愛の場合、母数を増やしても成立しないので、あまり良い例えではないかもしれませんが、昨今の恋人探しのアプリは、街の中、あるいは同じ趣味と、自分の交友関係の外側を探すことで、良い相手を見つけやすくする点では、母数の話も当てはまるのかもしれません。
恋愛の話は冗談にしても、多くのシェア○○は、パブリックなモノのコストを限りなくゼロとして計算している点が問題です。
もちろんそこで暮らしている人たちの税金で成立しているサービスですから、すでに支払いが済んでいるリソースと捉えることもできるかもしれませんが、シェア○○による新しい行動がそこに織り込まれているかどうかは問題になります。
前述のFord GoBikeの場合、ステーションは道路のパーキングスポットを2~3台分潰して設置しています。通常では特に気になりませんが、繁華街の夕食時に駐車スペースが足りていない場所では、やはり自動車の利用者にとって駐車スポットを奪われたと感じるでしょう。
LimeBikeも、数が増えれば便利でしょうが、やはり駐輪スポットの奪い合いが展開され、これまで自転車を好んで利用してきた人にとっては、邪魔な存在になってしまいます。
シェア○○が出始めた頃は、サービス側も台数を増やして利便性を高め、利用者を増やさなければならないため、一時的に都市の中での自動車や自転車の台数が大幅に増大することになります。
もし人々のライフスタイルをシェア○○依存へと変化させることができれば、それが最適化の結果として表れます。しかし、個人所有とシェアの対立が激化していけば、最適化が働かず、都市の中にあるモノがあふれて状況がより悪化することになります。
クルマも自転車も、シェア vs. 所有の対決が同時進行している現在、どこかでキャパシティの限界を迎える都市が出てくるかもしれません。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
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