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ANAの中距離LCC進出に立ち塞がる難題「バニラとピーチの統合」

2018年02月08日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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「世界をリードするエアライングループ」を掲げ、路線網を拡大強化するANAホールディングス。新しい中期経営計画では、伸び盛りのアジア市場を開拓しようと、傘下のLCC(格安航空会社)事業で中距離路線への進出を表明した。しかし同事業にはそれ以上の“難題”が潜んでいる。(週刊ダイヤモンド編集部 柳澤里佳)

バニラエア(左)とピーチ・アビエーションの統合が検討されている

「目玉」であるはずの割に、いささか“中途半端”な内容だった──。社内外でこう指摘されているのが、ANAホールディングス(HD)による中距離LCC(格安航空会社)への進出だ。同社は2月1日、2018~22年度の中期経営計画を発表。売上高2兆4500億円を目指す中で、引き続きANAの国際線を拡大するのに加え、100%子会社のバニラ・エアと67%を出資するピーチ・アビエーションの、LCC2社が連携を強化し、中距離路線を始めると打ち出した。

 従来のLCCは片道が長くても4時間程度、同一機種を効率よく回し、機内サービスを簡素にして低価格を実現してきた。対して20年に始める中距離は7~8時間を想定し、これに合わせて新たに専用機材を導入するという。

 機材については従来、中距離には中型機の使用を前提に検討してきたが、「小型機でも長く飛べる機材が出てきた」(ANA幹部)ため、エアバスA320やA321シリーズなどの小型機でスタートする。中型機なら250席程度だが、小型機なら180席程度。「大風呂敷を広げず、手堅く進める発想に軌道修正した」(航空評論家)。

 ところが、である。進出時期や機材についてこれだけ表明しておきながら、具体的な路線や、肝心なバニラとピーチ、どちらの会社が運航するかについては未定のまま。これには業界関係者も首をかしげる。2社の状況から考えると、「自明の理」であるからだ。

 そもそもANAHDのLCC戦略は、一定の需要がありながらもANAでは採算が合わない都市に、LCCが飛ぶことでグループのネットワークを世界に張り巡らせる狙いがある。これにのっとれば、関西国際空港を拠点にするピーチが東南アジアへ就航するのが有力だ。関空から同方面にはANAの直行便がなく(他社とのコードシェア便を除く)、グループの空白領域を埋めることができるからだ。

 それでも“中途半端”な発表に終わったのには、どうやらバニラとピーチの統合問題が関係しているもよう。「グループ内に二つあるLCCを一つにするべきか否か。しばらくは二つかもしれないが、時間の問題である」(前出のANA幹部)。ANAHDにはLCC事業において中距離進出という課題の他に、かねてこの統合問題があり、水面下では2社を統合させた新会社に中距離を担当させる案も検討していたとみられる。

 2社の統合が検討されるのはなぜか。それは同じ12年に就航したものの、バニラがピーチの後塵を拝しているからに他ならない。

 2社の直近の業績を比較すると、ピーチは売上高517億円、最終利益62億円。同社は関空を拠点に、若い女性を狙ったマーケティングが奏功し、国内外に路線を伸長。LCC市場で善戦している。

 一方のバニラは売上高239億円で7億円の営業損失。同社はもともとANAと、マレーシアのLCC、エアアジアの合弁会社として発足したが、就航から1年もたたず合弁を解消。ANAHDが全株を引き取り、社名変更して営業を続けてきた。しかし業績は鳴かず飛ばずで、「路線や価格設定、運航の効率化など、LCCとしての際立った強みを育てられていない」(競合関係者)との指摘が多い。

 急成長したピーチを取り込もうと、ANAHDは昨春、300億円を投じてピーチへの出資比率を引き上げて子会社化。これをピーチが「主」でバニラを「従」とした統合への布石とみる向きは多い。

統合で懸念されるパイロットの流出
社風の違いもネック

 こうした理由から統合問題にさらされてきたバニラとピーチ。しかし一緒になるには「2社のカルチャーや運航ノウハウがあまりにも違う」(同)。ベンチャー気質のピーチと、ANAという後ろ盾があるバニラでは、社内の雰囲気が大きく異なる。それはオペレーションにも表れており、例えば客室乗務員の接客スタイル一つとっても、ピーチは非常にラフでフレンドリー。対してバニラは従来型の「おもてなし」を心掛けている。

 他にも重大な懸念事項がある。統合に際して仮に関空拠点のピーチに寄せるとなると、成田国際空港を拠点にするバニラのパイロットや整備士が、成田を拠点にするLCC、ジェットスター・ジャパンなどへ流出する可能性が高いのだ。

 航空業界ではパイロットや整備士が不足しており、企業間で熾烈な取り合いになるほど。ジェットスター・ジャパンは「好条件」と業界では有名だ。同社は豪カンタス航空と日本航空の合弁会社。ANAグループは貴重なパイロットや整備士を失い、かつ敵に塩を送ってしまっては元も子もない。

 一筋縄ではいかない統合問題だが、アジアにおける競合LCCの事業展開スピードは加速するばかり。決断の時は迫っている。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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