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キリン買収も!?世界ビール最大手が日本市場攻略に本腰

2017年12月18日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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これまでアサヒが取り扱ってきた「バス」「ヒューガルデン」は、来年1月からアンハイザー・ブッシュ・インベブに販売移管。世界ビール業界の巨人が日本史上への攻勢を強めている Photo by Akira Yamamoto

「コロナ」「バドワイザー」に「ヒューガルデン」。ビール通でなくとも聞いたことがあるであろう有名な海外ビールの数々。これらのブランドを保有するのが、アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABI)だ。世界シェア3割を誇る巨大企業が今、日本市場で着々と足場を固めつつある。(『週刊ダイヤモンド』編集部 山本 輝)

「ヒューガルデン」など自社ブランド
ABIジャパンが直接販売

 ひっそりと取引先へ送られた一通の通知文書。そこに記されていたのは、ビール最大手アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABI)の日本法人であるABIジャパンが、自社ブランドのビールである「ヒューガルデン」「ステラ・アルトワ」「レフ」について、来年1月から日本での販売を直接担うということだった。それ自体は、自然な成り行きではあった。

 背景には、アサヒグループホールディングスが昨年から今年にかけて行った欧州のビール事業の買収がある。

 従来、ヒューガルデンなど上記のブランドは、アサヒが輸入し、国内でライセンス販売を手掛けていた。だが、アサヒは約1兆円もの巨費を投じてABIから欧州事業を買収した。買収で獲得したイタリアの「ペローニ」やチェコの「ピルスナーウルケル」など欧州の有力ビールブランドについては今後、日本において自社販路で展開することを検討している。

世界の超大手のABI
日本市場で存在感薄く

 ここで問題となるのが、アサヒの海外ブランド内での“競合”だ。例えば、ステラ・アルトワとペローニは、風味などがよく似ている。海外ブランドのポートフォリオを整理するために、アサヒは契約満了のタイミングで10年近く手掛けてきたヒューガルデンなどを手放す決断をした。

 これはABIにとって“好都合”だった。世界では超のつく大手であるABIも、国内メーカーが圧倒する日本市場では存在感が非常に薄い。

 そんな中で15年に設立されたABIジャパンは、クラフトビールの「グースアイランド」などを展開、今年に入ってからは、主力ブランドである「コロナ」を7月から自社販売に切り替えるなど、いよいよ攻勢を強めてきた。ABIジャパンの陣容は、営業や輸入のオペレーションを中心に50人強に達している。

「コロナブランドだけではできることに限りがあり、次の成長にはポートフォリオの拡大が重要だった」と、ABIジャパンのトゥーン・ヴァン・デア・ヴィア社長は言う。

 日本のビール市場は、1994年をピークに大幅に縮小しているが、消費の二極化が進む中、高単価のプレミアムビール市場は数少ない有望市場だ。国産プレミアムビールの市場シェアは、17年に15.2%になる見込みで、10年前から約5ポイント増加している(サントリービール調べ)。また、単価の高いベルギービールで見ると、16年のベルギーからの輸入量は約4000キロリットル。10年と比べ64%も増加している(財務省貿易統計)。

 ABIは日本人にとって特にプレミアムイメージの強い輸入ビールで強力なブランドを持つ。故にプレミアム層の開拓余地が十分な日本市場は魅力的な市場。「プレミアムブランドで、ビールに対するエキサイトメント(楽しみ)を作っていく」(トゥーン社長)と鼻息は荒い。

キリンからバドワイザーを奪うのか
キリンそのものを狙うのか

 ABIが日本で直接手掛けていない有力自社ブランドはほかにもある。現在キリンビールが販売する「バドワイザー」だ。あるビール業界関係者は、「ABIの日本攻略が進めば、一番の主力ブランドであるバドワイザーも直接手掛けるのでは」と観測する。

 当のキリン幹部は「バドワイザーは、ABIの他の主な製品と違い、キリンが国内で生産するもの。ほかに作る工場はないし、海外から輸入するのも現実的でない」と一蹴する。

 キリンにとってもっと耳障りなのは、ABIがキリンを買収するのではという見方だ。ABIは、M&Aを繰り返すことで巨大化してきた企業である。16年には、約10兆円で世界2位の英SABミラーを買収した。その性格は投資会社のそれに近い。

 攻めあぐねるアジア、とりわけ日本市場において、ABIが買収を仕掛けてくる可能性は否定できない。「今年SABとの合併で手放した東欧事業を買ったアサヒは、再び欧州でのシェアの面で独占禁止法に触れる恐れがあり買収は難しい。であればアジアにも基盤のあるキリンしかない」と前出の関係者は言う。

 キリンホールディングスの磯崎功典社長は、ことあるごとにABIとの良好な関係をアピールしてきた。「年に1回はABIのカルロス・ブリトCEOと面談をするし、ABIのM&Aは成長性のある市場でというのが基本だ」(磯崎社長)と、買収の可能性を歯牙にもかけない風ではある。

 とはいえ、ABIがその気になれば、時価総額2.5兆円程度のキリンを買収することはたやすい。この額には医薬事業などが含まれているので、ABIにとって本流のビール事業は最終的により少ない額で買えるだろう。

 ABIジャパンの役割について「日本での営業だけでなく、日本でのM&Aのための“市場調査”を担うのではないか」と見る向きもある。実際にはM&Aを仕掛ける機能はないにしろ、日本市場開拓の橋頭堡となっていることは間違いない。

 世界最大手が日本攻略に本気を出してきた以上、日本のビールメーカーは否応なく巻き込まれていく。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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