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その地域で変わらない暮らしを送るために、kintoneで住民のつながりと自治を取り戻す取り組み

住民を“チーム”に!「ポストコンパクトシティ」に挑む益田市

2017年12月11日 08時00分更新

文● 重森大 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 11月8日、9日に開催されたCybozu Days 2017のテーマは「壁を超える」だった。超えなければならない壁は、まだ世の中にいっぱいある。その中のひとつが、“限界集落”や“消滅可能性都市”と呼ばれる地域を、どのようにして持続可能な地域に変えていくかというものだ。都市のサイズ自体を小さくして効率化する「コンパクトシティ構想」が提唱されているなかで、島根県にはまた別のアプローチで、限界集落の持続可能性を高めるチャレンジを行い、壁を超えようとしている自治体がある。

人口減少に歯止めがかからない地方自治体の新たなチャレンジ

 「持続可能性を追求する島根県益田市の地方創生 ~クラウドが支援するポストコンパクトシティ~」と題したセッションで、島根県益田市の取り組みを紹介したのは、サイボウズ 社長室 フェローの野水克也氏だ。このセッションのテーマは「持続するためのチームワーク」である。

 野水氏はまず島根県の現状を、人口減少という観点から説明した。

 「もう何年か前のことですが、『島根県の人口が70万人を下回った』というニュースがありました。70万人というと、東京都の大田区と同じくらいだと言えばわかりやすいでしょうか。平成25年に大正9年当時の人口を下回り、島根県の人口はいま、明治時代と変わらないほどにまで減っています」(野水氏)

サイボウズ 社長室 フェローの野水克也氏

 益田市は、そんな島根県の中で最も広い自治体だ。山口県に接する西端にあり、広大な面積に小さな集落が散在している。年齢別の人口分布を見ると、子供と高齢者の多さが目立つ。よく「少子高齢化問題」と言われるが、益田市には子供はいるのだ。だが、成長すると都会に出て行ってしまうので、労働人口となる世代の減少が止まらない。

 「東京の高齢化が抑えられているのは、地方から若者が来るからです。逆に言えば、地方が栄えて子供が増えなければ、東京も将来的には労働人口を確保できなくなるということです」(野水氏)

 また地方では、高齢者の一人暮らしがコストが増大させている。男性のほうが平均寿命が短いため、女性高齢者の一人暮らしがどうしても増えてしまうのだ。これは個人で対処できるレベルの話ではなく、チームで解決しなければならない課題だと、野水氏は強調する。

 ここで益田市長、山本浩章氏のインタビュービデオが流された。山本市長は、益田市では人口の減少に歯止めがかからず、社会インフラの維持が難しくなっているため、平成26年に人口拡大計画を策定したことを説明する。具体的にはUIターンの促進や、地域自治組織の設立によるコミュニティビジネスの始動などに取り組んでいるという。

 「地域の議題に対して地域の住民が共通の認識を持ち、日頃からコミュニケーションを密にし、意志決定や伝達のスピードを上げていきたい。そのようにして細かくつながった地域が、益田市全体に広がっていけばいい」(山本氏のインタビュービデオより)

 広い地域に少ない人口が分散して生活すると、生活コストが上昇する。それを抑えるアプローチのひとつが、生活圏自体を小さくするというコンパクトシティの構想だ。しかし、益田市はその道を進まず、分散するそれぞれの小地域をチームとして、そのチームどうしがつながって市を運営していけばいいと考えた。これが、セッションタイトルにも含まれる「ポストコンパクトシティ」の考え方の要となっている。

「人と人、地域と行政の関係性を作り直す」行政と民間の代表が語る

 市長のインタビュービデオののち、野水氏に紹介されて登壇したのは益田市役所 人口拡大課で課長補佐を務める岡崎 健次氏。人口拡大課では、単純に人口を増やすことだけではなく、多様な関係性を維持することで市民の暮らしを守っていくことも重視しているという。

 「住民どうしの関係性が希薄になり対話が減ったことや、価値観の違いから、地域の共助が減っています。また、これをサポートする行政の側にも縦割りの対応という問題があります。地域の人と人、地域と行政の関係性を作り直すことで、この2つの問題を解決できるのではないかと考えています」(岡崎氏)

益田市役所 人口拡大課 課長補佐の岡崎健次氏

 人口拡大課は、行政側の縦割り対応を改善して横串で課題に当たるために設立された。しかし、組織を作っただけでは地域との協働は難しかった。地域住民が行政と対話するための時間を作るのは容易ではないし、とりまとめに当たる事務局には情報が集中し、調整や資料作成に追われることになったという。そんなときに出会ったのが、サイボウズの「kintone」だった。

 「それまで情報は一方通行に流れていました。しかしクラウド化により、時間と空間を超えて、情報量が一定に保たれるようになったのです。職員の笑顔が増え、仕事のストレスも減りました。なにより、役所でとりまとめに当たっていた私が一番楽になりました」(岡崎氏)

 情報にアクセスしやすくなったこと、kintoneではアプリ開発が簡単なことから、若手職員からも改善提案が出てくるようになったという。地域との連携を密にするとともに、岡崎氏らの職場の業務もスムーズに動き出したのだった。

 続いて野水氏に紹介され登壇したのが、一般社団法人 小さな拠点ネットワーク研究所の檜谷 邦茂氏だ。小さな拠点ネットワーク研究所とは、小さい地域や集落の問題を調べたり、解決に必要なマーケット調査を行なったりしている団体だ。

 「益田市の課題はいくつもあります。増える空き家、減っていく買物場所、公共交通の維持も難しく、耕作放棄地の問題もあります。そしてもうひとつ、今回紹介する獣害にも、益田市は悩まされてきました」(檜谷氏)

一般社団法人 小さな拠点ネットワーク研究所の檜谷邦茂氏

 人が少ないから、サービスがビジネスとして成り立たなくなり、減少する。暮らしにくくなり、さらに人が減る――。地方自治体が陥っているのは、こうした負のスパイラルだと檜谷氏は指摘する。これを解決するにはどれかひとつの課題だけに着目するのではなく、合わせ技で考える必要がると言う。そのためには地域を全体的に、なおかつ自分ごととして捉える必要がある。多様な人を巻き込んだ「わがごと・まるごと組織」をつくり、地域運営に当たってもらうことにしたのは、そうした理由からだった。

 「地域に住みながら、自分たちで地域の課題を解決していく。そのための仕組みづくりを勧めています。そのツールとして役立っているのがkintoneです。行政職員、NPO法人、地域住民など、立ち位置の違う人たちがkintone上に情報を持ち寄り、みんなで使っています」(檜谷氏)

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