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銀座デパート「化粧品戦争」で明暗が分かれた理由

2017年11月07日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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三越銀座店地下1階の化粧品売り場。中国人客が、化粧品を買い求める光景は見慣れたものとなった Photo by Satoru Okada

今期は業績が回復しつつある百貨店業界。インバウンド需要が再び高まり、化粧品で活況を呈しているためだ。ただ激戦区である東京・銀座では、こうした波に乗れない店舗も出ており、明暗がはっきりとしてきた。(「週刊ダイヤモンド」編集部 岡田 悟)

 東京、大阪の都心にある百貨店には今、再び“爆買い”の波が押し寄せている。とはいえ、2013~15年ごろの状況とはかなり異なる。

 中国人客を中心とした、転売目的とみられる宝飾品や家電製品の大量買いは影を潜め、年明け以降、高級化粧品にシフトして再び活況を呈しているのだ。

 東京におけるインバウンド消費の激戦区はもちろん、銀座である。ただここでは、百貨店の立地や戦略の違いもあり、店舗間でくっきり明暗が分かれている。

 “勝ち組”とされるのは、老舗である松屋銀座本店と三越銀座店(図参照)。もともと外国人観光客からの認知度が高く、地下鉄の駅に直結しているのも強みだ。

 化粧品については、「中国人のお客さまも今年に入って以降、日本人と同じ接客を求める傾向が出てきた」(三越銀座店の宍戸賢太郎・化粧品バイヤー)。以前は気に入った商品を大量買いしていたが、今では、美容部員によるカウンセリングや肌質のチェックを受け、自分に合った商品を丁寧に買い求めるようになった。両店ともこうした接客を可能にする通訳や、中国語を話せる美容部員も当然配置している。美白や美肌効果をうたう資生堂、コーセー、アルビオンやSK-2の商品が特に人気だ。

 もっとも、これらの化粧品は日本の消費者の間でも、ここ数年人気を博している。百貨店の販売現場では、「ここ5年間、化粧品の売り上げは日本人客を中心に増加傾向が続いてきた」(松屋の寺本知香・バイヤー)。そこへ、年明けごろから、より質の高い商品と接客を求める中国人客がなだれ込んできたというわけだ。

 また、化粧品への注力は、従来百貨店が苦手としてきた20代女性の取り込みにもつながった。海外の高級ブランドのリップスティックでも、1万円未満の商品なら若い女性にも手が届く。さらに、リップの先端が猫型で「インスタ映え」するとして人気のポール&ジョーの商品など、若い女性に人気の商品をそろえたことも奏功した。「リップを入り口に、いずれ百貨店で化粧品全般を買ってもらえれば」(宍戸バイヤー)と期待する。

“負け組”は旧プランタンと東急プラザ銀座

 他方、化粧品の高い需要を十分に取り込めていない“負け組”も出てきた。例えば、4月に鳴り物入りで開店した、J.フロント リテイリングなどが運営するGINZA SIX。

 商品別の売り上げなどを公表していないため詳細は不明ながら、ブランド別に大きなブースで区切られた地下1階の化粧品売り場について、業界関係者の間では「全体的に外国人客は来ているが、地上から下ってくるエスカレーターから遠いブランドは苦戦している」「テナントが払う家賃が高過ぎて採算が厳しく、PR目的の出店と割り切っているブランドもある」などとささやかれており、オープン直後の“ご祝儀相場”後の実力が試されている。

 若い女性に人気だったマロニエゲート銀座2&3(旧プランタン銀座本館と別館)の不振を指摘する声は、さらに多い。

 ここは、三越伊勢丹ホールディングスが昨年12月に出資を解消したため、読売新聞東京本社の100%子会社の運営に変更。従業員140人のうち実に100人を早期退職させ、店内の9割をテナント契約に切り替えた。

 化粧品でも、運営が切り替わって以降、クレ・ド・ポー ボーテやキッカなど有力ブランドが新たに入ったが、「社員を削減し過ぎたせいか、接客のレベルが下がった」(百貨店業界関係者)。割引率が6%だった会員クレジットカードの特典を昨年末に廃止した影響も大きいといわれる。日本人客が敬遠しているのを敏感に察してか、三越や松屋のように外国人客が殺到している光景も見られない。

 もっとも、販売が振るわないのはプランタン時代からのことで、「あまり不振が続くと、銀座全体の消費に関わる」(前出の業界関係者)と心配する声さえ漏れる。

 より厳しいとみられるのが、東急不動産グループが数寄屋橋交差点で運営する東急プラザ銀座。「明らかに以前の高級品の爆買いを狙った」(別の百貨店業界関係者)8、9階のロッテ免税店は客の姿がまばらで、ロッテの撤退の意向までささやかれている。一方で、他店で好調な化粧品をほとんど販売しておらず、足元のニーズから大きくずれている。

 とはいえ、化粧品のブームがいつまでも続く保証はない。好調な三越銀座店も、利幅の薄い食料品が売り上げ全体の2割弱と大きく、ブームが去れば、一気に負け組に転じるリスクは残る。経済情勢の変化によっては、来年の今ごろの銀座の風景は、全く異なるものに変わっているかもしれない。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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