このページの本文へ

いきなり!ステーキ急成長の一方でKENNEDYは破綻した理由

2017年11月06日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

『週刊ダイヤモンド』11月11日号の第1特集は、「味から儲けの仕組みまで 外食チェーン全格付け」です。顧客満足率、経営力、従業員満足度で各チェーンを格付けし、その裏側のビジネスモデル、経営戦略まで解説する経済誌ならではの“グルメガイド”を作りました。

 大人気の立ち食いステーキチェーンの生みの親である一瀬邦夫・ペッパーフードサービス社長は、その1号店をオープンする約1ヵ月前の2013年秋、ある人物と食事を共にした。その席で、新たに挑戦する業態の構想を、メニューを披露しながら熱弁してみせた。

 構想を一通り聞くと、その人物は共感して言葉を返した。

「うちは自分でステーキをやるつもりはないから、あなたが『俺のステーキ』の名前でやってみてはどう?」

 言葉の主は、立ち食いで高級フレンチやイタリアンと同じメニューを、格安で提供する「俺のフレンチ」、「俺のイタリアン」を大ヒットさせた坂本孝・俺の社長。そもそも一瀬社長は“俺のシリーズ”の人気に背中を押され、新業態の立ち上げに踏み切っていた。もともと顔見知りの2人。この日、一瀬社長は再び強く背中を押されたのである。

 決して冗談ではなかったであろう俺のシリーズ入りの申し出に感謝しつつ、一瀬社長は新業態を「いきなり!ステーキ」と命名した。前菜なしでいきなりステーキを食べるという業態スタイルをそのまま伝えるものだ。

 1号店は大当たりした。「立ち食いで高級ステーキを食べる」という斬新さ、「立ち食いだから早い。早いから安い」という単純明快なモデルが消費者を引き付けてやまなかった。

 本誌の外食利用者アンケートによると、利用増加率ランキングでは全業態中1位。レストラン業態(41ブランド)のうち顧客総合満足率と料理満足率で共に6位、コスパ満足率は10位だ。

 顧客満足率において、俺のシリーズはさらにその上を行く。

 俺のフレンチはレストラン業態で総合、料理の満足率が共に1位、利便性、コスパの満足率は共に2位。全業態を対象にしたランキングでは、総合満足率3位、料理とコスパの満足率は共に2位だ。

 それでも、チェーンの拡大では、いきなり!ステーキの方がはるかにスピード感を持っていた。ビジネスモデルが俺のシリーズよりも拡大しやすいものだったからだ。

前菜なしで客の回転が速い
目の前で切るから仕込み不要

 来店客の数を増やせる上に回転が速い立ち食いスタイルという点では共通するが、俺のシリーズがフレンチやイタリアンをワインなどと共に提供するのに対し、いきなり!ステーキは前菜なしでいきなり肉にかぶりつくのが醍醐味。肉を平らげてさっと店を出るから、客の滞在時間はさらに短く、回転率はより高い。

 俺のシリーズが一流シェフによる料理を売りにしたのに対し、調理は肉を切って焼くことに特化したので人材を集めやすく、人件費も抑制できた。

 また、俺のシリーズが仕込みに時間を費やすのに対して、仕込みは要らない。前菜などの手の込んだものがなく、肉は注文に応じてその場で切り分ける。

 外食業界の食材原価率の相場が30%であるのに対し、格安を売りに価格を抑えたため、原価率は50~60%ものレベルになる。その分、客の回転率を高めて客数を増やし、利益を出す。ステーキに特化したシンプルなメニュー構成なので、店舗のオペレーションを効率化できた。

 肉を焼くだけなら他社も参入しやすそうだが、「簡単そうに見えるけど、高いと思いますよ。うちの参入障壁は」と一瀬社長は返す。

 客は調理場のそばのカウンターで肉の種類とグラム数を指定して注文する。カットされた肉を載せたはかりの目盛りが示すのはほぼ注文したグラム数。注文通りにオーダーカットする技術を習得させるための育成が参入障壁となる。

 加えて、はるか昔からステーキ業態を営んできたが故の肉の調達・仕入れのノウハウは一朝一夕にはまねできない。

 わずか4年で店舗数は158店にまで拡大。まさに破竹の勢いである。

 レストラン業態(41ブランド)の顧客満足率を見ると、総合、利便性、料理の各項目の上位で肉系のチェーンが目立つ。一方でコスパ満足率では影が薄い。

KENNEDYが破産
集客力で成り立つ低価格モデルの宿命

 では、肉を安く提供しさえすれば消費者は飛び付くのか。いや、外食はそんなに生易しいものではない。

 成長性の高さから株式市場でペッパーフードサービスと共に注目銘柄になっているステーキ・ハンバーグレストランのブロンコビリー。同社はレストランの顧客総合満足率で4位にランクインしているが、かつて低価格化で顧客離れの地獄を見た。

 来年に創業40周年を迎える老舗は1990年代後半、デフレ時代の真っただ中に、他の外食チェーンと横並びでマスの層を狙う低価格路線に走った。それまでの炭火焼きをやめて安定して焼けるグリルを導入し、サラダバーの代わりにドリンクバーを設けた。客単価は半減、900円台にまで落ちた。

 大量出店で売り上げこそ伸びたが、1店舗当たりの客数は伸びない。原価をコントロールすることで採算は取れたが、2001年の狂牛病騒動で客数が急減。創業来最大の経営危機に陥って、目が覚めた。

 客はブロンコビリーに安さを求めているのではなく、炭焼きステーキやサラダバーを含めたオリジナリティーを支持していたのだと再認識。低価格路線と決別した。スタイルを元に戻し、さらに磨きをかける改革を進めたことで、客足が戻った。

 ブロンコビリーのように戦略の見直しが間に合わなかったのが、低価格ステーキチェーンのKENNEDYを、首都圏を中心に約30店展開していたステークスだ。資金繰りがつかなくなって10月に営業を停止、東京地方裁判所に破産を申請した。

「出店による過去の投資が重く、その分のキャッシュを稼げず、投資と回収のバランスがおかしくなった。半額セールなどを重ねたが客が付かずに客単価が落ち、悪循環に陥った」と原田三寛・東京商工リサーチ情報本部情報部部長。他チェーンとの競争にさらされ、この数年は売り上げが落ち込んでいた。

 原価率の高いものを低価格で提供するというモデルは、集客力を持って高回転させることで成立するもの。集客力が落ちれば、途端にモデルは崩壊する。そんな危険性もはらんでいるのだ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

カテゴリートップへ

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

アスキー・ビジネスセレクション

ピックアップ