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人工知能の規制こそが未来への脅威だ

2017年11月01日 18時10分更新

文● Andrea O’Sullivan

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人工知能(AI)大国である米国でさえ、AIに対する規制を強化すべきだとの声が上がっている。テクノロジー政策に詳しいジョージ・メイソン大学のアンドリア・オーサリバンは、イノベーションを阻害しない新しいスマート政策が必要だと主張する。

米国はこれまで人工知能(AI)テクノロジーに対し、比較的寛容であった。これからもそうあるべきだ。それが規制されがちなヨーロッパ諸国ではなく、米国で多くのイノベーションが起こる理由だからだ。

連邦政府がAI産業を規制してこなかった主な理由は、AIを専門とする政府機関が存在しないからだ。 その代わり、AI関連のテクノロジーを精査する連邦政府や州当局が協力してその役割を担ってきた。たとえば米国連邦取引委員会(FTC)と米国国家道路交通安全局は最近、自律自動車テクノロジーの監督方法を決定するためのワークショップを開催した。 米国国土安全保障省は、重要な社会インフラに対するAIの潜在的な脅威に関するレポートを発表している。

こうしたやり方は不完全ではあるものの、過度な規制を抑制する上で大きな効果がある。それぞれの規制当局は、専門領域に関連する政策にのみ規制権限を持つからだ。

しかし今や、学識経験者や評論家の間からこうしたやり方を変えるべきだとの声が上がっている。 AIテクノロジーをコントロールするまったく新しい規制機関の設立が提唱されているのだ。 メリーランド大学法学部のフランク・パスクアーレ教授は、ネット検索を監督するために米国連邦通信委員会(FCC)のような「連邦検索委員会」を提唱し、オレゴン州ポートランドのマシュー・シェーラー弁護士は連邦政府にAI専門機関の設立を推奨している。ワシントン大学法学部のライアン・カロ教授は「連邦ロボット工学委員会」の構想を発表している。

こうした発想は、関連するリスクが社会に対して過度な負担をかけると規制当局が判断した場合、イノベーションを減速または中断しなければならないとする「予防原則」の考えに基づくものだ。

もちろん規制学者が長らく指摘してきたように、規制機関が採用しているリスク分析は不十分である可能性がある。 想像上の、あるいは誇張されたリスクが利益よりもはるかに重視され、社会から豊かな生活(多くの場合、人命を救うことにもなる)の発展を取り上げてしまう。 規制機関は社会への便益や犠牲を無視して、自らの権限や予算を拡大しようとする衝動にしばしば抵抗できない。規制する権限を与えれば、規制する方向に動いてしまうのだ。そしてひとたび連邦政府機関が創設されれば、それをなくすことはまったくもって困難だ。

AIがさまざまな領域に関わるようになるにつれて、新しい連邦AI機関は米国人の生活を脅かすほどの大きな権限を持つ可能性がある。政策立案者はAIアプリケーションを厳密かつ謙虚に区別する必要がある。たとえば、AIアシスタントが抱える社会的なリスクは、予測警備ソフトウェア(犯罪データベースをもとに機械学習を使って将来の犯罪を予測する)や「スマート兵器」(AIを搭載した高精度な自律型兵器)とは異なるものだ。しかし行き過ぎた規制制度はAIアプリケーションを十把一絡げにしてしまい、本当に重大な問題にリソースを割かず、有益なテクノロジーを抑制してしまう可能性がある。

同時に、予防的規制がもたらす私たちの未来と福利に対する脅威は相当なものだ。 AIテクノロジーは製造業や商業を近代化する一方で、健康や輸送機関において人命救済を生み出す。経済的利益は数兆ドルに達すると予測され、個人レベルではAIが私たちの生活をより快適で便利にすることが約束されている。

成長を支えたい政策立案者は「無許可のイノベーション」の立場を取るべきだ。謙虚さと協働性、それに自発的な解決は、時代遅れの「指揮統制」モデルを凌駕するはずだ。 スマート機械の時代には、新しいスマート政策が必要なのである。

アンドリア・オーサリバンは、ジョージ・メイソン大学のシンクタンクであるマーカタス・センターのテクノロジー政策プログラムマネージャー。


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