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日本で最も美しい「提灯祭り」で大切なことを教わった

2017年10月25日 11時30分更新

文● ナベコ 写真●高橋 智

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提灯の光ってしみじみしますよね……。

 ごきげんよう。アスキーのグルメ担当記者ナベコです。お酒が好きで毎日酒をあおっていますが、アルコールにとても強いというわけではないので、正体をなくしてしまうことも多々。だらしなさ最高!! ……という主義ですが、たまに焼酎グラスに自分の影を落として、自問自答したり。

 何のために生きているのでしょう。

 日々お酒を飲んで楽しいのですが、グータラしすぎていないかな、このままで大丈夫かな自分、というチクリとした痛み。そんな時にも、飲み屋の提灯の明かりは私を励ましてくれます。

「大丈夫よ、もっと飲みなさいね!」

 提灯さん、優しいなあ。じゃあ、もういっぱい焼酎を。そんなわけで、毎度赤提灯の居酒屋でつぶれてしまうのですが。提灯の明かりには心惹かれますね~。

 さて、先日「日本三大提灯祭り」というものがあると聞きました。提灯の明かりがとても美しく情緒的だそうです。

■日本三大提灯祭りのひとつ「二本松の提灯祭り」

 日本三大祭りとは「秋田の竿燈祭り」(秋田県秋田市)、「二本松の提灯祭り」(福島県二本松市)、「尾張津島の天王祭り」(愛知県津島市)のことを指すそうです。夏に開催される秋田、尾張対馬のお祭りは時期を逃してしまいましたが、二本松の提灯祭りは毎年10月4日から6日に開催されるということでした。

 これを逃すと翌シーズンまで提灯祭りは見られません。福島二本松というと「大七」という日本酒も有名ですし(大好き)、この機会にと行ってきました!

二本松に行ってきました!

 二本松の提灯祭りの起源は江戸時代にさかのぼります。二本松城の領民の心を束ねるために始まった催しだそうです。様式が現在に近い形となり、毎年催されるようになったのは明治になってからですが、起源をさかのぼると353年もの歴史があるほど地元に根づいています。

 祭りの目玉は、鈴なりの提灯をつけた“太鼓台”だそうです。いったい、どういうものなのでしょうか?

■寒いのに上裸のお兄さんたちが頑張る!

 提灯祭りは3日連続で開催されますが、いちばんのみどころと言われるのは、初日の“宵祭り”とのこと。その日に狙いを定めて訪ねました。

「二本松神社」

 まず、二本松駅から徒歩10分程度の場所にある「二本松神社」で、提灯祭りを開始するにあたっての神事があるというので行ってみました。

 時刻は夕方5時。火が沈みかけ、街の輪郭がうすぼんやりとする時間帯です。

祭りの開始前に行われる「御神火祭り」の様子。

 二本松神社の境内では、10月の東北の冷涼な風が吹いていましたが、20名前後の若い男性が上半身をさらした装束姿で集まっていました。

 さ、寒そう……。

 神主さんが登場し、おごそかな雰囲気で儀式がスタート。観光客が多くて、詳細まで見られませんでしたが、お浄めや盃の儀などが行なわれたようです。遠くで笛や太鼓の音。張りつめた空気の中、装束姿の若い男性たちが真剣な面持ちで凛としていたのが印象的です。

おごそかな雰囲気の中、薪に点火。

 神事のクライマックスでは、境内の焚火台にかがり火がたかれました。装束姿の男性たちは続々と松明に火を移していき、次に一斉に、「いった! いった!」という掛け声とともに境内の外に駆けていきました。

松明に火を移します。

 おお~!! 勇ましい!!

 松明の火は“紅提灯”に移して、太鼓台の明かりのひとつになるそうです。

■仰ぎ見る太鼓台の迫力に圧倒

 神事の後は、二本松神社から少し離れた元亀谷のロータリーという開けたスペースに、提灯に火を灯した太鼓台が集結。そこでいよいよ祭りのスタートの号令がかけられます。

これが太鼓台。

 私は、人が集まる方を目指してロータリーに向かいました。ものすごい人、人、人。つま先を立てて背伸びすると、赤々と光を放つ巨大な太鼓台を見ることができました。

 大きい~!!

 太鼓台とは仰ぎ見るような大きさの山車のようなもので、外側にはびっしりと提灯が鈴なりになっていました。1台になんとつき300以上の提灯が付いているそうです。しかも、LEDなど電気の光では一切なく、すべてに昔ながらのローソクを使用しています。

 太鼓台は全部で7台。提灯には台ごとに書いている文字が異なっており、二本松の各エリアを代表する太鼓台になっています。

 それぞれの屋根には2、3名ほど男性がのぼっており、観客たちに威勢のよい掛け声をかけて盛り上げていました。内側には、太鼓や笛を演奏する囃子方がいて、演奏をしながら太鼓台ごと練り歩くのが見ものということです。

屋根に乗り込んで、掛け声をかける人がいました。“すぎなり”という役目だそうです。

 提灯を鈴なりに付けた巨大な台は止まっている状態でも圧巻なのに、さらに動くとのこと。これはすごそう!

■燃えたら大変 消防車も控えている

 出発式の号令の後、7台の太鼓台がギシギシと音を立てて動き出しました。車輪は木製。綱で引っ張る“引き廻し式”なのですが、ハンドリングもなかなか難しいそうです。

 太鼓台が揺れると、提灯がゆらゆら揺れます。おおおおお。美しい。ですが、提灯の火が燃え移らないかちょっと心配。

内部で囃子方の人が、楽器を演奏している。

 実際に火が燃え移ってしまうこともあるそうです。そのため、祭りには消防車が控えていました。

 なお、一晩のうちに使われるローソクの数は1台にあたり1500本を超えるとのこと。ローソクが鉛筆程度の長さになったら、祭り連の方々が練り歩きながら手際よく取り替えています。

■祭りを離れると静寂が……

 提灯を灯した太鼓台は、1台ごとバラバラになり、街中を練り歩いていきます。太鼓台がある所が祭りの中心というのが、この祭りの醍醐味。観客は太鼓台を追いかけるようにして移動するか、待機するかして、合間合間に縁日で飲食をしていました。私は楽しみにしていた大七を熱燗でいただきながら(屋台で販売していました! さすが)、威勢のよい太鼓台の様子を眺めていました。

私は、日本酒「大七」の熱燗を飲みながら祭りを楽しみました。

 少し寒い日でしたが、提灯の赤い光を見ると、暖かい気配を感じて心が浮き立ちました。やはり提灯ってきれいですね。幻想的だなあ……。

 初日の出荷式は、23時30分ごろまで練り歩きが続きます。私は日帰りしなくてはいけなかったので、20時過ぎには太鼓台を見納めして駅に向かって歩きました。すると……。

 祭りのにぎやかさとは裏腹の、静寂。

祭りはこんなに賑やかなのに、祭りの中心部から離れるととても静かでした。

 二本松駅の近くにも丘のような地形があり、谷間に似た道を歩いていると、街灯も少なく不安な気持ちになってきました。その静寂さこそ、街の日常の姿なのではないかと思いいたるのにしばらく時間がかかりました。

 東北の城下町である二本松地区は人口1万人に満たないほど。東日本大震災では震度6強の被害にあいました。東北の芯が強い気質を日本酒の味わいからも感じられました。そんな中、人々は提灯祭りを正月のように楽しみに暮らしているとききます。

 祭りこそ生きる原動力。

 なんのために。最近、そんなことを思うことがあると書きましたが、赤々とした提灯台のことが頭に浮かびました。寒くても肌を装束姿で肌をさらす男性。威勢の良い掛け声。提灯台を見守る地域の方々の熱気。

 私は自分の生まれた土地の祭りを思い返してみました。東京・練馬の北野神社の秋祭りは、大きな規模ではないのですが、地域に親しまれています。私も小さいころは子ども向けの山車を引きました。そんなことを思い出したら、ふと眼がしらが熱くなりました。

 自分の根幹にある大切なもの。それがあれば力強く生きていける。提灯祭りを体験してそんな実感を得られたように思います。

■二本松の提灯祭りがテレビで放送されます

TUFテレビユー福島で放送予定。10月29日午後4時から。

 今年の二本松提灯祭りはドキュメンタリーテレビ番組として収録されており、TUFテレビユー福島にて10月29日午後4時から放送を予定しています。BS12トゥエルビの「ダイドードリンコスペシャル 日本の祭り」(毎週土曜日夕方6時~)でも翌年に全国放送予定。

 日本津々浦々で様々な様式で催され、地元住民の心を明るく照らす“祭り”ですが、最近は地域の過疎化や少子化で継続が危ぶまれている祭りもある聞きます。祭りがなくなったらどんなに残念なことでしょう。

 ダイドードリンコでは祭りの文化を後世に残すという目的で、「DyDo日本の祭り」の取り組みを行なっています。いったいどのような活動なのでしょうか? 祭りの素晴らしさに心打たれたため、次回は担当者に話を聞いてみます。


ナベコ

寅年生まれ、肉食女子。特技は酒癖が悪いことで、のび太君同様どこでも寝られる。30歳になったので写経を体験したい。Facebookやってます!

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