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つみたてNISAは金融庁長官から金融業界への「怒りの鉄槌」だ!

2017年09月19日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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『週刊ダイヤモンド』9月23日号の第1特集は「株&投信 超理解」です。来年1月から、「つみたてNISA」がスタートします。その名の通り、毎月コツコツと長期にわたって積み立て投資していくことで、将来に向けた「資産形成」を行うことが目的です。この制度を半ば強引に導入したのは、金融庁の森信親長官です。その理由は何でしょうか。本特集ではそうした疑問に答えつつ、意外に知らない長期投資の効果について、丁寧に解説しています。

金融機関に改革のメスを突き付け、今や業界内で恐れられる金融庁の森信親長官 Photo:Kyodonews/amanaimages

「金融業界に対する“怒りの鉄つい”ですよ」――。

 ある運用会社の幹部は、既存のNISA(少額投資非課税制度)と併用できないつみたてNISAが来年からわざわざ新設されることについて、主導者である金融庁の森信親長官の腹の内をこう言い切る。

 2014年のNISA開始以降、「貯蓄から投資へ」という流れが今なお本格化していない原因は、金融機関の側にあったとの“反省”は一部の当事者内にもある。

 というのも、森長官は15年の就任後、「顧客本位の業務運営」を行うよう金融機関各社に要請してきたが、旧来の悪癖がすぐに改まったとはいえないからだ。

 森長官は今年4月の講演でも、顧客に投資信託を頻繁に乗り換えさせて手数料を稼ぐ「回転売買」などを引き合いに出し、「手数料獲得が優先されるビジネスは、そもそも社会的に続ける価値があるのでしょうか」と厳しい文言で資産運用業界を“断罪”。業界にあらためて改革のメスを突き付けた。

 そんな動乱を経て、長期投資を軸とした「資産形成」を本格化させようと、森長官の肝いりで来年スタートするのがつみたてNISAだ。手数料をはじめとする厳しい条件の下に対象となる投信の本数が絞られるなど、業界内では「ビジネスとしてペイしない」といった不満が渦巻く。ただ、投資初心者が資産形成に踏み出す姿勢を後押しする制度なのは間違いないだろう。

 制度の具体的な活用に踏み出す前に、なぜ資産形成を行う必要があるのかといった点をしっかりと理解し、「急がば回れ」の精神で歩みだすのが実質的な早道だ。

 つまるところ、資産形成とは「あなたの残りの人生にお金は幾ら必要なのか」を見定め、必要額を確保するために個人資産の積み上げ方を考える取り組みといえる。

人生の終局から「逆算」して考える

 その際、人生の終局に資産がゼロになることをイメージする「逆算の資産準備」という考え方を提唱しているのが、フィデリティ退職・投資教育研究所の野尻哲史所長だ。

 30歳で一から資産形成を始めた場合、30代に毎月4万円、40代で同5万円、50代では同6万円を積み立てながら、年率3%で運用した場合を考えてみる。

 この考えの特徴的なのは、積み立て投資を行った後、60~75歳の間を「使いながら運用する時代」と位置付けていること。ここでは、積み立てた資産から定率で毎年4%ずつ引き出しながら、残りの資産をそれまでと同じ年率3%で運用することを想定している。運用効果を発揮することで、資産の減少ペースを和らげられるというわけだ。

 また、75歳以降は全て現金に換えて資産を「厳格に使う時代」としており、それから毎月10万円ずつ引き出していった場合、95歳でほぼ資産が尽きる計算となる。

 こうしたロードマップを描く際、念頭に置いてほしいのは「長期」「分散」「少額」という三つのキーワードだ。

 資産形成に踏み出す人の多くは、まだ資産全体に占める現金の割合が多いだろうが、「少額」でもよいので、持っているお金の一部を運用に回し、それを「長期」の視点で続けるのが肝要となる。

「分散」とは、株や債券など複数の資産にお金を振り分けるだけでなく、積み立て投資に伴う“時間分散”の効果も指す。この観点からも、多くの企業の株式などに分散投資する投信が、資産形成の手段の王道となっている。

 併せて、資産を運用に回す際に重要な「複利」効果の大きさを説明しておこう。例えば、30歳になった社会人のAさんが老後生活を見据え、60歳になった時点で一つの目安といわれる3000万円の資金を確保したいとする。

 もしAさんが30歳までに貯金した450万円の現預金を運用に回した上で、つみたてNISAの月額上限(1000円単位の場合)である3万3000円を毎月積み立てて投資した場合、30年間で3000万円に増やすためには毎年平均3%のリターン(運用利回り)が必要な計算となる。

「たかだか年3%」と思うなかれ。もし30年間にわたり、450万円の貯金に加え、月3万3000円の積み立てを運用ではなく現金のみ(つまり貯金だけ)で続けた場合では、60歳時点ではたった1638万円にしかならないのだ。

 というのも、毎年3%の運用利回りを積み立て投資の中で実現できれば、もうけが投資元本に加わって毎年の収益を押し上げる「複利効果」が働く。このため、年利回りが3%という水準で運用するメリットは大きいといえるのだ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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