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カルソニックカンセイと仏セキュリティベンダーの合弁会社、White Motion設立

自動車セキュリティ専業ベンダー、IT知見もふまえ「現実解」を提供

2017年08月22日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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積極的に知識を共有し、自動車業界全体のセキュリティ底上げを

 石橋氏は、White Motion自体は当初5~6名の組織でスタートするが、プロジェクトごとにカルソニックカンセイの電子事業部(製品開発チームや組み込みソフトウェアチーム)、Quarkslabとも適宜連携し、運用していくと説明した。そのため人的リソース面での不安はないが、ニーズの高い「車とセキュリティの両方を理解している人材がまだ少ない」(蔵本氏)ことが課題としてあるという。

 そこで、自動車業界向けのセキュリティトレーニングも提供していく。もちろんこれはカルソニックカンセイのエンジニアにも提供するが、より広範に、自動車/自動車部品メーカーの現場エンジニア、さらにはその上層の管理職や役員などにも受講してもらいたいと語る。このあたりの発想は、蔵本氏が取りくんできた「Hackademy」などとも重なるところがある。

自動車業界向けのセキュリティトレーニング。現場エンジニア向けには実際に手を動かすトレーニングを、また管理職などにも座学で知識啓発を促す

 White Motionが掲げる会社理念が「セキュリティ知識の“ホワイトボックス”化」だ(これが社名の由来のひとつでもある)。セキュリティ知識をブラックボックス化するのではなく、より多くの人に広め、自動車業界全体のセキュリティレベル向上につなげていく。そうした意識をもって、ブラックボックスへのアンチテーゼとして“ホワイトボックス”という言葉を掲げたという。

 石橋氏によると、カルソニックカンセイではこれまで外部ベンダーに脆弱性診断の見積もりを依頼したこともあったが、「高額なうえにブラックボックスで、具体的な中身(詳細な検査内容など)が出てこない」ケースが多かった。「自動車メーカーが、技術をすべてブラックボックス化して製品にすることはほとんどない。なので、そういう(ブラックボックス化した)サービスが受け入れられる文化ではない」(石橋氏)。

 蔵本氏も「僕らWhite Motionのテクノロジーやナレッジは、みんなに使ってもらうべきだと考えている」と、オープンな姿勢で臨むことを明言した。自動車セキュリティ関連のコンサルティングや技術支援、サービスを行うベンダーは幾つか出てきてはいるが、それを「競合」と捉えるのではなく「僕はどことでも組みたいと思っている」と答えた。そもそも自動車セキュリティ市場の成熟度はまだ低く、現時点では競争よりも協働してまずは全体の底上げを図るべきだ、という判断も背景にある。

 「自動車はライフサイクルの長い製品でもあり、単純に『(セキュリティ対策が)ITよりも遅れている』と言うのは乱暴だ。また自動車業界では、経営者まで含めて『自動車の公益性、社会的使命』ということを強く考えている。『うちは狙われないよ』と考えているような会社はひとつもなく、IT分野とは意識が違う。だからこそ、メディアの皆さんにも手伝っていただいて、もっと(自動車セキュリティの)ナレッジを発信していきたい」(蔵本氏)

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