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コネクテッドカー、カーシェア、自動運転は働き方にどんな変化をもたらすのか?

クルマで仕事する3人の放談から見る「モビリティ×働き方」の可能性

2018年07月27日 10時00分更新

文● 重森大 写真●曽根田元

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 クルマというものを、読者の皆さんはどのようなものだと捉えているだろうか。通勤手段、レジャーの道具、趣味の対象など、いろいろな見方があるだろう。一方で、昨今働き方改革が声高に語られ、既存の環境に縛られない働き方の模索が続いている。

 今回はクルマと働き方の関係について、あまねキャリア工房として業務改善・オフィスコミュニケーション改善を提言する沢渡 あまね氏、ローランド・ベルガーでコンサルタントとして働く貝瀬 斉氏、そしてフリーライターの私、重森が対談を行なった。モデレータ的に、アスキーの大谷 イビサも交えたこの対談に答はない。この対談自体が、皆さんの働き方を考え直すきっかけになれば幸いだ。(以下、敬称略)

空間としてのモビリティの在り方が仕事や生活に新しい価値を提供できる

沢渡:今日は「次世代モビリティとワークスタイル」という切り口で、専門家同士で対談してみたいと思って集まってもらいました。私自身は働き方改革の専門家として、物書き、コンサルティング、講演などを行なっています。働き方改革を突き詰めていくと、「個々人が生産性の高い働き方を主体的に実現していく」というところに行き着くだろうということが見えてきました。

一方で「モビリティ」というテーマについて見ると、日本では少子高齢化や自動車離れが声高に言われる一方で、空間としての価値が見直されてきている。カーシェアなどのサービスが広がり、時間単位で移動を買うという感覚も生まれつつある。さらに、クルマで得られるのは移動だけではありません。都会のカーシェアサービスでは、空間を買う目的で利用する人が増えている。営業マンがカーシェアを数時間契約し、セキュアな執務スペースとして、あるいは打合せのためのスペースに使ったり。カーシェアを、周囲の目を気にせずに授乳するために使うお母さんもいると聞いています。

移動手段としてだけではなく、空間としてのモビリティの在り方が、ワークスタイルやライフスタイルに新しい価値を提供できる可能性は非常に大きいと感じます。

あまねキャリア工房の沢渡 あまね氏

貝瀬:私はローランド・ベルガーという戦略コンサルティング会社でトータル二十年近くに渡って、自動車領域を担当してきました。沢渡さんが言うように、自動車という切り口自体の意味が変わってきています。モビリティつまり移動手段として、もしくは移動すらせず、空間として価値を見出されるようになりつつあります。かつてのようにドライブフィールがどうだというような、個人的嗜好だけでビジネスできる領域は限られてきた。

カーシェアサービスなどによって人々が空間や移動の自由を手に入れたときに、どういう利益を享受するのかという文脈の1つとして働き方について考えてみると、意外と「プライベートな空間を手に入れる」ということが大きなインパクトをもたらすのではないかと思います。

重森:私は社会人キャリアのスタートが中古車雑誌、物心ついたときからのクルマ好き、結婚して17年で購入したクルマが17台という根っからのクルマ好きです。今はキャンピングカーで日本各地を取材して回っていますが、そのスタイルになる前にフリーランスになっていたので、「自由度」の尺度がみなさんと違うかもしれません。「クルマ vs オフィス」の比較ではなく、公共交通機関ではなくクルマだからこそできること、という視点で話に加えていただきたいと思います。

大谷:私はクルマを持っていないし、もちろんクルマで働いたこともない。それで、この対談に重森を呼びました。重森は基本的にクルマで移動するので大変だなと思いつつも、この間も秋田に行ってもらってneccoという会社を取材してもらったり。沢渡さんたち3人だけだと「クルマっていいよね」って話になると思うので、クルマで働いていない立場からつっこませてもらいます。

移動するプライベート空間で、ワークとライフの切り替えをスムーズに

大谷:そもそもクルマで移動する、空間が取り払われるということで、どういったメリットが生まれるんでしょうか?

沢渡:ひとことで言うと「わざわざ」がなくなる。出張のためにわざわざ新幹線を予約する、わざわざ荷物を選別して小さなトランクに詰める、わざわざ乗り換えを調べる、列車の時刻に間に合うように移動する。こうした「わざわざ」はワークとライフの切り替えの邪魔をする無駄な間接稼動で、ワークライフバランスの敵、生産性の敵です。

たとえば私はクライアント先のある磐田市(静岡県)まで、東京から頻繁にクルマで往復しています。新幹線だったら、わざわざ新幹線の時刻を調べ、チケットを予約し、乗り継ぎ先の在来線やタクシー移動も調べないといけない。クルマなら、マップアプリで所要時間を調べたら事前準備終了です。

ホテルはどちらも変わらない手間だと思うかも知れませんが、選択肢の広さが違います。磐田駅前のホテルは競争率が高く、直前だと取れないことも多い。でもクルマなら、当日30分くらいの範囲に広げて宿泊先を探せる。高速道路のICひとつ分くらい離れていてもいいので、ロードサイドの安いホテルも選べます。

4泊、5泊といった長期出張も多いけれど、使いそうなものを適当に選んでスポーツバッグに詰め込み、トランクに押し込んでおけば、なんとかなります。忘れ物があってもアシがあるので、現地で電機店や100円ショップで買い足せば済みますし。

重森:バッグに詰めるだけマジメですね。私は段ボール箱に適当に荷物を突っ込んでおしまいです。事前準備もNAVITIMEのWebサイトで行き先を検索してお気に入り登録するだけ。自動的に同期してくれるので、ナビで細かい操作をする必要もありません。

沢渡:私より自由ですね。あとはETCカードさえ刺さっていれば、なんとかなりますよね。

重森:ETCカードを忘れると詰みますけどね。

沢渡・貝瀬:それ絶対やっちゃあかんやつです(笑)。

貝瀬:クルマ通勤で一番のメリットはプライベートで秘密の空間を持てることですね。タクシーで移動中に、機密情報に係るようなセンシティブな話はできません。自分のクルマならそういう会話もできるし、駐車場に停めてオンライン会議もできる。食後の仮眠場所としても使えます。

沢渡:プライベート空間としての価値は私も日々実感してます。人が多いのが苦手で、カフェで仕事できない人なんですよ、私。だからダム際ノマドワーカーを実践している。出張で行く先々のダムに立ち寄り、そこにクルマを停めて物書きをしたり読書をしたりする。ちょっと疲れたら仮眠もできるし、外に出れば大好きなダムの雄大な景色があり、ダムの管理人さんと雑談して気分転換できる。

ダム際のノマドワークを実践中の沢渡氏

 クルマならヘッドセットを使ってプライベートな空間が確保できるので、Web会議やTV会議もはかどる。ショルダーハッキングのリスクも、立ち聞きされるリスクもない。物理セキュリティという意味では、アシナガバチとかツキノワグマの方が怖いくらいです。

大谷:クマは物理的にショルダーハッキングしてきますからね(笑)。

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