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テスラ向け電池で絶好調なのに、住友金属鉱山「複雑な表情」の理由

2017年08月02日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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電池不足で販売計画が未達となっているが、米テスラのモデルS(写真)とモデルXは販売絶好調だ。電池材料メーカーも増産を急いではいる Photo by Masaki Nakamura

「この1~2年は、電池材料メーカーにとって試練の時期になる」。自動車各社が電気自動車(EV)の増産計画を相次ぎ打ち出し、拡大が確実視されるリチウムイオン電池市場。しかし、阿部功・住友金属鉱山電池材料事業部長は、複雑な表情を浮かべてこう語る。

 住友鉱といえば、EVの勝ち組といわれる米テスラ向けリチウムイオン電池に、主要4部材の一つである正極材を供給する世界唯一のメーカーだ。

 その同社ですら現状に小躍りできないのは、原料不足の懸念があるからだ。今後のEV市場の急拡大を鑑みると、正極材の原料であるニッケルやコバルトは、「今のままではどう考えても足りなくなる」(正極材メーカー役員)。

 このところ、メタル価格の低迷で鉱山の新規開発案件は減っており、今から開発を始めようとすると、原料を安定供給できるようになるまで、物によって早くて2年、遅ければ5年はかかる。

 つまり、2022年ごろまで正極材原料の安定供給のめどが立たないというのに、自動車各社はこぞってEVの大増産計画を立てているわけだ。

 電池材料メーカーが少しでも増産態勢を急ごうにも、世界的なEV市場の需要動向を読み切れず、投資判断がしづらい──。阿部事業部長はこうみているのだ。

 慎重になるのも無理はない。電池材料メーカーには、手痛い過去がある。日産自動車が11年にぶち上げたEVの販売目標が大幅未達に終わったあおりを受け、工場の低稼働率に苦しんだのだ。

 しかも、電池メーカーならば半年~10カ月で整う増産態勢だが、正極材などの電池材料メーカーは1年半~2年かかる。先々から動いておかねばならない分、もともと設備投資の回収リスクは大きい。

「ニッケル慣れ」が後押し

 もっとも、本来、住友鉱にとって、原料不足は追い風である。

 非鉄金属大手の住友鉱は、正極材の原料の鉱源を自前で持つなど、顧客に「安定調達」という安心感を提供できる。実際、最近は正極材メーカーのみならず、電池メーカーの原料調達に対する関心も高まっており、営業に金属事業本部の担当者が同行することが増えているくらいだ。

 しかも、住友鉱は大容量化に寄与するニッケル系の正極材に強い。

 今、電池メーカーなどからは3元系という別の種類の正極材の引き合いが多いのだが、特に希少なコバルトの使用量を減らすためにも、大容量化で航続距離を延ばすためにも、「ハイニッケルの方向に動くことは間違いない」(前出の正極材メーカー役員)。

 ニッケルの扱いに慣れた住友鉱には「一日の長がある」(阿部事業部長)のは確かで、テスラ以外への販路拡大も狙いやすいはずだ。住友鉱はチャンスを物にできるだろうか。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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