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スペシャルトーク@プログラミング+第14回

「プログラミングして意のままにロボットを動かした、という体験を多くの子どもたちへ届けたい」

教室数は1000校以上!! ヒューマンアカデミー『ロボット教室』責任者から“プログラミング教育”の本質を聴いた

2017年06月27日 19時00分更新

文● プログラミング+編集部

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 2020年からプログラミングの義務教育化を控えている現状だが、教育現場からはカリキュラムづくりや先生に求められる能力など、依然として不安や課題を多く抱えている旨の声が聞かれる状況だということも否定できない。そんな中、未就学児からの“習いごと”として、プログラミング教育の重要性が広く認識される以前から『ロボット教室』を展開してきた存在がある。教育事業大手の『ヒューマンアカデミー』だ。

 今回編集部は、この『ロボット教室』事業を牽引してきた、ヒューマンアカデミー株式会社 児童教育事業本部 チーフマネジャーの神野佳彦氏から、事業に関するお話をうかがうことができた。ロボットクリエイターの高橋智隆氏をアドバイザーに迎え、2009年6月からロボット教室事業を展開してきた同社の経験や工夫からは、プログラミング教育の導入を考えるうえで非常に学ぶ点が多い。教育現場へのプログラミング教育を具体的に検討されている方々にとって、貴重なノウハウを含んでいるインタビューを、今回はお届けしたい。

“自分が作り上げたものが実際に動く”経験を年少時に体験しておくことの重要性

―― いまロボット教室は、教室数でいうとどれくらいまで増えているんですか?

神野氏(以下、敬称略) 2017年5月末時点で、1000校を超えたくらいですね。

―― いつ頃から急に増え始めた、などあるのでしょうか?

神野 ここ4、5年で急激に増えている状況です。

―― ここ4、5年で急増した要因や背景としては、どのような社会の変化が挙げられますか?

神野 やはり、世の中がプログラミング教育を含め、ロボットなどの分野へ力を入れていこうという流れになっていますし、その流れを汲んだ習いごとも増えており、保護者の方々も意識をし始めていることが、ロボット教室が急増した一番の要因ではないかと思っています。

―― 教室は1000校を超えているとお話してくださいましたが、それに応じて生徒数も増えているんですよね?

神野 そうですね。生徒数は2017年5月末時点で、1万5000名を上回ってまいりました。

―― 教室に通われている生徒さんの年代は、どのあたりがメインなのでしょうか?

神野 7~9歳くらいまでの年齢層の生徒さんが多いですね。

―― 7~9歳だと、具体的にはどういったことをロボット教室では学ぶのでしょうか?

神野 オリジナルのブロックキットで時間内に1体のロボットを完成させます。“自分でロボットを作って実際に動かす”という一連の流れを、教室に通うお子さんたちには必ず経験してもらうにしています。

―― そうした経験によってお子さんたちは、どういった能力を伸ばしていけるのでしょうか?

神野 まずは、ロボットクリエイターの高橋智隆さんに監修いただいたロボットを、オリジナルのテキストに沿って製作します。そこで様々なことを学んでいただきます。その後、ロボットを作る過程で得た知識をいろいろと応用していくことで、想像(創造)力を育むことに注力しています。実際に自分の手を動かして、ブロックを用いながら立体的にロボットを作っていくため、空間認識能力などを養うことができます。また、作ったロボットを改造していくことで、表現力・思考力も高めることができます。

―― 2020年からプログラミング教育が必修化するわけですが、プログラミング教育には、やはり小さな頃から取り組んだほうがよいのでしょうか?

神野 低学年で最初から、プログラミング言語を用いてプログラミングをすることは難しいかなと思いますが、“ビジュアルプログラミング言語”を用いて、プログラム自体の成り立ちや、プログラミングの流れをまず学び、接するところから始め、そのうえで本格的にプログラミングを学ぶというのがスムーズではないかと考えています。

―― “ビジュアルプログラミング言語”を学習の導入に用いることには、具体的にどういった教育上のメリットがあるのでしょうか?

神野 “ビジュアルプログラミング言語”では“動きの箱”を組み合わせる、ということをします。“命令の箱”とも表現できると思いますが、それらを組み合わせることによって、ひとつのスクリプトを完成させることができます。そして、自分で作ったロボットを、自分で作ったプログラムで、自分の思うように動かしていきます。そうすると、単に“作る”だけでも、“作って動いた”というだけでもなく、“自分の意のままに動かすことができた”という経験を得ることができます。これを体感していただけることこそが、小学生を対象としたロボット教室でビジュアルプログラミング言語を用いることの、一番のメリットではないかと思います。

想像(創造)力や課題解決能力を育む場を、学年で制限する必要はない

研修を受けた先生が教壇に立つが、プログラミング経験がなければ先生が務まらないというわけではないそうだ。

―― プログラミングの義務教育化を控えていますが、では学校の先生たちがプログラミングをどのように教えればよいかというのは課題としてよく挙げられる点です。貴校ではどのような方々が先生を務められているのでしょうか?

神野 本校のロボット教室で先生として活動されている方々は、ヒューマンアカデミーで研修を受けて合格点が出た方と、研修を受け一定期間教室を運営されている先生からOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)などで指導を受け、本部担当者より承認された方のみ、教壇に立っていただくようにしております。

―― 自社で育成された方々を先生として採用されているということでしょうか?

神野 採用しているというよりは、フランチャイズシステムで展開しておりますので、ご契約いただいたロボット教室を担当する方には、研修できちんとしたレクチャーを受けることで、先生として教壇に立つ準備をしていただいているというほうが正しいですね。

―― ロボット教室の先生になるうえで、資格などは必要なんですか?

神野 資格などは必要ないですよ。子どもたちには、理系分野へ興味を持っていただくことが一番の目標ですが、発想力や想像(創造)力を引き出す目的も、ロボット教室にはあります。ですから、子どもたちが作ったロボットやプログラムをきちんと評価することができる人、コミュニケーション能力が高い人のほうが先生に向いていると思います。

―― では、プログラミング経験を持っていなければ先生が務まらないというわけではない、と?

神野 どなたでも、お子さんと接することが好きな方でしたら、先生になっていただけますよ。

―― 小学校低学年からロボット教室を受講可能とのことですが、学習面での段階やコース分けはあるのでしょうか?

神野 未就学児向けの『プライマリーコース』から始まりまして、『ベーシックコース』、『ミドルコース』、そして『アドバンスプログラミングコース』と、4つのコースをご用意しております。

―― 4つのコースは内容面でどのように分けられているんですか?

神野 『プライマリーコース』『ベーシックコース』『ミドルコース』は、プログラミング的な要素を含んでいません。これら3つのコースは、モノづくりにフォーカスした内容です。オリジナルのブロックキットでロボットを製作し、モーターと歯車でそれを動かすといった“動きの仕組み”を最初に学びます。モーターの回転運動をどのようにパーツを組み合わせれば上下や左右の運動へ変換できるかな、とか、歯車の組み合わせをどう変えればスピードが出るようになるか、パワーを出すためにはどう改善すればよいのかなどを、手を動かしながら考えます。そうして動きの仕組みを学んだうえで、『アドバンスプログラミングコース』でプログラミングを学びます。ここからは動きをも想像(創造)すると言ったらよいでしょうか。このような流れで各コースを展開しています。

―― 各コースは学年や年齢で分けられているのでしょうか?

神野 小学1年生以上のお子さんは『ベーシックコース』から、5~6歳で未就学児のお子さんは『プライマリーコース』から学んでいただく、というように目安は設けておりますが、まずは体験授業を受けていただき、お子さんの状況に応じてスタートのコースを提案しています。

―― 生徒数が1万5000人を超えていると、なかには天才的なお子さんというのもいるのでしょうか?

神野 ブロックが大好きで、普段からご自宅でよく遊んでいるお子さんや、お父さんとプラモデルをよく作るというお子さんですと、低学年であっても高学年の生徒さんより早く作ってしまう、というのはよく見受けられます。なかでもすごいお子さんは、私どもが年に1度開催している全国大会の創作ロボットコンテストで、大人も思いつかないようなロボットを発表されることが多々ありますね。

―― 大会で発表できる機会があるというのは、お子さんにとっても記憶に残る経験になりますね。

神野 私たちもそう考えて毎年開催しております。昨年、東京大学の安田講堂で開催した全国大会には、1600名ほどの方にご来場いただきました。その大勢の観客の前で自分が製作したロボットについてプレゼンするという、大人でも足がすくんでしまうような状況は、なかなか経験できないことだと思いますね。

2016年8月に開催された『第6回ヒューマンアカデミーロボット教室全国大会』の様子。

―― そんなすごい場で発表されるのは小学生のお子さんでしょうか?

神野 年長のお子さんから中学3年生まで、幅広い参加者がいらっしゃいます。

自発的な学びの姿勢を育て、その結果として理系好きが増えてほしい

―― ロボット教室の今後についてはどのようにお考えですか?

神野 私たちが最初にロボット教室を開始した時のコンセプトとしては、サイエンスや理系分野へ興味を持ってくれるお子さんをもっともっと増やしたいということを一番に考えていました。理系分野へ興味を持つ、その足がかりになるような学びの場を作れないかということです。もちろん、理科好き・理系好きに育っていただきたいという願いは今も続いております。それに加え、自分からものごとに取り組む姿勢や、想像(創造)力、論理的思考力、ロボットを製作するなかで失敗した時にその原因をつきとめ、改善し、次に活かすという課題解決能力、そして“ロボットを作りきった”という達成感を、成功体験として積み重ねることで、自分に自信が持てるお子さんたちが増えればいいなと思っています。

―― 理系ありきではなく、ロボット教室を受講する一番のメリットは、想像(創造)力や表現力というところにまずあるということでしょうか?

神野 そうですね。形が複雑なロボットや、歯車の組み合わせが難解なロボット、微調整がとても必要なロボットなど、さまざまなロボットを製作するなかで、想像(創造)力や表現力が問われる経験を教室で積んでいただいて、いつか自分で考えだした、誰も思いつかなかったような創作ロボットを作っていただけたらなと思っています。

―― 創作性豊かなロボットを作り出せるお子さんというのが、今後どんどん登場しそうですね。楽しみです。

神野 日本国内だと、都市部では教室数もかなり増えてきています。今後は郊外など、ロボット教室がまだないエリアにも展開を拡げていく計画を進めています。また、海外でもロボット教室を展開しており、現在はアジアを中心にロボット教室が増えていますが、もっと興味をもっていただける国が増えればと思っています。

―― 教室だけでなく、例えば教材を他の機関がされている授業で使わせてほしい、といった話もあるのではないでしょうか?もともと“これ”といった教材が存在していなかった分野だとうかがいましたが。

神野 私どもも、最初はまったくのゼロからロボット教室を立ち上げましたので、教材開発については苦労したところです。そういった意味では今、学校教育でもアクティブラーニングや、プログラミング的思考力の育成がうたわれておりますので、教材の学校導入などについても、少しずつではありますがお問い合わせをいただいております。

―― 今後の教育現場において有益な価値を貴校は蓄積されているということでしょうか。

神野 そうですね。学校さまに導入いただけるパッケージもご用意しておりますので、是非お声掛けをいただければと思います。

―― いま、プログラミングを小さい時から学ぶというのはどういう意味か、改めて教えていただけますか?

神野 今後AIなどの分野が伸びるにつれ、新たな職業の選択肢が増えていくと言われています。逆にある分野では、仕事がAIに取って代わられるということも起こり得る、という時代になっていきます。そうなると、プログラミングやAIの分野に関する知識の有無が、大人になってから大きな違いを生み出すと思います。現在の子どもたちが、私どものロボット教室に通うことを、そうした分野へ興味を持つ第一歩にしてもらえたらなと思っています。

―― 英語を学ぶよりもプログラミングを学ぶほうが重要、なんていう極端な意見も聞かれますが……?

神野 どちらも習ったほうがよいと思います。例えばロボット分野でどんどん名を馳せていくにしても、そこには世界という選択肢が当然視野に入ってくると思うんです。そのときに英語(語学)に長けているといないとでは、だいぶ違うと思います。私どもも、子どもたちの未来のために、英語教育には力を入れております。これからの時代の流れを見据えると、プログラミングと英語(語学)は、絶対両方学んでおいたほうが良いと言い切れます。

神野 佳彦(かんの よしひこ)

大学卒業後、大手予備校FC事業のチェーンマネジメントや学習塾運営・生徒募集のコンサルを経て2008年、ヒューマンアカデミーに入社。現在、児童教育事業本部 チーフマネージャーを務める。

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