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トップ営業マンが「顧客への質問マニュアル」を使わない理由

2017年06月19日 06時00分更新

文● 菊原智明(ダイヤモンド・オンライン

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一流と呼ばれるトップ営業マンは、どの業界の人でも共通項がある。準備が入念であり、お客様からのヒアリングが上手であることだ。お客様の要望をよく理解しているので、プレゼン資料も魅力である。このため、お客様の心を捉える力も強い。筆者はハウスメーカーでトップ営業マンになる前は、ダメな営業マンだった。その頃の苦い体験も含めて解説したい。(営業サポート・コンサルティング代表取締役、営業コンサルタント 菊原智明)

 さまざまな業界の「一流」と呼ばれる営業マンの方々とお会いさせていただく機会があるが、自分のことを“心配性”と言う人が意外なほど多い。

 心配性だからこそ、いろいろなことに気がつくし、十分な準備もできるもの。ごく稀に「俺はなんの準備もせずに出たとこ勝負で契約を取る」という営業マンもいるが、そんなのは100人に1人か2人もいればいいほうだ。とてもじゃないが普通の人が真似できることではない。

 準備なしで契約が取れる人は別として、結果を出すために十分準備をした方が、いい結果になるのは明白だ。

 しかし、「勝つ」ための準備ができている人は極めて少ない。

筆者の「苦い」経験談
時間をかけた資料が10秒で水の泡

 かつて私がハウスメーカーの営業マンとして、結果が出せず苦しんでいた時のことを語ろう。

 住宅営業は商談のテーブルに乗るまで非常に苦労する。家は、多くのお客様にとって一生に一回の買い物である。ちょっと声をかけたところで簡単に「じゃあ、おたくの話を聞こうかな」とはならない。何度も何度も訪問したり、電話でアプローチして、やっとのことでプレゼンのチャンスをもぎ取ることができる。

 やっとのことでつかんだチャンスだ。これは「絶対に逃したくはない」と思って当然である。お客様へのプレゼンを必死に準備する。それこそ、徹夜に近い日もある。そして、満を持して商談に臨むのだが、その資料をお客様に見せた途端「あぁ、こういうのじゃないんですよね」と言われてしまう。

 何時間もかけて作った資料がたった10秒で水の泡になった瞬間である。こういった虚しい思いを何度したことか……。

 なぜ、入念に準備したのにもかかわらず、こんな悲惨な結果になってしまうのか――。

「本当に聞くべきこと」を
ヒアリングできていなかった

 プレゼン資料の作成には時間をかけたものの、お客様から「本当に聞くべきこと」についてほとんどヒアリングできていなかったのが原因だ。

 総じて、住宅の営業マンは会社で用意されたリストを活用し“年齢、職業、年収、要望、予算、時期……”といった内容はキチンと聞き取る。

 しかし、それは表面的なデータに過ぎない。当時の私は疑いもせず、そのデータから資料を作成する。時間だけは無駄に費やし《よっし!要望通りのプレゼンができたぞ》と満足していた。

 その資料が自己満足でしか過ぎないのにもかかわらず……だ。こんな準備ではほぼ“出たとこ勝負”と変わりがない。そして、商談に臨み、見事に撃沈した。

 一方、成績のいい先輩は違った。

 一見、同じようなプレゼン資料のように見える。ところが、細部の内容がまるで違うのだ。事実、お客様が思わず前のめりになって聞くほどの魅力的な内容になっていた。

 なぜそんなことができるのか――。

 その理由は「ヒアリング」のレベルが違うからである。その先輩は会社で用意されたヒアリングリストをろくに使わないのだ。

成績のいい営業マンは
質問のレベルが違う

 そのかわり「なぜ家を建てるのか?」「どんな夢を実現させたいのか?」といった深い部分を徹底的にヒアリングしていた。その他にも《このタイプのお客様は潜在的に○○を悩んでいるかもしれない》と深掘りする。

 そもそも聞き取った「情報の質」が違うので、プレゼン資料のレベルには、並みの営業マンとは“雲泥の差”があるのだ。時には《そこまで心配しなくても……》と思うほど細かい内容まで入念に練っていた。

 先輩はこの時点ですでに商談に勝利していたのだろう。

 一流の営業マンは「お客様について深く知りたい」という気持ちから質問している。このため、質問の質や内容もレベルが高く、お客様の心を捉える力が強い。会社から用意された「ヒアリングリスト」の質問とは次元がまるで違うのだ。つまり、結果を出している人はいい質問をし、結果を出していない人はそれなりの質問しかしていないのである。

イマイチな人は
質問もイマイチである

 これは初対面の人と話をするとよく理解できる。

 お会いして《イマイチな人だなぁ》と感じる人は“スペックの質問”が多い傾向にある。例えば「どこの大学出身ですか?」「どちらの会社にお勤めですか?」といった質問をしてくる。なかには名刺交換してすぐに「コンサルって儲かるんですか?だいたいの年収はいくらですか?」と聞いてくる人も……。

 こういった人とお会いした時は「いやぁ~ぼちぼちですよ」とかわしながらその場を去ることにしている。ある時、私の名刺を見て「どうして営業コンサルタントになったのでしょうか?そのきっかけを教えてください」と質問してくれた人がいた。

 その方とは初対面にもかかわらず会話が弾んだ。後で知ったのだが、その人は有名な経営者だった。

「どんな質問をするのか」でその人のレベルが分かってしまう――。

 これはお客様を見極める際でもいえることだ。

 私の失敗例を語ろう。土曜日の昼間に、手提げ袋を持った男性のお客様が現れたことがあった。その袋には他社の資料が無造作に詰め込まれている。

ヒアリングが十分でないと
時間が無駄になる

 モデルハウスをろくに見ないうちからソファーにドカッと座り「この間取りだといくら?」と言いながら他社の見積書を出し、そして「おたくだといくらまで引けるの?」と質問してきた。

 当時の私は愚かだった。

 《おっ!すぐに検討してくれる、最高の見込み客だぞ》と判断してしまった。このお客様にさんざん提案書や見積書を出したが、他社に契約が決まった。

 私はライバル他社の値引き交渉のために使われただけ。いわゆる「当て馬」であった。結局、時間を取られただけだったのだ。その後もこの手のお客様にかき回され、時間を取られ続けた。こうなってしまうのも、ヒアリング不足が原因だ。

 一方、一流の営業マンたちは深くヒアリングをするため、こういったお客様にひっかかることもない。その分、いいお客様に時間と労力を注ぎ込むことができる。こうしてどんどん差がついていくのだ。

 ここまでの話を聞いて《確かに深くヒアリングしたほうがいいのはわかるが、答えてくれないお客様も多いよ》と思った方もいるだろう。

 確かに「どんな夢を実現させたいのですか?」と質問してもハッキリ答えてくれないケースもある。

トップ営業マンから教えてもらった
「効果的な質問」とは

「超一流の営業マンが見えないところで続けている50の習慣」(青春出版社刊)、菊原智明著、224ページ、1512円(税込み)

 こういった時はどうすればいいのか――。

 あるトップ営業マンから、要望がハッキリしないお客様対して「これだけは避けたいと思うことはなんですか?」と質問するといい、と教えてももらったことがある。

 この話を聞いた時《この質問は効果的だろうな》と感じた。 要望がまとまっていないお客様でも《これだけは避けたいな》ということは明確だからだ。事実、答えてくれる場合が多かった。

「避けたいこと」を聞くことで外枠が埋まり、要望が見えてくることもある。ぜひ、要望がハッキリしていないお客様に一度試してほしい。

 一流の営業マンとは、一歩踏み込んだ深い部分までヒアリングし、準備を十分にしているものだ。表面的なヒアリングだけをして準備した資料では、勝負に臨んでも勝ち目はない。

 商談前に勝負はついているということを忘れないでほしい。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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