サイオステクノロジーの「SIOS Coati」はAmazon EC2をエージェントレスで監視し、障害時にインスタンスを再起動してくれるサービス。1時間3円という低価格で利用できるSIOS Coati登場の背景や製品コンセプトについて、エバンジェリストのコーティー君に聞いた。えっ? コーティー君?(以下、敬称略 インタビュアー TECH.ASCII.jp 大谷イビサ)
HAクラスターソフト「LifeKeeper」はクラウド時代にどうする?
コーティー:こんにちは。SIOS Coatiエバンジェリストのコーティーです。
オオタニ:どうも。えーっと、人間の人でもいいんですが、やっぱりコーティー君にお話しを伺うという企画でいいんですよね。
コーティー:はい。AWS Summit 2017のサイオスブースで終日お客様対応していたので、ちょっと疲れてますが、ちゃんとコーティーが対応しますよ。
オオタニ:あ、わかりました。では、まずSIOS Coati開発の経緯について教えてください。
コーティー:もともとサイオステクノロジーでは「LifeKeeper」というHA(High Availability)クラスターソフトを販売しています。2台のサーバーでアクティブ-スタンバイの構成をとっておき、もしアクティブ側のサーバーやアプリケーションがダウンしたら、自動的にスタンバイ側に切り替えて、処理を継続するというものです。お客様から見れば、瞬断はするかもしれませんが、ビジネス自体は継続できます。こういうビジネスコンティニュイティを実現するツールがHAクラスターソフトと呼ばれるものです。
オオタニ:サイオスさんといえば、OSS関係に明るいというのと、LifeKeeperのイメージがありますね。
コーティー:このLifeKeeperのビジネスはグローバルで20年以上展開しています。ただ、2014年の後半くらいからクラウドが一気に台頭してきたのを横目にしながら、オンプレミスのサーバーにインストールする形態のソフトウェアを、この先クラウドネイティブにするにはどうすればいいのかという議論が社内にわき起こりました。
オオタニ:なるほどパブリッククラウドの台頭が製品登場の背景なんですね。
コーティー:LifeKeeper自体の市場にも課題がありました。もともとLifeKeeperはHAクラスターソフトという製品の性格上、落ちたら困るところに使われてきました。たとえばOracle DBのシステムはダウンしたら困るのでLifeKeeperを導入してもらえるのですが、社内用のWebサイトは落ちてもしょうがないからとLifeKeeperは我慢してしまいます。本当はもっといろいろなユーザーさんにも使ってもらいたいのです。こういう話から、社内で2014年末にクラウド時代の新しいサービスを考えようということになりました。
オオタニ:LifeKeeperに比べて、どういったところを変えようと考えたのですか?
コーティー:もちろん、LifeKeeperの実績は活かしたいという気持ちがありました。でも、LifeKeeperのコードを使うという前提に立ってしまうと、どうしても今までのビジネスの延長に終わってしまう。そこで、いままでのノウハウを生かしつつも、ゼロから完全に新しいモノを作ることにしたんです。
LifeKeeperにはOracle DBだったり、Apacheなどのサービスを立ち上げ直すリカバリキットがオプションで用意されていました。でも、これだと開発側はアプリケーションに併せてキットを作らなければならないし、お客様の導入の敷居も高い。結局、大事なサービスしか使わないことになってしまいます。SIOS Coatiはそのコンセプトを全部見直し、とにかくシンプルにして、誰でも使えるようにしました。
1時間3円でいいの? 男気あふれたSIOS Coati
オオタニ:なぜAWSを選んだか教えてください。
コーティー:正直、2014・2015年は各社のクラウドで、どんなビジネスができるのか、どうすればお客様に喜んでいただけるか、くまなく調べました。調査を経て、2015年後半、これから延びる先進的なプラットフォームとして当時一強だったAWSを選択しました。
オオタニ:で、サービス名の「Coati」を調べると、アカハナグマということなんですが、よく意味が……。コーチとか、放置じゃないんですよね。
コーティー:教える柄でもないですし、放置してどうするんですか。まあ、後発ですからね。キャラできちんと認知してもらって、あわよくばキャラクタービジネスまで進めたらいいなみたいな感じです。動物だとなんだかオ●イリーっぽいし、キャッチーじゃないですか。
オオタニ:マジレスありがとうございます。では、Coatiのできることをまじめに説明してください。
コーティー:具体的にはAmazon EC2のOS上で動いているすべてのサービスを監視して、OSのサービスコマンドで死活監視し、異常があったら、立ち上げ直すようにします。サービス自体がうまく再起動しない場合は、OSを再起動します。ここではOSのコマンドを使うのではなく、AWSのAPIを使っているので、インフラ側から確実に起動しなおせます。
オオタニ:なるほど。実際にどうやって使うのか教えてください。
コーティー:SIOS Coatiは、AWSで提供するクラウドサービスであり、お客様のEC2があるVPCにVPC Peeringでつながせていただきます。ですから、エージェントを1つ1つインストールする手間もありません。リモート接続することで、OS上で動作しているサービスを監視し、落ちていたら、再起動します。また、再起動や復旧前後のログを記録し、レポートもメールで通知します。運用管理者の負荷を下げたいというのがCoati全体に流れる思想ですね。
オオタニ:インストール不要で、エージェントレスというのはいいですね。
コーティー:料金体系も完全従量課金にしていて、1時間あたり1インスタンスあたり3円。監視対象のインスタンスに対して、稼働した分だけ請求させていただくという形です。タグ付けすれば、監視対象から外すことも可能です。
オオタニ:1時間3円ということですが、けっこう思い切ってますね。
コーティー:やっぱりインパクトは必要ですし、AWSと同じ課金体系じゃないといけないとも思いました。お客様はやはりインフラのコストを下げようと思って、AWSを導入しているので、あまり高価なのはいけない。もちろん、監視していないのにお金をいただくのもフェアじゃないので、きちんと使った分だけお支払いしていただこうと思います。AWSと一緒でクレジットカード決済で、すぐに利用を開始いただけます。
オオタニ:なるほど。それならAWS使っている人からすると、親しみやすいですね。せっかくなのでリンクを張っておきましょう。
コーティー:今までLifeKeeperはパートナー様経由での販売だけでした。でも、SIOS CoatiはAWS同様にクレジットカード決済で、すぐに使ってもらえるようにしました。システム面での苦労は意外とありませんでしたが、社内の立て付けとか業務部門との調整はけっこう大変でした。課金対象の動作をきちんと把握するというところが多少大変だったくらいですかね。