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HPEの“メモリ主導型コンピューティング”研究プロジェクト「ヨタバイト級も実現可能」

世界最大160TBの単一メモリ空間「The Machine」が実証に成功

2017年05月22日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 米ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)は現地時間5月16日、“メモリ主導型コンピューティング”(Memory-Driven Computing)の実用化を目指す「The Machine」研究プロジェクトにおいて、世界最大の単一メモリ空間を持つコンピューターの実証実験に成功したと発表した。今回の実証により、エクサバイト、ゼタバイト、ヨタバイト級に及ぶ単一メモリプールの実現も可能であることが予想できるとしている。

今回の実証実験で使われた「The Machine」プロトタイプ。40ノードで160TBの単一メモリプールを構成した

「The Machine」プロトタイプを構成するブレード。左半分がコンピュートノード、右半分が共有メモリノードで、各々が独立して動作する

 HPEでは、近い将来に予想される「『ムーアの法則』の終焉」と「生成されるデータ量の指数関数的な増加」に備え、「巨大かつ複雑なデータの瞬時での分析」というニーズに対応するために、半世紀以上大きな変化のない従来の“プロセッサ中心型アーキテクチャ”からのパラダイムシフトとなる“メモリ主導型アーキテクチャ”の実用化を目指している。その研究プロジェクトがThe Machineだ。

 The Machineでは、大容量の不揮発性メモリ(NVM)を搭載した多数のメモリノードを高速なファブリックで接続し、巨大な共有メモリプールを構成する。この共有メモリプールを複数のコンピューティングノードが参照し、データを処理するという仕組みだ。従来のキャッシュ/メインメモリ/ストレージというティアをなくす「ユニバーサルメモリ」、メモリファブリックだけでなくノード間、ノード内部のバスにまで適用される「フォトニクス(光通信)」、汎用的なx86だけでなくGPU、DSPなど個々のワークロードに適した「SoC(System on a Chip)」が利用可能、といった技術的な特徴がある(詳細な解説は下記関連記事を参照されたい)。

メモリを中心に据える「メモリ主導型アーキテクチャ」のノード構成(左)。クラスタ構成の場合、共有メモリプールを中心にプロセッサ(コンピュートノード)が“ぶら下がる”形になる(右)

 The Machineプロジェクトでは、すでに昨年段階でプロトタイプ機を完成させていた。今回の実証実験は、そのプロトタイプ機で技術改良を重ね、実際に大規模な単一メモリ空間を構成したものとなる。

 具体的には、40台の物理ノードを高速なファブリックプロトコルで相互接続し、160TBの共有メモリプールを構成している。コンピュートノードには、Cavium(カビウム)のARMv8-A SoCである「ThunderX2」を搭載し、メモリ主導型アーキテクチャに最適化されたLinuxベースのOSが動作する。アプリケーション開発のためのプログラミングツール(SDK)も用意されている。

 HPE発表によると、160TBの単一メモリ空間は「米国会図書館が所蔵する全書籍の5倍にあたる、約1億6,000万冊の本に書かれているデータを同時に処理できる」規模のものであり、これまではこのような巨大データを単一メモリシステム内で保持/操作することは不可能だった。

 さらにHPEでは、今回の実証によって、エクサバイト(ペタバイトの1000倍)規模の単一メモリシステム、さらには4096ヨタバイト(ヨタバイトはペタバイトの10億倍)のメモリにまで「容易に拡張可能であると予想している」と述べている。なお4096ヨタバイトの規模は、「今日の宇宙全体に存在するデジタルデータ総量の25万倍」だ。

訂正とお詫び:掲載当初「今日の宇宙全体に存在するデジタルデータ総量の2万5000倍」としておりましたが、HPEの発表に誤りがありました。上記のとおり訂正いたします。(2017年5月23日)

 発表の中で、HPEのCTOでありHewlett Packard Labs ディレクターを兼任するマーク・ポッター(Mark Potter)氏は、「本日発表した(メモリ主導型)アーキテクチャは、インテリジェントエッジ機器からスーパーコンピュータまで、すべてのカテゴリーのコンピューティングに応用可能」だと述べている。

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