Dell EMC大規模統合の効果は「目標をすべてクリア、すべてがうまくいっている」
「従量課金モデルでのIT利用モデル発表も」Dell EMC幹部
2017年04月26日 07時00分更新
4月25日、米Dell EMCのサービス&IT担当プレジデントを務めるハワード・エライアス氏が来日し、昨年9月のDell EMC統合以後の順調なビジネス成長などを報告した。同氏は旧EMC側の責任者として、DellとEMCの統合を担当していた。
また、5月に米国で開催される「Dell EMC World 2017」において、ハードウェアを含めて従量課金型で提供する新たなサービスモデルを発表することを明らかにし、「こうしたサービスは、プライベートカンパニーだからこそできる取り組みのひとつ」だと述べた。
――2016年9月の統合から半年を経過した。統合の成果はどうか。
エライアス氏:わたし自身は、過去にHPとDECの合併、HPとコンパックの合併も経験しており、今回が3度目の大規模な企業合併だ。そして、今回が最大規模の合併だった。
DellとEMCは、製品ポートフォリオやビジネスモデルこそまったく異なるものの、「顧客第一主義」や「ビジネスに対する誠実な姿勢」「チームワークを重視して仕事を行うこと」など、共通するカルチャーを持っていた。両社統合の成功においては、そこが見逃せない要素だ。
(合併後の)この半年間は、目標をすべてクリアしており、予想以上にすべてがうまくいっている。市場シェアは拡大し、顧客からも統合が前向きに受け取られている。統合した製品やソリューション、サービスも高い評価を得ている。こうした要素が、統合の成功を裏付けることになるだろう。
従業員に対して行っている満足度(NPS)調査の結果も、統合後にスコアが高まった。パートナーや顧客から良い反応を得て社員のモチベーションが高まり、それがまた、顧客に最高のテクノロジーを提供するという好循環につながっている。
昨年9月に発足したDell TechnologiesおよびDell EMCは、世界最大のプライベートITカンパニーだ。幅広いIT関連ポートフォリオを持ち、世界中の顧客に対して、デジタルトランスフォーメーション、ITトランスメーション、ワークフォーストランスフォーメーション(働き方改革)、モダナイズデータセンター、セキュリティトランスフォーメーションを提供できる。しかも、クライアント、モバイル、サーバー、ストレージ、クラウドインフラ、次世代のアプリケーション開発環境など、持っているポートフォリオのほとんどの領域でリーダー的な存在だ。DellとEMCの統合によって、ビジネスがさらに加速し、シェア拡大につながっている。
――Dell EMCが成長している要因はなにか。
エライアス氏:最大の要因は、統合型ソリューションを提供できる会社になったことだ。ハイブリッドクラウド、ハイパーコンバージドインフラ(HCI)、ソフトウェアディファインド、スケールアウトといった、統合型ソリューションを顧客に提供できる企業になった。
2つめは、規模の持つ強みだ。売上高は750億ドルに達し、社員数は14万人、180カ国で展開している。また、年間45億ドルの研究開発投資を行っている。IT産業においては、規模を小さくする選択は間違いである。加えて、規模が大きくなれば、主要パートナーともより戦略的な会話が可能になる。
ポートフォリオの拡大で、顧客の利便性が高まったことも挙げられるだろう。顧客は、たくさんのベンダーと付き合いたいとは考えていない。できるだけ統合型ソリューションのほうがよく、付き合うパートナーは少数の戦略パートナーだけにしたいと考えている。
Dell Technologiesは、規模があり、統合型ソリューションを提供でき、エンドトゥエンドの幅広いポートフォリオを提供できる。しかも、各(ソリューション)領域には専任リーダーがいて、顧客セグメントごとにも専任リーダーがいるので、俊敏性のある提案ができる。
そして、プライベートカンパニーであることも重要な要素だ。ウォールストリート(投資家)のほうを向いたビジネスではなく、顧客のことを考えたビジネスができることにつながる。競合他社では難しいような、10年単位の長期的視点に立った投資ができる。
――「プライベートカンパニーだからこそ実現する投資」とは、たとえばどんなものか。
エライアス氏:今年5月に、米ラスベガスでDell EMC Worldを開催する。ここでは「as a Service」型の利用モデルを新たに発表する予定だ。これは、「クライアント as a Service」や「ハイパーコンバージド as a Service」など、ハードウェアを伴った従量課金型のサービスモデルとなる。
ソフトウェアの場合ならまだしも、ハードウェアを含めたサービスモデルは、投資の回収に時間がかかる。だが、投資家は、毎月多くの資金が入ってくることを望む。公開企業のままで、投資家の期待に沿うような投資を考えれば、このビジネスモデルには踏み出せない。プライベートカンパニーだからこそ、実現できる新たなサービスである。
――Dell Technologiesは、クラウドビジネスをどう捉えているか。
エライアス氏:クラウドビジネスは、Dell Technologiesにおいて最も急成長しているビジネスである。クラウドは将来のITオペレーションの姿であり、顧客規模を問わず、すべての顧客に受け入れられるものだと考えている。中でもベストなモデルはハイブリッドクラウドだ。
Dell Technologiesでは、ハイブリッドクラウド領域に向けて、コンサルティングサービスや管理レイヤーソリューションなどを提供するほか、パブリッククラウド事業者向けのインフラ製品も提供していく。
また、エンタープライズ向けのパブリッククラウドサービスとしてVirtustream(バーチャストリーム)を展開しており、日本ではCTCやNTTコミュニケーションズと協業している。これは、ハイパフォーマンスや低遅延、ミッションクリティカル性などが求められる用途で活用されている。
日本市場における最大の関心事も、日本の顧客におけるハイブリッドクラウド採用が進むよう支援していくことだ。加えて、オールフラッシュやHCI、Software-Defined Computing、SDNなどのテクノロジーによって、データセンターのモダナイゼーションも視点していく。
新技術の採用を阻む障壁は、運用モデルだ。クラウドの世界は、従来型の運用モデルでは通用しない。新たな技術の導入だけでなく、人やプロセスの変革も進める。そこに、Dell EMCが果たす役割がある。
――成長分野であるHCIでは、VMwareベースの「VxRail」や「VxRack」を投入しており、今後、NutanixベースのXCシリーズの見直しを噂する声もあるが。
エライアス氏:PowerEdgeサーバーを採用したVxRail、VxRackは、VMwareベースのHCIとしては最高のプロダクトだ。一方で、NutanixベースのXCシリーズも、複数のハイパーバイザを提供することができる環境として、顧客に選択肢を提供する意味で重要な製品である。Dell EMCとニュータニックスの関係は良好であり、今後も、顧客が選択できる製品のひとつとして継続的に提供していく。
――ちなみに、Dell Technologiesの社名は、マイケル・デル会長兼CEOが決めたのか。
エライアス氏:マイケル・デルの投票権は大きかったとも言えるが(笑)、マイケル個人が決めたわけではない。エージェンシーと相談したり、リサーチを行ったりして決めたものだ。決定までに多少の時間はかかったが、最終的には「顧客に最も響く」社名であり、会社が目指す方向にもフィットしているということで「Dell Technologies」とした。
その一方で、これまでのブランド名を残すことにもこだわった。クライアント市場では世界中で有名な「Dell」ブランドを残し、エンターブライズやデータセンタービジネスでは「Dell EMC」とした。「VMware」や「Pivotal」「RSA」「Virtustrem」「SecureWorks」といった、各市場で大きな価値を持つブランド名もそのまま残している。