このページの本文へ

前へ 1 2 3 次へ

最新ユーザー事例探求第45回

AWS導入の理由は「IT部門の役割が変化したから」

プライベートクラウドの黒歴史を乗り越えた近畿大学のクラウド移行の道

2017年04月25日 10時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 大学在籍者だけで3万人規模を誇る近畿大学は、2015年から学内システムのクラウド化を本格化しており、多くのサーバーをAWS(Amazon Web Services)に移している。クラウド移行への理由を「IT部門の役割の変化」と語る近畿大学 総合情報システム部 教育システム課 技術主任の高木純平氏と前川昌則氏に、クラウド移行に向けた歩みを語ってもらった。

Gmail導入を皮切りに、AWSやSaaSの導入を積極的に

 完全養殖による「近大マグロ」で知られる近畿大学は、14の学部、1つの専門職大学院、11の大学院、2つの短期大学、多くの研究所・附属高校等を擁する私立大学。東大阪キャンパスを中心に、奈良、大阪狭山、和歌山、広島、福岡にキャンパスを持ち、高等学校以下、通信教育部までを含めると5万人を超える大所帯を抱えたマンモス校である。2016年度には語学・人材教育学校として名高いベルリッツとタイアップした国際学部を新設し、松岡正剛氏プロデュースの新図書館「BIBLIOTHEATER」も登場した。とにかく時代の先を行く改革力と広報力が功を奏し、志願者は4年連続日本一となっている。

マンガが3割を占めるという新図書館「BIBLIOTHEATER」

 こうした近畿大学のシステムは、大きく公式サイトやオウンドメディアを運営するWeb系システム、履修登録や成績管理など教員や学生が授業で利用する教育研究系システム、人事や給与、会計、グループウェアなどの事務系システムの大きく3つに分けられる。

 まず2012年に、教員と学生用のメールシステムをGmailに移行。その後、2014年に学術情報ネットワークのSINETとAWSとの接続が可能になったのを機に、プライベートクラウド上にあった教育研究系システムのWebサーバーとスパム対策サーバーをAmazon EC2に、DNSの一部をRoute53に移行した。

 2015年の秋口にはプレスリリースを出し、2016年度から3年間かけてクラウドへ完全移行することを対外的にもアピールした。2016年度は、業務系システムの教職員用グループウェアを皮切りに、履修登録や成績管理等の教務システム、シラバスの公開システム、附属高校の校務システムなどをAWS上に移行。今後は基幹システムもワークスアプリケーションズのクラウドERP「HUE」を新規導入していくという。

 現在、3年で見積もってきた移行作業は順調に進んでおり、クラウド移行は予定どおり終わる予定だ。4年ごとのシステムリプレースを経て、徐々にパブリッククラウドに移行するエンタープライズ企業から比べれば、かなりハイスピードでクラウド移行が進んでいると言えるだろう。

「リプレース作業への嫌悪感」と「プライベートクラウドの黒歴史」

 近畿大学のIT部門である総合情報システム部でITを切り盛りし、ほぼ10年となる高木純平氏は、当初からクラウドを指向していた。というよりも、オンプレミスでのハードウェア調達という業務に大きな疑問を感じていた結果、パブリッククラウドに行き着いたと言える。

「大学でも、一般企業でも同じですが、われわれのような情報システム部のメイン業務というのは、社内システムのリプレースになっていた気がするんですよ。私がこの大学に来て最初の7年間でのリプレース件数はトータルで39件もあったんです。年間で5~6件のリプレース案件をやっていて、そのたびに大きな労力と金額を使ってきたわけです」(高木氏)

近畿大学 総合情報システム部 教育システム課 技術主任 高木純平氏

 日々黙々と業務を遂行していた高木氏は、こうしたリプレースに嫌悪感を抱くようになった。単純に面倒で手間がかかるというのもあったが、なにしろリプレースを続けることに意義を見いだせなくなっていた。自身の不快な気持ち、仕事に対する嫌悪感を整理したという高木氏は次のように語る。

 「ハードウェアの調達や選定にとにかく時間とお金がかかるし、古い機械を新しい機械を入れ替えるだけならば、正直誰にでもできるので、やっていてつまらない。さらに現場に喜ばれない。確かにパソコンは速くなるかもしれないけど、利用者ができることは変わらないし、リプレース作業に伴ってサービスが止まったらむしろ現場から怒られます。なによりリプレースしたからといって、残業が減るわけでも、学生が喜ぶわけでもないので、リプレースしてよくなることを経営側に説得できなかったんです」(高木氏)

 どうするかを考えた高木氏は、まずプライベートクラウドに行き着いた。ブレードサーバー上に仮想マシンをホストするプライベートクラウドを構築すれば、いざ障害が起こっても稼働するブレードを移せばよい。パブリッククラウドの利用がまだまだ本格的でなかった当時、多くのエンタープライズ情シスは同じ結論に至ったはずだ。Gmailに移行した学生と教職員向けのメールシステムをのぞき、近畿大学は多くのシステムをブレードサーバーベースのプライベートクラウドに移行したが、満足できる結果には至らなかったという。

「業界の人がよく『プライベートクラウドは黒歴史』って言いますが、本当にその通りだと思います。結局、ブレードサーバーも通常のサーバーと同じように壊れるし、調達も時間がかかります。だから、通常のx86サーバーに比べてコストも上がるんです。ハイパーバイザー絡みのトラブルも多くて、既存のシステムよりも手間がかかってしまいました。次にどうすればいいかを考えたところ、2012~13年頃にAWSの国内事例が少しずつ出てきたのが目に付いたんです。特に海外の大学では当たり前のように使っていたので、もうAWSしかないなと思いました」(高木氏)

前へ 1 2 3 次へ

この連載の記事

ASCII.jp特設サイト

STAR WARS バトルフロント II実況

クラウド連載/すっきりわかった仮想化技術

ピックアップ