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プリンストンが販売する高機能ストレージ「Drobo」を活用しよう 第22回

10TBを実現したヘリウム充填HDDの秘密をHGSTに聞いた

合計21万円! 10TB HDDを3台、Droboに使ってみた

2017年04月06日 11時00分更新

文● 飯岡真志、編集 ●金子/ASCII.jp

提供: プリンストン

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10TB HDDを実現したヘリウム充填HDDの秘密はやっぱり知りたい!

 前項では技術的なことが分からなくても「Drobo+Ultrastar He10」は使えると説明したが、やはり筆者はギーク。「なんでヘリウム充填HDDは良いの?」はどうしても気になってしまう。そこで、Ultrastar He10の開発元であるHDDベンダー「株式会社HGSTジャパン」(以下、HGST)におじゃまして、ヘリウム充填HDDの秘密を聞いてきた。

 今回、主にお話をしていただいたのは、HGST営業本部ストレージソリューション部ディレクターの山本慎一氏だ。山本氏は秋葉原の店頭で行われるイベントなどにも参加されることが多く、ご存知の読者もいるだろう。

話をうかがったHGST 営業本部ストレージソリューション部ディレクターの山本慎一氏

Q:さっそくですが、ヘリウム充填HDDについてうかがいます。10TBという大容量のHDDを実現できたキーテクノロジーを教えてください。

A:当然ですが、密閉型のヘリウム充填が最大のキーですね。手がけてから4年ほどになりますが、昨年にはヘリウム充填HDDの出荷台数は1000万台を越えました。これまでのように記録密度を上げられない時代に必要なテクノロジーですね。

Q:なぜヘリウム充填するとHDDの容量を上げられるのでしょう?

A:ヘリウムの分子量は空気(窒素と酸素が4:1の混合)の平均分子量と比べて約1/7になります。ヘリウムの中で円盤を回せば、空気中で回すのと比較してより安定し、揺れを回避できる上に、気体との摩擦による発熱も低下します。その結果、これまでは5枚の円盤を収めていた1インチハイトの筐体に、7枚の円盤を収めることが可能になりました。これにより容量は40%上がるわけです。

ヘリウム中では円盤の回転が安定し、気体との摩擦による発熱も少ないため、より多くの円盤を搭載できるようになる

 特に気体との摩擦を減らせるのは大きなメリットです。「HDDのヘッドと円盤の関係は、ジャンボジェットが1mの高さを飛んでいるようなもの」という説明を聞いたことがあると思いますが、それはもう古い話で、今では「ジャンボジェットが0.7ミリの高さを滑っている」くらいの状態です。

 0.7ミリは「飛んでいる」と言ってよいのか分からないレベルなので、「滑っている」と称しています。ヘッドと円盤のすき間はオングストローム(1000万分の1ミリ)オーダーで、もしぶつかっていたら摩擦でデータは読み出せないはずです。読み出せているということは、分子1、2個分のすき間で浮いているはず「だろう」ということなのです。

 これまた昔の話ですが、HDDに埃や煙草の煙の粒子が入ったらクラッシュするというような話もありましたが、今のヘッドと円盤のすき間は狭すぎて、埃も煙の粒子も入りません(笑)。

Q:いろいろとHDDの常識が書き換わりますね(笑)

A:一般的なHDDは埃を防ぐためにフィルターが付いていて、そこを塞いでしまうと気圧の変化に対応できなくなりました。そのため、通常のHDDが動作しないこともある高地での使用や地震観測用に地中に埋める用途では、特別品を作って対応していました。ヘリウム充填HDDは密閉しているためそのような苦労がなくなり、さらに宇宙空間でも使えます

Q:ヘリウム充填HDDは円盤の枚数を従来の5枚から7枚に増やせたわけですが、まだ増やせそうですか?

 A:最新のモデルでは8枚で12TBになりました。この春から出荷開始予定で、夏には秋葉原のお店にも並ぶと思います。

 それ以上の枚数については、もう少しいけるかも? という気もしていますが、どこかの時点でコストが急に上がってしまう分岐点というものがあります。今はそれがどの辺なのかを見極めている状況です。

なかなか見ることのできないHDDのカットモデル。右は7枚、左は8枚の円盤を1インチハイトの筐体に収めている

7枚の円盤を収めたHDDのカットモデル。これが10TB HDD

8枚の円盤を収めたHDDのカットモデル。こちらは12TBとなる。よく見ると、円盤がより薄くなっているのが分かる

 データセンターなどの顧客の要求に応えていくためには、年率30%程度の容量向上が必要になります。一方で、面積あたりの密度の向上ペースは年率10%程度なので、なんとかして円盤を詰め込んででも対応しないとデマンドに追いつけないというのが実情です。

 6TBモデルで円盤の枚数を増やし、8TBモデルでは記録密度の向上を技術的に詰める。次の12TBではまた枚数を増やして、その次はまた記録密度の向上を技術的に詰める……。このように少しずつ容量を増やしていければと思っています。


 

(次ページ、「NAS向けHDDはデスクトップ向けとは違う!」に続く)

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