ついに3D XPointメモリー採用SSDが登場!
インテル、データセンター向けSSD「Intel Optane SSD DC P4800X」を発表
2017年03月20日 01時00分更新
どもどもジサトライッペイです。
デスクトップPC向けの第7世代Coreプロセッサー(開発コードネーム:Kaby Lake-S)の発売から早2ヵ月が過ぎました。その間、インテルのライバルであるAMDが満を持して、14nmプロセス製造のZenマイクロアーキテクチャーを採用した新CPU「Ryzen」を発売。続けざまに、NVIDIAのウルトラハイエンドGPU「GeForce GTX 1080 Ti」を搭載したグラフィックボードが秋葉原に登場し、自作PC業界は2017年第1四半期から大盛り上がりです。
そして、年初に一発かましたインテルからまたまた楽しい発表がありました。そう、いよいよ“Optane SSD”が登場します。IDF15で華々しく発表され、2016年の第1四半期に登場予定だったあのOptane SSDですよ。結局、2016年中はお目見えできず、「ひょっとして開発が順調じゃないのかな?」と思っておりました。
ところが、インテルは今年1月のデスクトップ向け第7世代Coreプロセッサー発表時に、その特徴として“Optane Memory”への対応を謳っておりました。「ということは、近々何かしらの製品が出るかも」と思ってたら案の定です。
そして、今回発表されたのがデータセンターやサーバー市場向けの“Optane SSD”、その名も「Intel Optane SSD DC P4800X」。2017年下半期には各ベンダーで広く普及しているとのことですから、秋葉原にも流れてきたらいいなーなんて思いつつ、本稿では詳しくその特徴をご紹介します。
NANDよりも1000倍高速な3D XPointを採用したOptane
まずは、Optane SSDのおさらいから。インテルとマイクロンは2015年に3D XPointという新しいメモリーを共同開発しました。現在のSSDに使われているNANDメモリーと同程度の容量の製品が作れて、速度はその1000倍と言われています。コンピューターは現在、メインメモリーに使われるDRAMメモリーとストレージに使われるNANDメモリーの速度差が問題視されています。要は、DRAMに対して、NANDが遅すぎてボトルネックになっているということです。そのボトルネックを少しでも解消しようよ、ということで新しいメモリーの開発に半導体業界は尽力しています。そして、インテルとマイクロンの結論は、この3D XPointメモリーというわけです。
そして、この3D XPointメモリーを採用した製品を「Optane」と呼ぶんですが、実はこの3D XPoint、メインメモリーとストレージ、両方の性質を持てるんです。なので、Optane製品でもOptane SSDとOptane Memoryがあるわけです。しかし、インテルがデスクトップ向け第7世代Coreプロセッサー発表時に説明した、Optane Memoryの役割はいわゆるHDDと組み合わせて使えば、低コストでSSD並みのスピードになる、というものでした。M.2スロットを使うとのことで、昔あったmSATAに小容量SSDを突っ込んでHDDのキャッシュに使う、Intel Smart Response Technologyを思い出しました。
わかりづらいんですが、メインメモリーとして使えるものはDIMMモジュールの形状で登場するので、“Optane Memory”はそれとは別物と覚える必要がありそうです。
形状はAICとU.2、容量は375GB/750GB/1.5TBで展開
おさらいが終わったところで、Intel Optane SSD DC P4800Xの話に戻ります。P4800Xの形状はAIC(PCI Express接続のボード型)とU.2(2.5インチ型)の2種類ライアップ。容量はそれぞれ375GB、750GB、1.5TBの3種類です。
その名の通り、ストレージとして扱える“Optane SSD”なわけですが、インテルの従来のハイエンド「Intel SSD DC P3700」(1.6TBモデル)と比べると、Low Queue Depthの性能は70/30 mixedで最大8倍、ランダムリードで最大10倍、ランダムライトでは最大3倍高速だそうです。
確かに比較グラフを見てみると、Que Depthが少ないときほど差が大きいですね。僕のようにWindows 10の自作PCで高速SSDを使いたいって人にとっては、Que Depthが4以上の状況は考えにくいので、Low Que Depthのときでも高速なのはありがたいことです。ちなみにQue Depth 12あたり、からP4800Xの速度は横ばいになっているのでそういったチューニングなのだと思います。
また、何と言ってもP4800Xは耐久性の高さがウリです。SSDの寿命を示す指標として、DWPD(Drive write per day)という単位があります。メーカーの製品保証期間内で、1日に何回まるごと書き換えられるかという意味です。NAND SSDでは0.5~10DWPDのところを、なんとP4800Xの750GBモデルでは30DWPDもいけるとのこと。ちなみにインテルの保証期間は5年ですから、導入してから5年間は1日に30回、つまり750GBモデルなら、約22TBぶん書き換えしてもOKということになります。
ちなみに、SSDの指標にはこれによく似たTBW(Tera byte written)という単位もあります。こちらは製品寿命を迎えるまでにどれだけ書き換えできるのかという指標になります。これで計算してみると、22TB×5年(1825日)=40150TB、これをもっと大きな単位であるペタバイト(PB)に直すと、約40PBになります。一般的なM.2 SSD(Intel 600p、1TBモデル)で576TBWですからね。P4800Xの化け物っぷりがうかがえます。
DRAMメモリーとメモリープールを構築できる
次にP4800Xの使用例ですが、普通にストレージやNAND SSDなどのストレージキャッシュとして使えるパターン。後者はコンシューマー向けのOptane Memoryと同じ使い方だと予想できます。そしてもうひとつが、DRAMメモリーとメモリープールを構築するのパターンです。各使い方に優位点があります。
まずストレージとして使った場合ですが、P4800XはP3700と比べて毎秒あたりのトランザクションが11倍以上になり、トランザクションあたりのコストが91%削減できます。これにより、データセンターはより効率的に運用できるようになります。
そして、DRAMメモリーと同じメモリープールを組むと、これまで2ソケットXeonだったら最大3TB、4ソケットXeonだったら最大12TBだったメモリー容量のプラットフォーム的な限界を超えられます。これはIntel Memory Drive Technologyと呼ばれる技術で、DRAMとOptane SSDでひとつの揮発性メモリープールをエミュレートする機能で、Xeonのみのサポートになるようです。
Intel Memory Drive TechnologyでDDR4メモリー128GB+P4800Xの375GBモデルを4基でひとつのメモリープールを構築した場合と、DDR4メモリー768GBの場合、前者が最大1.1倍の演算性能になるようです。もちろん、Optane SSDはメモリーのように扱えますが、DRAMよりは遅いので毎秒あたりのトランザクションは8割程度に減っちゃいます。しかし、3D XPointのポテンシャルはDRAMの10倍遅いので、十分健闘していると思います。ちなみにDRAMは容量を多くするのが難しく、3D XPointの10分の1です。P4800Xの流通価格次第では、DRAMメモリーを積むよりもはるかにコストが安く済む可能性もありますね。
上述しましたが、Intel Memory Drive Technologyを使えば、従来プラットフォームに縛られていたメモリーの積載量限界を突破できます。2ソケットXeon構成なら3TBだった限界が24TBに、4ソケットXeon構成なら12TBの限界を48TBまでアップできます。メモリーが増えれば、難病治療や宇宙、深海といった未知の領域の研究、自動運転などさまざまなジャンルでこれまでよりも高速な機械学習が可能になります。
もちろん、2ソケットXeonで3TBフルにDIMMを積載するというのは現実的じゃありません。なぜなら、現在のDIMMは大容量なものでも64GBのDIMMになります。2ソケットXeonマザーボードでもメモリースロットの数は多くても24基。つまり、24スロット×64GB=1.5TBになるので、現時点での実際のメインメモリー積載量はもっと低いはずです。128GBのDIMMが普及して、初めて到達する限界なのです。
というわけで、Xeon E5-2699 v4×2搭載マシンのユーザーである僕としてもすごく気になるOptane SSD、P4800X。かなり購買欲をそそる製品なんですが、初物なのでだいぶお高いはず。ちなみに、資料の中でさんざん比較対象になっていたP3700ですら実売価格は1.6TBモデルで37万円前後、800GBモデルで18万円前後、400GBモデルで9万円前後とお高めなのです。ドキドキしながら秋葉原に流通するのを待ちましょう。
■関連サイト
Intel Optane Technology