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不動産屋にだまされるな!マイホーム売買に忍び寄る悪徳手口 山田寛英/パイロット会計事務所代表、公認会計士・税理士

文● 山田寛英(ダイヤモンド・オンライン

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不動産屋にだまされていないか?
「情報格差」と「常識のズレ」

春先にかけて動き出す不動産市場。マイホームを売買する人も増えるだろう。しかし、ちょっと待ってほしい。その不動産屋、本当に大丈夫?

 消費者と不動産業者との間にあるもの、それは圧倒的な「情報格差」とお互いが持つ「常識のズレ」である――。これは、不動産専門の会計事務所を経営している筆者が常々感じていることだ。

 公認会計士・税理士である筆者は、不動産を売り買いする消費者とそれを仲介する不動産業者の双方から、年間約1000件にも及ぶ相談を受けている。そのうち消費者から受ける相談は、主に不動産売買・相続時の税金や資金繰りに関するものだが、彼らの多くは人生の一大事である意思決定に際して、十分な情報や常識を持ち合わせておらず、不安を感じることがある。そして、それらの原因のいくつかは、実は不動産業者によって“意図的”に生み出されているものが少なくない。

 読者の中には不動産業者と相対しているときに、彼らの言っていることを「怪しい」と感じたことがある人もいるかもしれないが、現実として彼らが消費者を「だます」ことで儲けてきた側面があることも否めないだろう。

 これから春に向けて新生活をスタートする人が増え始め、不動産市場は本格的に動き始める。読者諸氏の中にも、マイホームを買おうとしている人、売ろうとしている人、そして相続しようと考えている人がいるだろう。そんな人たちに向け、筆者が長年の業務経験から培った「不動産屋にだまされないための心得」をお伝えしよう。

【心得(1)】不動産屋の報酬は他の
士業と比べて圧倒的に「高い」

 第一に注意したいのが「仲介手数料」である。これは、マイホームを売ったり買ったりするとき不動産業者へ、つまり宅地建物取引士へ支払うことになるお金だ。家を売買した経験がある読者の中には、どこかで「高すぎる」と感じながらも渋々払ったという人もいるかもしれない。

 はっきり言おう。多くの場合、それは実際に「払い過ぎ」だ。下の図をご覧いただきたい。

 不動産業者が売主か買主、いずれかを仲介すれば受け取る仲介手数料は消費税別で「物件価格×3%+6万円」となる。実際にはどれくらいの金額になるのか、物件の価格帯別に消費税まで含めて以下に計算してみた。

・3000万円の物件で、103万円
・5000万円の物件で、168万円
・7000万円の物件で、233万円
・1億円の物件で、330万円

やまだ・ひろひで
パイロット会計事務所代表、公認会計士・税理士。1982年生まれ。東京都出身。早稲田大学商学部卒。2010年アーク監査法人(現・明治アーク監査法人)入所、不動産会社・証券会社を中心とした会計監査実務に従事。その後、相続税申告・不動産税務に精通した税理士法人東京シティ税理士事務所にて個人向け相続対策・申告実務に従事。15年、不動産に特化したパイロット会計事務所を設立。不動産を買う・売る・相続するときの税金・資金繰りを専門とする。公認会計士の立場で不動産と接するなか、一般人と業界関係者の力に、圧倒的な差異が温存されている現状に警鐘を鳴らすとともに、インターネットの力で変革が始まる直前でもあることを主張。各地で講演を行っている

 不動産仲介をするための資格である「宅地建物取引士資格試験」、通称「宅建」の合格者は、平成27年4月1日より「宅地建物取引主任者」から「宅地建物取引士」へと名称が変更された。弁護士や税理士などと同じ、士業へと仲間入りしたわけだ。

 しかし先述した仲介の報酬額は、同じく士業である公認会計士の私から見ても、高すぎるという印象がある。他の士業と報酬を比較してみよう。

 いま現在、税理士や司法書士、不動産鑑定士はその報酬を自由に決めることができ、専門家ごとにその額には幅がある。もちろん他の士業や土地家屋調査士の報酬は状況によるものだし、弁護士報酬もクライアントや事件内容によって大きく変わるものだろうから、直接的に比較対象にはできない。

 しかし私の認識として、土地家屋調査士がマイホーム用の土地を測量したとして、その費用は高くとも100万円くらいまでには収まるはずだし、弁護士報酬は経済的利益のおおむね3%から、高くとも8%前後くらいまでの間に収まるはずだ。

 だからこそ、こうして比較してみると、宅地建物取引士の報酬の高さが際立つ。士業が得る報酬額の認識として、「物件価格×3%+6万円」は「破格」とまで言える価格で、桁を間違えているのでは、という印象すら私は覚える。とりあえず現状の不動産の仲介手数料は、ほぼ「弁護士報酬並み」と言えるだろう。

高すぎる仲介手数料はあくまで「上限」
本来は「話し合い」で決めるもの

「制度で決まっているから仕方ないじゃないか」とお考えになった読者もいるかもしれない。しかしそれは違う。むしろ消費者がこの高額なレートのまま、その報酬をそっくり払う義務はない。

 昭和45年10月23 日に行われた建設省(現国土交通省)の告示によって決まった報酬額は、「上限として『物件価格×3%+6万円』」。あくまで上限であり、これ以上の報酬を取れば罰せられる、というレッドゾーンが示されたに過ぎない。一般財団法人である不動産適正取引推進機構が発行する「不動産売買の手引」でも、報酬額に関し、「実際に支払う額はこの限度額(上限額)内で、話合いで決めるもの」と書いてある。つまり、大原則として「仲介手数料の額は話し合いで決める」ものなのだ。そして上限が決められていて、その上限を超えたときに罰則があるということだ。

 なお、一般財団法人土地総合研究所が全国の不動産業者を対象に実施した『不動産業についてのアンケート調査』報告書によれば、不動産仲介の手数料として「宅建業法令に基づく上限基準を適用している」との回答が83.8%、つまり8割強の不動産屋が上限いっぱいに仲介手数料を受領していることがわかる。だから不動産業者は、この上限報酬がさも法律で決まっているかのように説明するかもしれないが、それはとんでもない間違いだ。

1億円のマイホーム売買なら
仲介手数料は「せいぜい30万円」

 では、不動産業者との話し合いを通じて仲介手数料を決めることになったとして、いくらくらいが妥当なのだろうか。

 これもあくまで私見だが、資格取得の難易度や取り扱う業務の複雑さ、専門性から考慮するに、税理士や司法書士より、宅地建物取引士の報酬が高い状況は、いささか納得がいきにくい。「相手との交渉があるし、税理士などのいわゆる『代書屋』より報酬は高くていい」と主張するとしても、土地家屋調査士だって隣人との折衝があるわけで、不動産の評価を決めるために手間が多い不動産鑑定士の報酬より高いのは、やはり違和感がある。

 そう考えたとき、税理士や司法書士の報酬と、土地家屋調査士や不動産鑑定士の報酬の中間くらいがふさわしいように感じられる。たとえば1億円までのマイホームの売買なら、上限として30万円くらいが「妥当」な額ではないだろうか。

 なお、報酬について話し合う場合に不動産業者にお願いするタイミングだが、可能ならば彼らから物件を紹介してもらう前がいいだろう。つまり、店に初めて足を運んだ日など、具体的なやりとりを始めるときだ。

 もし「その仲介手数料では対応いたしかねる」という回答があったなら、すぐに別の不動産業者へ行こう。世の中には、すでに仲介手数料半額、それどころか無料を謳う業者まで登場している。業者同士の競争が激しさを増す昨今、消費者のニーズに即して、むしろ不動産仲介料は、これまでの「物件価格×3%+6万円」から「30万円」へ向かっていると言って間違いない。

【心得(2)】ブームの「タワマン節税」
今後はこれまでのようにはいかない?

 第二に、固定資産税や相続税の節税を目的に不動産を売買する際の落とし穴をお伝えしよう。不動産といえば、ここ数年、現金を都心のタワーマンションの高層階の1室に変えるという「タワーマンション節税」、いわゆる「タワマン節税」が流行していた。

 多くの方はご存じかもしれないが、そもそもマンションの相続税を計算する場合、建物部分は固定資産税評価額が適用され、実際に売買される公示価格から見て50~70%程度の評価額になり、土地は路線価評価で70~80%ほどになる。固定資産税評価額はマンション1棟の評価額から、部屋ごとの床面積で割って計算され、そこでは眺望などの価値は考慮されない。つまり、売買される価格が高い傾向のある高層階だろうが、低い傾向のある低層階だろうが、「同じ床面積なら、固定資産税評価額が同じになる」という考えを用いた節税方法だ。

 高層階になればなるほど、実際の価格と固定資産税評価額との乖離が大きくなる。だから手持ちの現金をタワーマンションの高層階に変えれば、相対的に相続税と固定資産税を小さくでき、節税効果が大きくなる状況が生まれる。しかも人気のタワーマンションなら、流動性も高いから、売って現金へ戻すことも比較的容易だ。こうした仕組みを利用すれば、誰でも簡単に大きな節税ができてしまう。

現金を不動産へ変えることで
相続税を軽減するやり口に「待った」

 しかし、近年、このようなタワーマンションを利用した節税対策が頻発したため、足もとでは規制が厳しくなっていることを忘れてはならない。たとえば、極端なケースに対して「待った」をかけたのが、国税不服審判所裁決(11年7月1日)である。

 
 このケースでは、高齢のA氏が亡くなる1ヵ月前に、2億9300万円でタワーマンションを購入。その後、A氏が亡くなった10ヵ月後に相続人B氏がその物件を2億8500万円で売却した。つまり、手持ちの現金を亡くなる直前に不動産に変え、すぐにまた現金に戻したわけだ。

 相続税は、相続財産の大きさに税率をかけて計算される。資産家のA氏からB氏へと約3億円もの現金が相続されれば、その額が税率計算の基準になり、支払う税金は巨額に上る。しかし、不動産の財産評価は現金や有価証券を下回るので、A氏が生きている間にタワーマンションへと「資産換え」をしておけば、建物部分が大きいため、税率はその物件の固定資産税評価額がベースとなり、支払う税金は現金の場合と比べてかなり安くなる。

 このように、A氏の死亡前に現金を不動産に変え、死亡後に不動産を売却して現金に戻すことにより、事実上、通常の場合にかかる相続税の支払いを最小限に抑えながら現金を相続することができるのだ。また前述の通り、物件が高層階であればあるほど節税効果は大きいため、B氏が不動産を保有していた10ヵ月間においても固定資産税を安く抑えることができた。

 結果的にこのケースでは、「本来のタワーマンションの購入価額である2億9300万円で相続税の申告をするように」という審判が下され、国税からの指摘に沿ったものとなっている。

 さらに国税庁は、2015年10月29日に記者発表を行い、「実際の売買価格と著しく不適当に評価額が乖離してしまうような過度な節税対策は認めない」との見解を示した。17年1月現在、18年以降に引き渡される新築物件において、高層マンションの高層階と低層階では、固定資産税評価額を高層階のほうがより高くなる税制改正を行うことを政府・与党で検討している。

不動産業者の節税アドバイスは
「違法」という、元も子もない話

 消費者にとって、こうした「タワマン節税」を取り巻く環境の変化を心得ておくことは重要だが、もっと重要なのは、このような状況にもかかわらず、タワマン節税を口実に様々な営業をしかけてくる不動産業者の「甘い言葉」に、やみくもに乗ってはいけないということである。

 不動産が「節税」の道具に用いられやすいという背景から、これまで不動産業者が税金の相談に乗ったり、申告書を代わりに書いてあげたり、コンサルティングをしたりするケースは、現実として少なからずあった。

 しかし、そもそも論としてご注意いただきたいのは、本来、税理士ではない立場の人が税金の相談を受けることは、税理士法第52条で固く禁じられているということ。タダだろうと有料だろうと、1回の相談であろうと、それはアウト。税理士免許を所有していない人から「節税」などという言葉が出てきたら、安易にそれを信じてはならない。

 15年1月1日以降、相続税の基礎控除が下がったため、相続税を払わなければならない対象者が増えた。そしてそれに比例して、怪しげな相続コンサルティングが跋扈している状況がある。宅建業者という立場がわかると警戒されるため、不動産コンサルタントや相続コンサルタントなどと名乗って近づいてくる輩までいる始末だ。

 特に悪質なケースで目立つのが、最初は高めの相続税を提示し、それがいくらまで安くなったかによって、成功報酬としてその何パーセントかに該当する金額を要求する商法である。そこに「相続税対策」などと理由をつけ、不動産業者が絡み、お客の所有不動産を売却させ、相続コンサルティングの成功報酬とは別に仲介手数料まで稼ぐこともあるようだ。そして、売却で得たお金で新しい物件を買わせ、資産の組み替えという名目でまた仲介手数料を稼ぐ。こうしていくうちに、お客の大切な資産を毀損してしまう例が後を絶たない。

「寄り添う」不動産屋の時代へ
消費者が肝に銘じるべきこと

山田寛英・パイロット会計事務所代表の著書『不動産屋にだまされるな 「家あまり」時代の売買戦略』 (中公新書ラクレ/税込864円)発売中

 以上のように、あくどい不動産業者が闊歩する状況を警告するため、そして税制や売買の考え方が大きく変わる中で現実に即した知識武装を消費者にしてもらうため、筆者は『不動産屋にだまされるな「家あまり」時代の売買戦略』(中公新書ラクレ)を上梓した。同書では、「これ以上不動産屋にだまされないためにどうすればいいか、時に不動産と戦えばいいか」というアドバイスと共に、トクする売買や税金のノウハウを可能な限り伝授している。

 冒頭でも述べたが、人口減少を迎えて「家」が過剰となる時代、おそらく消費者の目線とあくどい不動産屋の目線は大きく食い違っていくはずだ。そうした中、これまでのような「だます」ことで儲けようとする不動産屋の活躍の場が失われ、消費者に「寄り添う」不動産屋が飛躍していくことを心から筆者は期待している。

(パイロット会計事務所代表、公認会計士・税理士 山田寛英)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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