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松村太郎の「西海岸から見る"it"トレンド」第150回

シリコンバレーは多様性を守れるか?

2017年01月31日 10時00分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII.jp

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 サンフランシスコ湾岸地域には、ビジネスや文化の中心地となるサンフランシスコや、筆者が暮らすサンフランシスコ対岸のバークレー、そして世界のテクノロジー革新の集積地となるシリコンバレーが含まれます。

 この地域で暮らしていると、中国から来ている人々、インドから来ている人々、そしてバークレーでは中東から学びに来ている人々も少なくありません。欧州から英語を学びに来ている人々もいます。

 多様性。この言葉について、今まで考えないことはありませんでしたが、今週は特にそのことを考えさせられました。

マイノリティーに必要な生存戦略

 米国で子育てをしている人から、「多様性の中で子育てができてうれしい」という言葉を聞くことがときどきあります。

 確かに日本で暮らしていると、よほどのことがなければ、まわりはみな日本人です。その点で言えば「異なる体験」ができていることは、非常に価値があるかもしれません。

 しかし多くの場合、多様性は自分のやりたいことや習慣に対する妥協やあきらめを伴うことです。考え方がまったく違う人を受け入れ続けることは、非常にエネルギーがいるでしょう。気が合わない友人と会えて付き合いたいと思えるかどうか、考えてみれば、筆者も「No」と答えてしまいます。

 正直なところ、面倒くさいのが多様性です。そうしたことを考えない方が幸せなことが多いとすら思います。しかしアメリカは移民によって成長してきました。200年あまりにわたって、多様性が成長戦略だったというわけです。

 日本人が米国で暮らすということは、多様性を構成する側に立っているわけで、つまりマイノリティーということです。しかも日本人はアジア人の中でも特に少ない。

 日本国籍の人々は、米国の人種多様性プログラムにおいては、抽選でグリーンカードが与えられる程度には少ない集団です。つまり、米国の多様性を保つためには「増やすべき対象」というわけです。同じアジアでも中国人や韓国人は、グリーンカードの抽選に応募する権利がありません。すでにたくさんの人々が米国にいるからです。

 マイノリティーには、マイノリティーなりの戦略が必要です。米国は民主主義国家なので、多数決では絶対に勝ち得ないからです。そこで5年間を米国で過ごしたり、子育てをするときにも、戦略が必要になります。

 たとえば同じ国の出身者同士で助け合うとか、自分の国に理解のある米国人とつながるとか、米国に必要とされるような能力を発揮するとか。

 日本人同士はあまり群れようとしません。日本という単一人種の環境から飛び出してまで、日本人とつるみたくない、という開放感を享受したい気持ちもわかります。しかし無闇に群れないということは貴重なマイノリティーの戦略の1つを拒否しているようにも見えるのです。

シリコンバレーを襲った、多様性の危機

 ドナルド・トランプ大統領が就任して、まだ1週間しかたっていないのに、この1週間の心労ときたら、とてつもなく重たいものでした。

 英国からは「トランプ大統領は政治家ではない。なぜなら有言実行だから」という笑えない皮肉も聞こえてきます。オバマケアの撤廃、メキシコとの間に壁と国境税を作る、気候変動への取り組みをストップするなど、選挙中に言ってきたことを次々に実行するプロセスへと移しています。

 その中に、難民と移民に関する大統領令への署名もありました。このことはシリコンバレーで大きな反発と危機感をあおることになりました。

 もともと、メキシコを中心とした非合法移民問題への対処については壁の問題とともに指摘されていました。しかし今回の大統領令では、イラン、イラク、イエメン、スーダン、ソマリア、リビア、シリアの7カ国の国民の米国への渡航と入国を全面的に禁止するものでした。

 これは非合法の移民が対象ではありません。合法的に取得されたビザや永住権(グリーンカード)を持っている人々も含めて、米国行きの飛行機にすら搭乗できなくなってしまったのです。

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