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最新パーツ性能チェック ― 第206回

廉価版でも毎秒3GB超!M.2 SSDでも独走態勢に入ったサムスン「960 EVO」レビュー

2016年11月17日 08時00分更新

文● 加藤勝明 編集●ジサトラアキラ

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 SATA SSDの価格破壊が進む一方、今年後半から急激に伸びてきたのがM.2 SSDだ。特にその中でも次世代SSDとして注目を集めているのがM.2かつNVMe接続の製品。SATAのSSDはM.2だろうと2.5インチだろうと読み書きスピードは550MB/秒あたりで限界となるが、NVMeは3GB/秒を超えるものもある。

 そのM.2 NVMeで今一番注目されているメーカーといえばこの分野に早くから製品を送り込んでいるサムスンだ。昨年登場した「SM951」「950 PRO」に続き、今年は「960 EVO」と「960 PRO」の2製品を投入する。

 前回当サイトでも960 PROの速報(関連ページ)をお届けしたが、今回はその下位モデルである「960 EVO」も入手することができた。Secure Erase等を実行するツール「Magician」は未完成らしいが、960 EVO/PROの素の性能をベンチマークする。

↑今回はSSD 960 EVO/PROと一緒に1世代前の950 PROもお借りした。全て容量は500GBクラスで統一してある。

 前回のレビューではなかった960 EVOの概要をざっくり説明すると、960 PROがMLCタイプのNANDを採用し最大2TBの超大容量モデルを擁しているのに対し、960 EVOはTLC、最大1TBまでとなっている。850 EVOで搭載されたTurboWrite(SSDの一部をSLC的に運用してバッファーとして機能させる技術)も、バッファー領域増大とアルゴリズムを改良した「Intelligent TurboWrite」として実装している……というものだ。

起動ドライブとしてセットアップ

 では検証環境を解説しよう。今回も各SSDはOS起動用ドライブとしてセットアップしている。

CPU Intel『Core i7-6700K』(4GHz、最大4.2GHz)
マザーボード ASUS『Z170-A』(Intel Z170)
メモリー Crucial『BLS2K8G4D240FSA』(DDR4-2400、8GB×2)
ストレージ:Samsung 960 PRO 512GB(M.2 NVMe)
Samsung 960 EVO 500GB(M.2 NVMe)
Samsung 950 PRO 512GB(M.2 NVMe)
ビデオカード GeForce GTX 1080 Founders Edition
電源ユニット Corsair『RM650』(650W、80PLUS Gold)
OS Windows 10 Pro 64bit DSP版

↑「CrystalDiskInfo」による960 PROの情報。NVM Express(NVMe)、PCIe 3.0 x4接続といっった情報が読み取れる
↑同じく960 EVOの情報。オーバープロビジョニングやIntelligent TurboWrite等の領域があるぶん、容量は500GBと微妙に少ない

廉価版EVOでも強烈な速さ

 それでは定番「CrystalDiskMark」で読み書き速度をチェックしよう。条件はデフォルトの1GiB×5、ランダムデータで計測している。

↑960EVO 500GBの読み書き性能
↑960PRO 512GBの読み書き性能
↑950PRO 512GBの読み書き性能

 TLC NANDをいち早く製品化したサムスンだけあって、960 EVOもTLCとは思えない素晴らしい読み書き性能を発揮するどころか、960 PROとそう変わらない性能を出しているのに注目だ。1世代前の950 PROの読み込みが2.3GB/秒程度だったのに、一気に3.3GB/秒にジャンプアップしたのは、新型SSDコントローラー「Polaris」のポテンシャルの高さを語っている。

 960 EVOとPROの違いは、書き込みにおいてはキュー数32&1スレッド時に(上記画像における“Seq Q32T1”の値)は960 PROのほうが300MB/秒近く速いこと、読み出しに関してはシーケンシャル(画像“Seq”の値)、および4Kランダム(画像“4K”の値)が速い、という点だ。特に書き込み性能の差はMLCとTLCの差が如実に出ていると考えてよいだろう。

 続いて「ATTO Disk Benchmark」でもテストしてみた。テストパラメーターはデフォルトのままで計測している。

↑960EVO 500GBの読み書き性能
↑960PRO 512GBの読み書き性能
↑950PRO 512GBの読み書き性能

 このベンチではCrystalDiskMarkとは異なりシーケンシャルの値のみの比較となるが、950 PROの読み出しが最大2.6GB/秒弱なのに対し950 EVOは3.1GB/秒、960 PROはさらにその上をいく3.4GB/秒と圧倒的な差を見せつけている。読み出しも960 PROのほうがEVOより速いのはもちろんだが、1世代前の950 PROの書き込み性能を960 EVOがわずかに上回っている点も見逃せない。もうTLCでも十分速いのだ。

 ただ少々気になるのは960 PROでは転送データサイズが16MBを超えたあたりで読み書き性能が若干落ちてくる点だ。960 EVOは上下があるもののより平坦な出方になっているので、コントローラーが熱でヘタっている可能性は薄い。これは今後の検討課題としたい。

実アプリでの違いは?

 ここではやや毛色を変えて、実アプリベースのパフォーマンスを検証する。3GB/秒オーバーのSSDが実使用でどういう差を生み出すかチェックしてみたい。

 まずは「PCMark8」のアプリケーションテストだ。PCMark8は様々なアプリの読み書きパターンを利用する“Storage”テストがあるが、ここではPhotoshopやAfter Effectsといった実アプリを起動し、実際に処理を行った際の時間を比較する“Application Test”を利用する。今回はPhotoshop CC 2017とAfterEffects CC 2015をインストールし、各アプリの処理時間を比較した。ストレージ以外のハードウェアは同一なので、SSDの読み書き性能の差が処理時間の差となって現れるはずだ。

↑PCMark8のApplication Testにおける各アプリの処理時間

 CrystalDiskMarkでは大差がついたが、実アプリではあまり差がでない……というのはよくある話だが、このテストでも同様の結果となった。どのSSDも同じ程度速いが、わずかに首位に立っているのが960 PRO、続いて960 EVO、最後に950 PROとなるので、一応は転送速度の速いほうが処理も高速になる、と考えてよいだろう。ひと呼吸でも処理のテンポを早めたい人は960 PROを使うと幸せになれそうだ。

 続いては「Photoshop CC 2017」の起動時間を比較してみた。スタートメニューから起動し、Photoshopの“最近使ったファイル”等が出る画面が出るまでの時間をストップウォッチで計測。3回の平均値を比較する。

↑Photoshop CC 2017の起動時間

 ここでも960 PROが最速だった点は変わらないが、960 EVOは950 PROの後塵を拝する結果になった。とはいえ時間にして1秒と短いので、960 EVOが極端に遅いと感じるわけではない。

 最後に最新ゲーム「バトルフィールド1」の読み込み待ち時間を比較した。ネットワークの影響を受けないよう、オフラインモードでシングルキャンペーン“O LA VITTORIA”を最初からスタートし、ムービーのスキップが可能になるまでの時間を比較。さらにシングルキャンペーンのゲーム中にチェックポイントに戻り、ゲームが再開するまでの時間を比較した。こちらもストップウォッチで計測し3回の平均値を比較する。解像度は3840×2160ドット、画質“最高”なので読み出すデータ量も半端なく大きい。

↑「バトルフィールド1」キャンペーン開始時の読み込み待ち時間の比較
↑「バトルフィールド1」チェックポイントから再会する時の読み込み待ち時間の比較

 どのシチュエーションの読み込み待ち時間はほぼ同着といってよいが、どちらも950 PROが若干遅い。読み書き性能の差が反映されていると考えられる。性能だけで950 PROから960 PROに乗り換えるメリットは薄いが、960 PROは2TBという大容量モデルが用意されている。最近のゲームは容量が巨大化しつつあるため、250GBクラスのSSDでは心細い。これを機にテラバイト級M.2 NVMeに乗り換えて容量の不安を解消するのもよいかもしれない。

発熱の少なさは圧倒的

 960 EVO/PROは確かに速いが実アプリによる性能差は微妙……と考える人もいるだろうが、M.2 NVMeの泣き所といえる発熱面からも検証してみたい。

 M.2 NVMeは高速で小型なぶん、高温になることがたびたび指摘されている。ヒートシンクやファンを利用する手もあるが、M.2スロットの位置次第ではファンの風が届きにくい場合もあるため、SSDそのものの低発熱化が急務となっている。

 そのため960 EVO/PROではラベルに銅箔を積層することで、ラベル全体をヒートシンクとして利用するよう配慮されている。

 そこで今回はアイドル時および高負荷時のSSDの温度をチェックしてみた。システム起動10分後をアイドル時、2GBのファイルを繰り返し書いては消す操作を15分実施した時を高負荷時としている。温度は「HWiNFO64」を利用し、S.M.A.R.Tの温度データを読み取った。

↑S.M.A.R.Tによる温度データ

 今回実施したテストはドライブの負荷は20~70%(タスクマネージャー読み)で変動するそれほど強烈でもないテストだが、950 PROはあれよと言う間に60℃を突破。最終的には70℃まで達した。ここまで熱くなるとヒートシンクを付けないと夏場が怖い。

 しかし960 EVO/PROの両者は54~55℃と段違いに低い。一般的な使い方でSSDの温度限界にぶつかることは滅多にないとはいえ、960 EVO/PROの発熱の少なさは、M.2 NVMeの常識を早くも塗り替えたもの、といえるだろう。これなら熱のこもりやすい小型PCにM.2 NVMeを入れてもいいかなと思えてくる。

まとめ:M.2 NVMeの泣き所はもう存在せず。安心して買えるSSDだ

 以上、ざっくりと960 EVO/PROをチェックしてみた。パーソナルユースでは3GB/秒の読み書き性能が活きるシチュエーションになりにくい点は確かにあるが、960 EVOで最大1TB、960 PROなら2TBと大容量モデルもあり、なおかつ現行最速レベルのSSDとあれば、食指が動かない訳がない。

 そして何より重要なのはM.2 NVMeの泣き所である発熱がかなり解消されている点だ。今回の温度測定はS.M.A.R.T読みなので誤差もある可能性はあるが、「Aquacomputer kryoM.2」(関連ページ)のような処置をしなくてもよい程度の熱に収まっているのは賞賛に値する。960 EVO/PROはこの点において、今後登場するSSDの評価基準となり得る、マイルストーン的な製品といっても過言ではないだろう。

960 EVOのラインアップと市場想定価格
容量 250GB 500GB 1TB
シーケンシャルリード 3,200MB/s 3,200MB/s 3,200MB/s
シーケンシャルライト 1,500MB/s 1,800 MB/s 1,900 MB/s
ランダムライト(4KB、QD32) 33万IOPS 33万IOPS 38万IOPS
ランダムリード(4KB、QD32) 30万IOPS 33万IOPS 36万IOPS
保証書込容量(保証期間3年) 100TB 200TB 400TB
市場想定価格 129ドル 249ドル 479ドル

※お詫びと訂正:SATAの読み書きスピードに誤りがありました。記事を訂正してお詫びします。(2016年1月2日)

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