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JAWS-UG四国勉強会レポート 第4回

高知出身の小島さんが地元の人たちに語りかけたこと

外のモノサシを知るべき理由、あの小島さんが教えてくれた

2016年11月17日 07時00分更新

文● 重森大 編集●大谷イビサ

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AWS日本法人採用第一号社員、JAWS-UGの立役者、精力的にコミュニティ活動を支援してきた小島 英揮さん。2016年8月末にAWSを離れ、自由に語れる立場になった小島さんからどんな曝露話が飛び出すのかと期待した向きもあっただろう。しかし小島さんが語ったのは、エンジニアがこれからどのようなことを考え、どのようにクラウドに向き合っていくべきかという真面目な話だった。自由な立場になっても、エンジニアの力になりたいという思いからは離れていない。そんなことを感じた小島さんのセッションを今回はお届けしよう。

激動の時代だからこそ知るべきもの、それは“外のモノサシ“

 小島さんは高知出身で、四国には縁のある身。この日の会場での講演経験もあり、「スライドがモニターに表示されて、参加者が私とアイコンタクトを取ってくれないので非常にやりにくい会場」だと言いつつも、よどみなくしゃべり始めた。厳しい広報チェックから解き放たれた、開放感もあったのかもしれない。

無職になり広報チェックから解放された小島 英揮さん

 この日小島さんが示したゴールは、「地方ITに関わる人が外のモノサシを知るべき理由を知り、そのための一歩を踏み出すこと」だ。

「この会場に来ているみなさんはすでにやっていらっしゃることだと思いますが、それが大切な理由を改めて認知し、これからの活動に役立てていただきたいと思います」(小島さん)

 そもそも「外のモノサシ」とは何なのか。なぜ大事なのか。それを示すために小島さんが示したのは、鉄道模型が並んだスライドだ。Nゲージ、Oゲージなどいろいろなスケールの同じ車輌が並んでいる。同じように見えても目盛りが違えば全然違うモノになるという例だろう。それを示しながら、小島さんはサイファー・テックの吉田さんの話を引いた。

「今日のサイファー・テックさんの話、みなさん楽しく聞いたと思います。実は吉田さんは一度東京に出て東京のビジネスを知ってから、徳島に戻ってきた方なんです。他のモノサシを知っていると、地元での活用の仕方が見えてくるんです。ずっと地元にいると、見えているようで見えていないものです」(小島さん)

 なぜ、外のモノサシを知っていると見えるものが変わるのか。それは今が激動の時代だからだという。地方にいると、まだまだクラウドは使われていないという印象を抱きがちだが、調査結果の数字を見れば明らかな通り、ものすごいスピードで浸透していっている。2015年で3千億円強、2018年には5千億円ほどの市場規模になると見られていると小島さんは語る。この数字も驚くべき成長を示しているが、これでも控えめな見立てだと小島さんは言う。

「僕はAWSの中で実数値を知っているので、まだまだこんなもんじゃないと思っています(会場笑い)」(小島さん)

クラウドの市場規模は拡大し続け、CPUメーカーもメインターゲットをクラウド事業者に絞り始めている

 5千億円というのは、世の中で売れているサーバーをかき集めたくらいだそうだ。それくらいの金額がクラウドに振り向けられているということだ。サーバーとクラウドの市場規模はもうすぐ逆転する。さらに、CPUを提供するインテルも、最近ではPCメーカーではなくクラウド事業者をメイン顧客として見据えているという。

「エコシステムという観点から見ても、数多くのベンダーが自社のパッケージ製品のライセンスをAWSに持ち込めるように対応しています。BYOL(Bring Your Own License)という仕組みで、クラウド移行時にライセンスを再購入する必要がありません。これに対応していないベンダーはクラウド移行の際に切り替えられることになるでしょう」(小島さん)

クラウドで世界がフラット化し、あらゆる面でビジネスが大きく変化する

 既存のものがクラウドに移行するだけではない。新しいものはクラウドから生まれるようになっている。Amazonが提供しているAmazon Dash ButtonやAmazon Echoなどを例に挙げ、新しいビジネスが生まれる背景としてクラウドが不可欠になっていると小島さんは言う。

「これまでにないアイディアをビジネス化する際、市場規模も見通せないし、そのために必要なシステムサイズもわからない。クラウドを使うとそういうことを考えずにすぐにビジネス化でき、旧来の手法をとり続けるビジネスは淘汰されていきます」(小島さん)

 そこまで語った後に小島さんは、ユニ・チャームの高原 泰久さんの言葉を引用した。

“今日のビジネス環境では「大きいものが小さいものに勝つ」のではなく、「速いものが遅いものに勝つ」”

 つまり、組織を持っているか、お金を持っているかということはもう関係ない。いかに速くやったか、やらなかったかということが勝敗を決めるというのだ。そして、今のビジネスでITをまったく使わないということは考えにくい。比較的小さな組織であっても、ITを使った自動化や効率化が図られている。

「クラウドによって、これまでは時間がかかっていたもの、大企業にしかできなかったものという概念が変わってきています。お金の流れや雇用の作り方、ビジネスの立ち上げ方からしまい方まで、すべてが変わってしまっているというのが今の世の中です」(小島さん)

 クラウドが世界をフラットにしているということを示すために、障壁の崩壊、基準の変化、顧客の変化を挙げた。たとえばデジタルサービスは、アメリカで始まれば日本でも使える。日本にはなかなか来ない、地方にはなかなか来ないという地理的な障壁は崩壊した。アジア市場のベンチマークは東京からアジア諸国の都市へと変わり、顧客はデジタルネイティブなミレニアル世代が中心となりつつある。2010年以降に成人したミレニアル世代は新しいものを取り入れることにも、古いものを捨てることにも抵抗がなく、旧来世代とは消費行動がまったく違う。

クラウドで提供されるデジタルサービスには交通費などの参入障壁は機能しない

 このようにクラウドでフラット化する世界で、地方ITには何が求められるのか。それが、「外のモノサシ」だという。ここでは小島さんは、攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEXから草薙 素子の台詞を引用した。

“世の中に不満があるなら自分を変えろ。それが嫌なら耳と目を閉じ、口をつぐんで孤独に暮らせ。”

「いまこのスライドを見てくすっと笑わなかった人がミレニアル世代ですね。これ古いアニメですから」(小島さん)

 2002年公開のアニメから引いたこの言葉を示しながら小島さんは、外の世界の変化に不満があるなら、外のモノサシを知って自分を変えるしかないと言った。そうでなければ、耳と目を閉じ、世間と隔絶されて暮らせと。しかし実際には、世間と隔絶して生きて行くことはできないので、自分を変えていくしかない。

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