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IBMとSlackが提携、チャットボット開発をより容易に「IBM World of Watson 2016」レポート

SlackのCEOが力説「IBM Watsonがボットに与えるインパクト」

2016年11月07日 07時00分更新

文● 鈴木恭子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 米IBMは10月26日、「IBM World of Watson 2016(IBM WoW)」において、コラボレーションツールを手掛ける米Slackとの提携を発表した。「IBM Watson」をSlackプラットフォーム上に組み込み、Watsonが提供する自然言語での対話能力を活かしたチャットボット(Bot、会話エージェント)の構築を容易にする。

 IBM WoWでは、SlackのCEOであるスチュワート・バターフィールド(Stewart Butterfield)氏とIBM Watsonのゼネラル・マネージャーであるデービット・ケニー(David Kenny)氏が揃って登壇し、「Watsonを利用することで、(Slack)ユーザーはコミュニケーションの“質”を高め、(ユーザーの)利便性も向上させられる」と、今回の提携でユーザーが得られるメリットを強調した。

IBM WoWで登壇したSlack CEOのスチュワート・バターフィールド(Stewart Butterfield)氏(左)と、IBM Watson ゼネラル・マネージャーであるデービット・ケニー(David Kenny)氏

SlackbotでWatsonを採用、ほかにも開発者向けツール提供などを発表

 今回の提携では、まず手始めに、Slack自身のユーザーサービスボットである「Slackbot」にWatsonの能力を取り入れ、Slackユーザーから寄せられる質問やトラブルシューティングに、より的確かつ効率的に応答できるようにしていく。

 バターフィールド氏は、「ユーザーから寄せられる質問の80%は、過去にだれかが質問している。SlackbotにWatsonを組み込むことで、こうした質問はすぐに返答できる。さらに、質問が多く寄せられるほど(Slackbotが)学習し、レスポンスが改善されていく」と語る。

Slackbotは、ユーザーとのチャット(対話)形式で、Slackの使い方やトラブルシューティング方法を案内するボット(画面は現在提供されているもの)。Watsonを組み込むことで対話能力を強化していく

 2013年8月にリリースされたSlackは、「企業向けチャットツール」として企業ユーザーの支持を集めている。その背景には、「PCやモバイルデバイスなど閲覧環境に依存せず利用できる」「ほかの業務アプリ/サービスとAPIを通じて連携可能」「カスタマイズの幅が広い」といった特徴がある。

人間どうしのチャットだけでなく、さまざまなアプリケーション/ツールが出力する情報もタイムラインに統合しやすい点が人気の理由の1つ(画面は公式サイト)

 チャットアプリとしては後発であるにも関わらず、Slackがユーザー数を獲得している理由について、バターフィールド氏は、「2013年のリリース以降、(最初に示した)ロードマップから逸脱していない。(ユーザーの)期待を裏切らず、企業ユーザーがこれまで抱えていた問題を解決するツールだからだ」と語る。

 同氏が「企業ユーザーの課題」と指摘するのは、組織内部におけるコミュニケーションの不透明さだ。

 「これまで何度も指摘されていることだが、多くの企業は部門単位で(情報共有やコミュニケーションが)サイロ化している。しかし、Slackを利用すれば、そうした課題は解決できる。例えば、マーケティング部門がセールス部門のチャット履歴を見て有益な資料を提示したり、エンジニア部門がアドバイスしたりといった具合だ。言うなれば、意志決定までの過程を可視化できる。これが最大のメリットだ」(バターフィールド氏)

 IBMとSlackによる今回の提携発表では、SlackbotでのWatson採用以外にも、クラウド/IT/ネットワーク運用におけるインシデント対応を支援するボットの提供、IBM社内チーム(マーケティング、デザイン、エンジニアリングなど)のSlack利用とSlack上で利用できるコグニティブ・サービスの開発、といった計画も示されている。Watsonの能力を活用したチャットボットをSlack上で開発できるように、サンプルコードやドキュメントを「Application Starter Kit」として提供する予定もある。

カスタマーサービス向けチャットボットに“頭脳”を与えるWatson

 質問内容を理解し、過去の対話履歴もふまえながら最適な回答を瞬時に判断/応答する対話サービスは、Watsonの得意とする分野だ。この市場は今後も拡大が予想されており、米ガートナーによると、2020年までには少なくとも80%の新たなエンタープライズ・アプリケーションで、チャットボットが導入されるという。

 加えて、IBMは10月26日、企業がチャットボットを簡単に作成/展開できる「Watson Virtual Agent」も発表した。Watson Virtual Agentにより、企業は、顧客の問い合わせに対する迅速な対応ができるボットを開発できる。IBMによると、このボットは顧客対応力とカスタマーエンゲージメントの向上を図る企業からの要望を基に開発されたもので、個々の顧客に対応した(パーソナライズされた)対話能力も持つ。

チャットを通じた顧客対応を支援するサービス「Watson Virtual Agent」も発表(画像は公式サイト)

 「Watson Virtual Agent」は、モバイル・アプリやWebサイト、SNSなど、あらゆるプラットフォームで展開できる。すでに、小売業のStaples、ソフトウェアベンダーのAutodesk、IBM傘下のWeather Companyなどが、Watson Virtual Agentによる独自サービスを展開している。

 たとえばWeather CompanyがFacebookメッセンジャー向けに提供を開始した「天気ボット・サービス」は、ユーザーがfacebookメッセンジャーで天気ボットに質問をすれば、ボットはfacebookのデータからユーザーの好みを学習し、カスタマイズされた気象状況の情報を提供する。提供する情報は、現在の気象状況と1時間ごとの天気予報、短期予報と5日間予報、該当地域に発令されている警報や注意報などだ。なお、すでに日本語を含む39言語に対応している。

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