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買収したDemandwareのCommerce Cloudも初披露

Dreamforceで披露されたAIのEinsteinと脱メールのQuip

2016年10月05日 10時00分更新

文● 末岡洋子

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米セールスフォース・ドットコム(以下、セールスフォース)は10月4日より本拠地サンフランシスコにて年次イベント「Dreamforce 2016」を開催した。先立って開催されたプレス向けイベントでは、同社プレジデントで最高製品責任者を務めるアレックス・デイヨン(Alex Dayon)氏ら幹部が先に発表したAI(人口知能)の「Einstein」や買収したQuipを中心とした製品戦略と新機能を明らかにした。

Dreamforce 2016の入り口

8つのクラウドはすべて顧客の成功のために

 クラウドが当たり前になる前から”No Software”としてSaaSモデルを展開してきたセールスフォース、創業から7年を迎え世界第4位のソフトウェアベンダーとなった(上位3社はマイクロソフト、オラクル、SAP)。クラウド専業としてはトップだ。

 そのセールスフォースが毎秋に開催するDreamforceは、参加者が約17万人というIT業界最大のイベントであるだけでなく、自社の製品発表が中心のベンダーのイベントは趣を少し変えており、IT業界、さらには経済や社会全体の問題を取り上げることで知られている。今年は機会や賃金、男女間の平等もテーマで、ロックバンドU2のボノが立ち上げたHIVと戦う非営利団体(RED)の募金活動も平行して行なわれる。

 製品としては、「Sales Cloud」「Service Cloud」「Marketing Cloud」「Analytics Cloud」「Community Cloud」「IoT Cloud」「App Cloud」「Commerce Cloud」の8種類をラインナップしている。8つのクラウドは「Customer Success Platform」という単一のプラットフォーム上で実現されている。「顧客ライフサイクルの全ステップをサポートし、利用者にとっては技術の複雑性を隠してくれるものでもある」とデイヨン氏はCustomer Success Platformについて説明、これはSalesforceの秘伝の強みであり、差別化だとした。

セールスフォースで最高製品責任者を務めるアレックス・デイヨン氏

 また、単にライセンスを販売するのではなくサブスクリプション形式であるため、最新のイノベーションを顧客に届けることができる、とオンプレミスソフトウェアとの違いも強調した。そのイノベーションで、Salesforceが注力しているのは、「インテリジェンス」「生産性」「スピード」「モビリティ」「コネクティビティ」の5つだ。

AIレボリューションを先導するEinstein

 9月に共同創業者兼CEOのマーク・ベニオフ氏が発表したEinsteinは、1つ目の「インテリジェンス」を担う部分となる。デイヨン氏は、「7億ドルを費やして企業買収、最高の人材を起用して開発した」と語る。キャッチは”みんなのためのAI”で、AIを一部しか使いこなせない先進機能ではないようにするべく、製品に組み込んだ点が大きな特徴となる。

 詳細を説明したEinstein担当ゼネラルマネージャーのジョン・ボール(John Ball)氏は、Einsteinを「個人用のデータサイエンティスト」と表現する。

「業界はAIレボリューションの最中にある。Einsteinはビジネスの世界にビジネスアプリケーションという形でAIをもたらすものだ」(ボール氏)。

 Salesforceに蓄積されているデータやシグナルを取り出して深層学習、機会学習などの技術を適用して結果を出す。それは「特定の顧客に過去X日間連絡をとっていない。そろそろ連絡をとるべきだ」など次のアクションの提案や得られる洞察だが、最終的にはプロセス自動化までもっていくという。これによりセールス担当は案件のクローズを高速・効率化でき、マーケティング担当はより開封率の高いメールを送るなどのことが可能になる。それだけでなく、Einsteinを利用するアプリの構築も可能だ。

 まずは17の機能をリリース、一部は無料だが追加料金が発生するものもある。ボール氏によると、セールスフォースのクラウド上で毎日億単位でレコメンドがすでに配信されており、「拡張性にも優れる」とのことだ。

脱電子メールを目指すQuipはSalesforceとの統合を深める

 Einsteinに並んで注目されるのが2つ目の「生産性」で、セールスフォースにとっては新規分野への拡大となる。ここで同社は8月にGoogle Mapsを手がけ、その後FacebookのCTOを務めてモバイルアプリを起動に乗せるなど華々しい経歴を持つブレット・タイラー(Bret Taylor)氏が創業したQuipを買収することを発表している。

Quipの共同創業者でSalesforceでもQuip CEOを務めるブレット・テイラー氏。元FacebookのCTOとして、モバイルアプリを成功に導いたことでも知られる

 Quipは脱電子メールとして、ドキュメント、スプレッドシート、チャットなどを単一の製品で体験できるもので、モバイルファースト設計を持つ。「コンシューマーの世界では素晴らしい技術開発が多数起こっているのに、メールがいまだに使われている。Quipはこれを変える」とQuip担当CEOを務めるテイラー氏は説明した。

 すでにSalesforceとの統合を実現しているが、すでに統合は深まっており、SalesforceへのシングルサインオンでQuipを利用できるようにすること、セールスフォースのUI「Lightning」への統合により、Quipドキュメント、スプレッドシート、タスクリストへのリンク、アクセス、生成を直接Salesforceで行なえるようにすることなどを発表した。

 3つ目の「スピード」に関してはLightningについて説明。すでに数十万人が利用しているというUIで、先に「Lightning Bolt」として、数分でポータルを作成できるフレームワークを発表している。LightningもDreamforceに合わせて数百の強化を提供するという。その一つとして、検索でのタイプアヘッド型の自動入力補完機能などが紹介された。

 4つ目の「モバイル」では「Salesforce1」としてモバイルアプリケーションを展開している。すでに150万人が使っており、「最大のモバイル業務アプリ」という。Dreamforceでは、ブランディングして体験をパーソナライズできる「MySalesforce1」を発表した。

 最後の「コネクティビティ」は、同社が2015年のDreamforceで新たに加えたIoT Cloudとなる。今年は、接続されたデバイスからリアルタイムのデータを収集する機能を導入、たとえば工場にあるロボットが発するアラートデータとSalesforceにあるサービス品質保証情報を組み合わせることで、ロボットメーカーは修理担当を割り当てるかどうかを決定するなどのことが可能になるという。このほか、デバイスの状態をリアルタイムで把握できるトラフィックモニタリング機能も加わる。

初お披露目となるCommerce Cloudで新しいコマース体験を実現

 これらに加えて、セールスフォースが9月末に発表した「Commerce Cloud」も、Dreamforceでお披露目となる。Commerce Cloudは同社が6月に28億ドルで買収したDemandwareを再ブランドしたもので、同社を率いていたジェフ・バレット(Jeff Barnett)氏がCommerce Cloud担当CEOを務める。

元Demandware CEOでCommerce Cloudを率いるジェフ・バレット氏

 Commerce CloudではECサイト、ソーシャルコマースなどを構築できる機能に加え、物理ストアにデジタル体験をもたらすことができる。SalesforceはCommerce Cloudローンチに合わせてApple Pay統合も発表しており、「デジタルコマース分野で成長しているが、コンバート率はよくない」というモバイルコマースをさらに加速できるとした。Einsteinも統合し、パーソナライズされたレコメン、検索結果などを提供できるという。

 デイヨン氏は拡大する製品について、コアはCRMであり、「ERPのようなものには進出しない。われわれのすべての買収戦略はCRMが導線となっている」とした。買収は事業拡大につながるもの、あるいは人材獲得を目的としたものの2種類を目的に行なうと説明した。

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