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Windows Info 第70回

Windows Inkでついに本格化するペン機能、これまでの歴史も振り返る

2016年09月04日 10時00分更新

文● 塩田紳二 編集● ASCII.jp

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PC上でのデジタイザとペンは
マイクロソフトによって実質的に仕様が統一

 ペンを使うためには、専用のハードウェアが必要だ。一般にペンのハードウェアは、PC本体に内蔵されるデジタイザとペンからなる。このとき、デジタイザがペンを検出するために使う技術にいくつか種類がある。Windows 8まで広く使われてきたのは電磁誘導方式だ。この方式では、デジタイザ側にはアンテナを並べ、ペンからの電波や磁力を検出して位置を測定する。

 このうち、広く普及していたのはワコム社の「EMR」(Electro Magnetic Resonance:電磁授受、あるいは電磁気共鳴などと訳される)方式で、デジタイザ側からの電波を受信してペン側の電力とするため、電池が不要という特徴を持つ。電池が不要なため、軸を細くしたり、短いペンを作ることも可能になる。

 また、一般に電磁誘導方式は検出が短時間で行えるため、位置検出サイクルが短く、精度を高めることが可能とされている。しかし、この方式では、PCの液晶にデジタイザを追加する必要があるため、コストが高くなってしまうという欠点があった。

 もう1つの方式としては最近普及しはじめた静電容量結合(Electrostatic Capacitance Coupling)方式がある。これは、静電容量方式のタッチパネルとデジタイザを兼用する方式で、タッチパネルのコントローラーにペン関連の機能を統合することで、タブレットでは、ペンデジタイザによるコスト上昇を小さく抑えることが可能な方式だ。

 一般的にこの方式では、電磁波を使わないため、デジタイザからペンに電力を送ることができず、ペン側に電池が必要になる。このため、ペンの太さなどに制限が出る。規格に準じた電池では大きさが決まっているため、ペンはこれを収納できるサイズにする必要がある。重量が増加するといった問題がある。反面、PC側のコストを安くできるため、ハードウェアの普及が期待できるというメリットがある。

 静電容量結合方式では、指先とタッチパネルの間の静電容量を測定することで、指の位置を測定する。ペンで使う場合、ペン側のハードウェアを使って、ペン先とタッチパネルの間の静電容量を制御する。このとき、ペンのIDなどの情報を送信することで、ペンと指、あるいはペン同士を区別することができる。

 この信号はメーカーにより違いがある。静電容量結合方式は、Sufrace Pro 3やソニーのVAIO Duo 13に採用されたイスラエルのN-Trig社の方式と、ワコム社のES方式(ElectroStaticsから命名)、Synaptics社の方式(Dell、ASUSの一部機種が採用、同社はタッチパネルコントローラーも供給している)などがあるのだが、どれも原理は同じでも、ペンが送信する信号のプロトコルが違っていたため、同じメーカーのタッチパネルコントローラーとペンを組みあわせる必要があった。

 2015年にマイクロソフトは、N-Trig社のペン技術を買収し、これをMicrosoft Pen Protocolと名付けてライセンスを開始した。これにより、複数のメーカーが同じ方式のペンやペン対応のタッチパネルコントローラーを作ることができるようになった。

マイクロソフトは、Penのメーカー3社に、タッチパネルコントローラーのメーカー7社にMicrosoft Pen Protocolをライセンスした

 複数のメーカーが共通の方式を採用することで、互換性のあるタッチパネルやコントローラーのコストを下げることが可能になる。なお、ワコム社は、今年3月マイクロソフトからライセンスを受け、自社方式とMicrosoft Porotocolの両方に対応したペンを製品化している。これにより、PCでのペンとデジタイザは、事実上Microsoft Pen Protocolに統一されたことになる。

 PCメーカーは、マイクロソフトからライセンスを受けたタッチパネルコントローラーやペンを採用すれば、Windows 10では、特にドライバなどを用意せずにInboxドライバのレベルで対応が行われる。また、Microsoft Pen Protocolに対応したペンであれば、メーカーを問わずに利用可能となるため、エコシステムとしてペンというアクセサリが1つのカテゴリとなる可能性も出てきた。

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