LGA 2061のBasin Fallsは
Skylake-XとKabylake-Xの2つが混在
話をロードマップに戻すが、正直来年いっぱいは、ことデスクトップに関してはKabylakeのままで推移するだろう。10nmプロセスが予定通り出てくれば、モバイル向けはCannon Lakeに移行するかもしれないが、デスクトップ向けは2018年まで見送りとなるだろう。万が一、10nmが遅れるようであれば、もう一世代14nmプロセスの製品が入る可能性すらある。この場合は、14+を使った製品になると思われる。
ただ、ここから漏れるのがハイエンド、つまりCore i7 Extreme向けである。こちらは無事Broadwell-Eの出荷が始まっており、次はSkylake-Eベースなのだが、この世代からインテルはCore i7 Extreme向け(このブランドがそのまま維持されるのか、名前が変わるのかも現時点では定かではない)に新しくLGA 2061のパッケージを導入する。
前回も触れたBasin Fallsである。おもしろいのは、このBasin Falls向けの製品は、Skylake-EP(Xeon向け)のダイを利用したSkylake-Xと、Kabylakeのダイを利用したKabylake-Xの2つが混在することだ(前回の記事執筆時点では、両者が別のプラットフォームになると思っていた)。
そもそもなぜ新プラットフォームを導入するのか? 従来Extreme向けはXeonと同じプラットフォームを使うことになっていた。これは最初の製品であるPentium 4 Extreme EditionがXeon(Fosterコア)をそのまま流用したことから来ている。
ただインテルはSkylake-EP/EX世代で、2P/4P/8Pが同じ構成となるPurley Platformを導入する予定だが、さすがにこれはExtreme向けには過剰すぎると判断されたようだ。そこで、現在のLGA2011-3の延長にあるような新しいパッケージを用意することにしたらしい。
このBasin Fallsであるが、ハイエンドデスクトップとワークステーションをカバーするもので、構成は前回紹介したとおり、4chのDDR4メモリー(DDR4-2677まで対応:RDIMMやLRDIMMもサポート)と、最大x48(x16が3組)のPCI Express 3.0をCPU側から出し、チップセットはKabylake PCH(つまりIntel 200シリーズ)をそのまま使う形となる。
コアはSkylake-EPのうちLCC(Low Core Count)構成のものを流用し、6/8/10コアがラインナップされるようだ(18コア製品はさすがにないらしい)。こちらのTDPは140Wである。
これとは別に、同じくLGA 2061ながら、Kabylakeのコアを流用したKabylake-Xと呼ばれるものも同時にラインナップされる。こちらは4コアのみで、TDPは112Wとされる。
ここで疑問になるのはPCI Expressとメモリーコントローラーである。KabylakeはPCI Expressはx16(x16、またはx8+x8)しかないし、DDR4は2chである。ここで可能性があるのは以下の2つである。
- Skylake-Xでは3×PCI Express x16と4ch DDR4がフルに利用できるが、Kabylake-XではPCI Expressはx16が1つのみ有効。また4ch DDR4のうち有効なのは2chのみ。
- Skylake-XとKabylake-Xはどちらも3×PCI Express x16と4ch DDR4がフルに利用できる。
前者では、Kabylake-XはKabylakeそのままのダイで、単に内蔵GPUを無効化し、動作周波数を若干引き上げた(その分TDPも増えた)ものになる。
後者であればKabylakeのPCI Expressとメモリーコントローラーを再設計(Skylake-EPのものを流用?)し、かつGPUを抜いた新しいダイが投入されることになる。
今のところどちらになるのか、はっきりしていないが、もし後者だとすればこの際にプロセスを14nmではなく14+に切り替えてくるというシナリオは、いかにもありそうに思える。
以前の計画ではKabylakeはそのままという話だったのだが、AMDがZenベースのSummit Ridgeを投入してくることを考えると、もう少し性能マージンを取っておきたいとインテルが考えるのは不思議ではない。
そうした際には「使える武器は全部使う」というインテルのポリシーからして、14+を使ったダイが出てきても不思議ではない。
もっともインテルの10nmが順調なら、無理に14+を使わなくても10nm製品を早期に投入して差別化を図ることも理論上は可能なので、このあたりは10nmの進捗次第というべきか。
余談ながら、現在AMDがZenを生産しているGlobalFoundriesは、10nm世代はスキップして次は7nmに向かう予定となっている。
ということは逆説的に言えばZenや、その後継のZen+は14nmのまま長く生産されることになるわけで、インテルが10nmの早期移行に失敗した場合は、久しぶりに同じプロセスノード同士での製品の殴り合いが続く、というおもしろい事態になりそうだ。
この連載の記事
-
第798回
PC
日本が開発したAIプロセッサーMN-Core 2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第797回
PC
わずか2年で完成させた韓国FuriosaAIのAIアクセラレーターRNGD Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第796回
PC
Metaが自社開発したAI推論用アクセラレーターMTIA v2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第795回
デジタル
AI性能を引き上げるInstinct MI325XとPensando Salina 400/Pollara 400がサーバーにインパクトをもたらす AMD CPUロードマップ -
第794回
デジタル
第5世代EPYCはMRDIMMをサポートしている? AMD CPUロードマップ -
第793回
PC
5nmの限界に早くもたどり着いてしまったWSE-3 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第792回
PC
大型言語モデルに全振りしたSambaNovaのAIプロセッサーSC40L Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第791回
PC
妙に性能のバランスが悪いマイクロソフトのAI特化型チップMaia 100 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第790回
PC
AI推論用アクセラレーターを搭載するIBMのTelum II Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第789回
PC
切り捨てられた部門が再始動して作り上げたAmpereOne Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第788回
PC
Meteor Lakeを凌駕する性能のQualcomm「Oryon」 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU - この連載の一覧へ