このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

松村太郎の「西海岸から見る"it"トレンド」 第122回

米コストコが提携クレジットカードをAMEX→VISAに変えて生まれた混乱

2016年06月29日 19時00分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

新しく届いたクレジットカード。最近は磁気スワイプもしくはICチップによる決済が多いせいか、数字がパンチされておらず、よりフラットなカードになっています

 AppleのWWDC16も終わりました。シリコンバレーの巨大企業は、4月のFacebook、5月のGoogle、そして6月のAppleと、それぞれの開発者会議を経て、今年彼らが、そして開発者がどのようなアプリを開発していくのかというトレンド感がはっきりしてきたように感じています。

2016年のトレンド感を3つピックアップすると
「人工知能」「VR」「フィンテック」

 1つ目は、人工知能。

 Googleは検索エンジンと各種サービスで蓄積したデータを学習データに変え、Googleアシスタントという形でユーザーに音声操作、あるいはチャット内での活用という形で提供しました。また、Googleフォトの画像解析はさらに磨きがかかっており、パスタの写真があれば、具や麺の種類まできちんと解析してくれます。

 またFacebookは、メッセンジャーを企業に解放した上で、対話型のボットを作れるようになり、また画像の内容分析ができる機械学習の成果を発表していました。この機能を、目の不自由なFacebookユーザーがニュースフィードを楽しむために利用するという活用事例を示していた点は、「世界中の人のつながりを作る」という明確なゴールのための技術開発である点をアピールしていました。

 そしてAppleは、プライバシーとより良い機能を両立させるという立場を強調し、iPhoneに閉じた機械学習結果の活用や、データを匿名化しながら学習に生かす方針をアピールするなど、FBIとの間でiPhoneのロック解除問題を争ってきた、そしてビジネスユーザーの取り込みを狙う企業らしい立場が明らかになってきました。

 2つ目は仮想現実。

 Appleからは、デバイスにまつわる話でもあるので、ソフトウェアに関するカンファレンスだったWWDC16では「ゼロ回答」でしたが、Oculusを擁するFacebookはVRを標準的なコンテンツに加えるべく、自前の360度カメラを作るなど、力を入れています。また、Googleは、DaydreamというAndroid向けのVRプラットホームを披露し、デバイスメーカーやアプリ企業との連携を深めていくことになります。そんなことより、ソニーのPlayStation VRですけれども。

 そして3つ目は金融です。

 金融+テクノロジーの造語「FinTech」(フィンテック)も一般的に流通し始め、日本でも大手銀行を中心にして、投資などが活発になっています。個人的にも面白い分野である一方で、我々の生活に何か波及してくるとしたら、やはりスマホを活用した決済、ということになるのですが、日本ではすでに電子マネーが普及しているため、さほどインパクトが得られないかもしれません。

 なにせ、アメリカは紙の小切手とクレジットカードの世界なので……。今日は、筆者も利用しているクレジットカードに関する話題です。

小売大手の米コストコが、VISAに鞍替え

 さて、米国における2016年の個人向けの金融関連でのビッグニュースは、コストコが提携クレジットカードを変えたという話です。コストコは、倉庫型店舗を展開するチェーンで、日本でも福岡県の久山に1号店を出して以降、アメリカと同じスタイルの倉庫型店舗を出店しています。

 筆者は5年前に米国に渡ってきましたが、日本でもコストコとイケアはすでに経験していたため、これにiPhoneを加えて、米国での生活の立ち上げのストレスが軽減されました。地域経済に対する良し悪しは別の議論として、グローバリズムが与える個人へのメリットを意識した瞬間です。

 そのコストコはこれまで、アメリカンエキスプレス(アメックス)と提携していました。その結果、アメックスしかコストコで利用できなかったのです。しかし、2016年6月20日から、提携先のカードブランドをCiti VISAに鞍替えし、アメックスが使えなくなってしまいました。

(筆者註:VISAに提携先を変えたのは米国とプエルトリコのコストコのみで、日本では引き続き、アメリカンエキスプレスと、オリコマスターカードのみが利用できます。現段階では日本のコストコでVISAが使えません)。

新カード到着、正直うれしい提携先変更
アメックスはアメリカでどこでも使えるわけではない

 筆者は、米国の社会保障番号(日本のマイナンバーのようなもので、無いと大変不便する番号)を取得してからすぐに、とりあえず、ということでコストコで会員証付きのクレジットカードを作りました。クレジットカードとコストコの会員証が一体型になっていて、財布の中身のカードが1枚減らせるじゃないですか。

 しかし、会員証付きのカードがコストコで使えなくなって、どうなるのだろう、と思っていたところ、最近6月に新しい提携先の米シティバンクから、新しい会員証一体型のクレジットカードが送られてきたのです。しかも、アメックスで使っていた金額は、すべて新しいカードに移されていました。そんな処理ができるんですね。

 さて、新しいカードのネットワークはVISA。この提携変更は、実は個人的に非常にうれしい変更でした。「アメリカンエキスプレス」というぐらいだからアメリカでは万能だろう、思われるかもしれませんが、実はアメックスは、使えない店がかなり多い、個人商店からは避けられているカードです。

 VISA、MasterCard、そしてアメリカでは多いDiscoverというネットワークは利用できても、アメックスは使えない地元店が多いという事実を、こちらに住んで知りました。日本で言えば、JCBよりVISAの方が便利という感覚に近いかもしれません。

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン