このページの本文へ

スパコン並みの性能と低消費電力が組み込み機器を変える

ドローンやロボットの自律稼働を支援する「NVIDIA Jetson TX1」

2016年03月02日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

3月1日、NVIDIAは自律稼働可能なスマートマシン(ロボットやドローン)の開発を容易にする「NVIDIA Jetson TX1」に関する発表会を開催した。スパコンクラスの処理能力と低消費電力を両立し、インテリジェントなデバイスの開発に最適だという。

スパコン並の処理を10Wで実現するJetson TX1

 組み込み機器用のプラットフォームであるJetson TX1は、クレジットカードサイズ(50mm×87mm)のボードにNVIDIAのMaxwellアーキテクチャを採用した256コアのGPU、ARMの64ビットCPU、4GBメモリ、16GBのeMMCを搭載し、従来のスパコンに匹敵する1テラフロップスもの処理能力を実現する。無線LANやBluetooth、1Gbps Ethernetなど通信機能も充実。機械学習やコンピュータービジョン用の開発キットも用意され、自律性を備えたロボットやドローンの開発を容易に行なえるという。

NVIDIA Product Manager for Mobile embedded、ジェシー・クレイトン氏

 NVIDIAで自律稼働関連のプロダクトを担当しているジェシー・クレイトン氏は、ロボットを開発する際には自身が視覚と認識力(コンピュータービジョン)を持ち、状況を判断し、障害を予測したり、最適な動作を判断していく「自律性」が重要になると指摘。たとえば、商品をデリバリーするロボットを開発する場合、人の少ない地域であればGPSと連携させ動作させることは可能だが、車や建物の多い都市部では障害を予測しながら動作する自律性が必要になるという。

 こうした自律性を確保するためには、膨大な計算能力が必要だが、リソースをどこから調達するかが大きな問題になる。クラウドの利用がもっとも一般的だが、通信に遅延があり、現実的な解になり得ない。一方で、高速なデスクトップCPUや従来型のGPUを使っても、電力や冷却、重量などの問題が出てくるという。これに対してJetson TX1は高い処理能力と低消費電力を両立し、大量のデータをリアルタイムにさばくことが可能になるという。クレイトン氏は、Intel Core i7-6700Kに比べたディープラーニングにおけるワットあたりのパフォーマンスを披露し、Jetson TX1の方が10倍エネルギー効率が高いとアピールした。

 NVIDIAの機械学習アーキテクチャでは、まずワークステーションやスパコン上でCUDAの「NVIDIA Digits Devbox」を使ってハードな学習を継続的に行ない、この学習モデルをNVIDIA Jetson TX1にデプロイし、推論を担当させる。運用開始以降も学習を継続し、モデルを複数のスマートマシンで共有することが可能だという。

ディープラーニングにおけるワットあたりのパフォーマンス学習からデプロイまでをエンドツーエンドで提供

 開発者向けに提供されるJetson TX1開発キットでは、Jetson TX1のモジュールのほか、カメラや開発用ボードまで含んでおり、容易に開発が可能だという。SDKではCaffeやTheano、Torch、Chainerなどのフレームワークと互換性を持つCUDA用機械学習ライブラリ「cuDNN」や、OpenVX 1.1に対応するコンピュータビジョン用ライブラリ「VisionWorks」、OpenGL 4.5、OpenGL ES 3.1、Vulcanなどに対応したグラフィックドライバやAPIなどが提供。もちろん、CUDAを使うことで、GPUを汎用プロセッサーとして用いることができ、高い並列処理を実現できるという。

画像を認識し、自動的にキャプションを付けるJetson TX1のデモ

自立稼働可能なドローンならこんな高度なことも

 プレス向けイベントでは産業用ドローンを開発するエンルート(enRoute)のイエン・カイ氏が登壇した。

enRoute 開発部長のイエン・カイ氏

 同社は、産業施設の監視、大学の調査、災害地の撮影などでの利用を前提に、自動運転車の技術をドローンに適用したインテリジェントなドローンを目指している。しかし、ドローンの場合は自動運転者で搭載しているデスクトップCPUは消費電力やサイズの問題で使えず、しかも安定した飛行のため、制御がシビアという課題を持っていた。そのため、地上の制御用ステーションとドローンを連携させる仕組みを導入したが、通信に遅延が発生するほか、コントロール信号とビデオ信号が混信する、ステーションのハッキングに対して脆弱といった弱点があったという。

enRouteが開発しているJetson TX1ベースの自律稼働可能なドローン

 これに対して、現在開発しているのはJetson TX1を用いた自立稼働できるドローン。ディープラーニングによるナビゲーションを導入し、リアルタイムに映像を識別しながら、精度の高い運転を実現した。さらにJetson TX1の能力を活かしたアプリケーションも開発しており、地上に倒れている負傷者の検出やいたずらで飛ばしているドローンをドローンで捕獲することも可能になっているという。カイ氏は「なにしろ10Wという消費電力はトップクラス。開発者にとっては、CUDAで培ってきたデスクトップの知識を、そのまま組み込み機器の開発と使えることもうれしい」とJetson TX1を高く評価する。

機械学習により、荒い解像度でも空間上の物質を認識いたずらに入ってきた他のドローンをリアルタイムに追従する

 米国では昨年から提供されているJetson TX1開発キットだが、日本国内でも3月中旬から提供を開始する。Jetson TX1のモジュール自体は2016年の上半期に提供される予定となっている。価格はオープンプライス。

■関連サイト

カテゴリートップへ

最新記事

ASCII.jp特設サイト

最新記事

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ