移住者の生活満足度にフォーカス
具体的にプロジェクトはどのように進められたのか。
まず、津波で被災した集合住宅の1階部分を「大船渡テレワークセンター」として改修。テレワークに必要なクラウド環境を整備し、都市部からの移住者が快適に仕事が行える環境を用意した。そこに富士ソフトがサテライトオフィスを開設し、都市部から2名の社員を派遣。ニアショア開発拠点として、都市部で行っていたアプリ開発業務などをそのまま継続した。加えて、2名の現地採用も行い、その就労・育成を進めた。
富士ソフトは、以前よりCSR活動として被災地のがれき撤去などを行っており、その流れで大船渡市や福山氏と出会い、プロジェクト参画を決意。「地方には仕事がない、東京にはIT人材がいない。そんな双方の課題をふるさとテレワークによって解決したいと考えた」(富士ソフト 社会貢献室 室長の佐々木良昭氏)という。
センター内には、富士ソフトが利用する「プライベートゾーン」、地域の企業も会議などに使える「オープンゾーン」のほか、外部のフリーランスも共同利用できる「コワーキングゾーン」も設置。ここに、全国各地にシェアハウスを展開し、趣味や話題が合うフリーのIT技術者(ギーク)が集まり共同生活する「ギークハウスプロジェクト」の協力で、延べ34名の東京在住のギークを誘致し、「ギークハウス大船渡」として運営したのが特徴だ。
その狙いは、東京と大船渡市に二拠点居住するノマドワーカーとしての就労環境を検証すること。福山氏は「大船渡市ふるさとテレワークのポイントは、テレワークで働く場としての実証ではなく、移住者の生活満足度に焦点を当てたこと。おしゃれなオフィス空間もその一環だが、何よりも移住者に農業・漁業などの地域体験をしてもらったり、地元の人と一緒に地域課題を解決するワークショップを開催したりして、大船渡市ならではの体験に取り組んだ。理由は、移住者の中の『どこに住む?』という天秤が『地方』に傾くのは、その地域に関わり、実際に課題を解決するなどして自己満足感が得られた瞬間だと思うから。最終的には定住・定着につなげたいので、そのために何が必要かを検証するのが最大の目的だった」と語る。
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