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「ふるさとテレワーク」は地方を救うか!? 第3回

「二拠点居住」という考え方

若者の「地元で働きたい」、テレワークで叶える大船渡市

2016年03月11日 06時00分更新

文● 川島弘之/TECH.ASCII.jp

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 地方から人が減り続けている。日本の人口減少や東京への一極集中などが原因だ。このままだと2040年には、多くの地方自治体が行政機能を維持できなくなってしまうとされる。

 そこで取り組まれたのが、総務省「ふるさとテレワーク」である。

 都会のいつもの仕事をそのまま続けられるよう、地方にテレワーク環境を整備。地方への移住や企業進出を促進し「新たな人の流れ」を創る。さらに移住者が地方に溶け込めるよう支援することで、その流れを一過性のものではなく「定着・定住」につなげる。

 その実現可能性を検証すべく、全国15地域で実証実験が行われ、約180社の協力会社から合計約1000人が実際に移住。テレワークの地域への影響、効果や課題を洗い出した。「ふるさとテレワーク」は地方を救うのか? そんな各地での取り組みをレポートする。

 今回は岩手県大船渡市。「復興に向け、地元で働きたい」。そんな若者の願いを叶えるべくテレワークによる産業振興に取り組む、地域活性化総合研究所、富士ソフト、大船渡市に話を聞く。

プロジェクト概要(出典:総務省)

大船渡市の復興の様子(2016年2月現在)

 岩手県南部の大船渡市。岩手県陸前高田市や宮城県気仙沼市とともに三陸沿岸南部に位置する。美しい景観が続くリアス式海岸は、古くから天然の良港として栄えた。沖合には、世界三大漁業と言われる「三陸漁場」があり、県内最大かつ最重要港湾である。

 だが、東日本大震災の津波により、市の中心部は壊滅。現在も気が遠くなるような復興作業が続いている。まずは背景として、簡単にその様子から。

2011年3月12日の中心部の様子(出典:大船渡市)

4階(壁の赤い線:14.5m)まで津波に飲まれた。実物を見ても当時の状況を想像するのが難しい

「過去にここまで浸水しました」とまちの至る所に看板が

 復興は「避難する」を最優先し、「減災」の考え方に基づき、海洋保全施設などのハード対策、土地利用の見直しや防災教育の徹底、ハザードマップの整備などのソフト対策も含めて進められている。

 代表的なのが「住宅の高台移転」。大船渡市によれば、最多時で60カ所あった避難所(8700人以上を収容)は、応急仮設住宅への入居などにより、2011年8月にはすべて役目を終えた。2016年度には住宅再建もほぼ完了し、学校の校庭などに置かれた応急仮設住宅から順次撤去されるという。

 「災害危険区域」(建築規制)も設けられ、例えば、2mの浸水が想定される場所には、「住むこと」が禁止となった。海側の広大な被災空地には「土地のかさ上げ」などの条件付きで、宿泊・複合商業施設のみが建設される。東京ドーム2.2個分の土地に約70店舗が集結する大規模なもので、早いところでは2016年度中にも開業するとのこと。だが「防潮堤」「道路」の整備はまだまだ終りが見えない。大船渡漁港海岸の防潮堤復旧も、完成時期が未定(平成30年度以降)となっている。

新しい大船渡プラザホテル周辺の様子

かさ上げ工事の様子

行き交う工事車両

建設中の複合商業施設

港に接岸した大型船

防潮堤と水門

「新しい防潮堤の高さを表示しています」

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