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生きたままの牛を計測して肉質等級を非侵襲的検査

牛が生きたまま霜降り状態を計測できる「核磁気共鳴スキャナー」

2015年05月18日 17時57分更新

文● 行正和義/ASCII.jp

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今回開発したプロトタイプによる肉用牛の霜降り状態の計測イメージ

 国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)は5月18日、牛の霜降りを生きたまま計測できる核磁気共鳴スキャナーのプロトタイプを開発したと発表した。

 黒毛和牛などでは肉の脂肪の割合が肉質等級、価格に大きく影響するが、どの程度脂肪が肉に混ざっているかは屠殺して肉を見なくては分からない。これまで超音波診断でスキャンする方法が用いられてきたが、脂肪と筋肉の混合比までは計測できなかった。

黒毛和牛の僧帽筋。画像のサイズは約4×10cm。筋肉(赤)と脂肪(白)の交雑がいわゆる霜降り

 産総研では、これまで資源開発や地盤工学用に片側開放型のプロトン核磁気共鳴スキャナーを開発。水と油を区別して計測できるため、油田における試料中の重油/地下水を識別するなどの利用ができる。この物質識別の原理は牛を生きたまま計測できることから、肉用牛の脂肪交雑計測用の片側開放型プロトン核磁気共鳴スキャナーを開発した。

磁石と高周波コイルからなるセンサーユニットの概略図。探査深度は3cm、感度領域サイズは1.9×1.9×1.6cm^3

 計測装置は永久磁石と高周波コイルを用いるもので、計測深度は3cm。本来、ロース芯は体表から10cmよりも深いところに位置するが、プロトタイプなため体表に近い僧帽筋を計測した。僧帽筋・サーロイン、テンダーロイン、赤み、脂肪塊などの牛肉ブロックを計測したところ、脂肪量と水分量の区別できることを確かめた。

開発したプロトタイプ 

 計測時間は約10秒と短く、牛に麻酔などを行う必要もなく、また比較的ポータブルなシステムで実用化できるという。産総研では、今後の実験に生きた牛の計測を検討するとともに、病気の診断、またはブランド豚やマグロなどへの適用を考慮に入れつつ応用を図るという。

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