新しい機能が増え続けるGoogleアナリティクスに追加された「コホート分析」レポート。アクセス解析担当者に聞き慣れない「コホート」とは? 考え方と分析方法を紹介します。(編集部)
いくつかに分類したユーザーグループの定着度や行動などの推移を分析する「コホート分析」が、Googleアナリティクスで手軽にできるようになりました。2回に分けて、Googleアナリティクスによるコホート分析の手順と活用方法を解説します。
今回は、コホート分析の概要と、2015年1月にGoogleアナリティクスに追加された「コホート分析レポート」の活用方法を解説します。
ユーザーグループの行動変化を調べるコホート分析
「コホート」はもともと古代ローマの軍団を10に分けた「分団」が由来だそうです。「コホート分析」とは、何かの条件や属性でユーザーをグループに分け、グループごとにどのような行動の変化があるかを長期にわたって分析することです。たとえば、季節ごとにキャンペーンを実施しているサイトなら、キャンペーンで獲得したユーザーを春夏秋冬の4グループに分け、サイトへの定着率を1カ月後、2カ月後、3カ月後……と追いかけて、「冬のキャンペーンのお客さんは初回はたくさん買ってくれたけど、3カ月間で見ると春のお客さんのほうが消費金額が多い。その理由は……」と深く分析できます。
Googleアナリティクスにはもともとコホート分析の機能はありませんでしたが、2013年9月に強化されたセグメント機能により、初回訪問日や初回の訪問きっかけなどをセグメントに指定する工夫をすることで、特定の条件でユーザーをグループ化して分析できるようになりました。
その後、2015年1月に「ユーザー」メニューに追加された「コホート分析レポート」では、標準で準備されているコホートの種類が「直近の新規ユーザー」に限定されるなど、いくつかの制限がありますが、セグメント機能よりも手軽にコホート分析を試せるようになりました。
※執筆時点でベータ版であるため、仕様は今後変更される可能性があります。
「コホート分析」レポートでECサイトの施策を評価しよう
「ユーザー」メニューの「コホート分析」を試してみましょう。このレポートでは、新規ユーザーの定着率やコンバージョンなどの推移を、ビジュアルで直感的に把握できます。
- 直近の施策が新規ユーザーの定着に貢献しているか
- 当時の新規ユーザーが、その後どれだけ購入や成果につながっているか
レポートの見方を簡単に紹介します。
- 「コホートの種類」:
- 「コホートのサイズ」:
- 「指標」:
ユーザーグループにする軸を指定します。2015年3月時点では、ユーザーの初回訪問日でグループを作る「ユーザーを獲得した日付」のみ表示されます。
コホートの推移をどのレベルで確認したいか指定します。「日別」「週別」「月別」の3種類から選択します。たとえば、「日別」にすると、0日目(当日)、1日後、2日後……といった具合に表示されます。
メッセージ通知やメール施策でWebサイトへの訪問やアプリ起動を促し、短期的な「アクティブユーザー」の割合を分析したり、毎日利用してほしいWebサイトやアプリを分析したりするには「日別」がいいでしょう。週に数回、月に数回利用するサイトやアプリであれば、「週別」を選択します。
コホート分析レポートで分析できる期間は、日別であれば過去30日間、週別であれば過去12週間、月別であれば過去3カ月間です。
なお、各コホートの直近の期間は、集計の途中の数値です。「月別」で表示したレポートでは、集計中のことがほとんどですので、参考程度にとどめておきましょう。
分析する切り口を指定します。デフォルトでは「ユーザー維持率」になっています。ユーザーあたりのセッション、合計のページビュー数などから選択できます。
実際にこの機能を使って、ECサイトで週代わりの施策を実施した場合のコホート分析の事例を紹介しましょう。
まずは、施策ごとのユーザーの定着率を分析しました。
- 指標:ユーザー維持率
- コホートのサイズ:週別
- 期間:過去6週
「初回訪問日が2015年1月11日〜1月17日の新規ユーザーが、5週後に再訪問したのは0.80%」と分かります。アプリのアクティブ率向上を狙った施策ならこのレポートでも分析できますが、ECサイトなのでもう少し深堀します。
指標で「収益」を選択し、各コホートの新規ユーザーの購入動向を見てみます。
- 指標:収益
- コホートのサイズ:週別
- 期間:過去6週
1月11日週が初回訪問週の新規ユーザーの該当週の売上は360万円、1週後は80万円、2週後は48万円と把握できます。
ユーザー維持率と収益のコホート分析から、1月18日週と2月1日週の新規ユーザーは、「週1」翌週のアクセスと売上がともに多く、約1週間検討して購入に至っています。すぐに購入を誘発するのではなく、ユーザーに検討期間を与えたことが分かります。
あるいは、翌週(1/25週や2/8週)の施策が再訪問を促して購入を後押しした可能性がある、といったことが推測できます。
このレポートから、「どの時期の施策が継続的に商品を購入する良好な新規ユーザーを獲得できたか」「継続して購入してもらうにはどんな施策を打てばよいのか」といったことがわかり、改善に生かせます。
ユーザーを獲得した日付は新規ユーザー数ではない?
「ユーザーを獲得した日付」は、ヘルプに「ユーザーによるコンテンツの利用が最初に認識された日付」と記述があり、その期間のコホートのユーザー数は「新規ユーザー数(New Visitor)」と同じと読み取れます。
-----(引用)
ユーザーを獲得した日付は、ユーザーによるコンテンツの利用が最初に認識された日付です。 コホート分析レポートでこの項目が選択されている場合、コホートはユーザーが最初のセッションを開始した日時に基づいてグループ化されます。
-----(引用ここまで)
しかし、「コホート分析」レポートで表示した各コホートのユーザー数と、該当期間の「新規ユーザー数(New Visitor)」には、比較的大きな乖離があることを確認しています。「週別」「月別」とコホートのサイズが大きいほど乖離は大きくなるようです。
「ユーザーを獲得した日付」で指定した期間のコホートのユーザーは、「新規ユーザー」と異なる定義の可能性があります。あるいはベータ版のため、バグやエラーの可能性も残ります。少なくとも執筆時点では、定義が不明瞭です。
「コホート分析」レポートにおいてもセグメント機能を利用したコホート分析でも、コホートのサイズ(ユーザー数)は十分な母数を確保するように心がけましょう。
より具体的なコホート分析はセグメント機能で
手軽に使えるコホート分析レポートですが、現状では以下の制約があります。
- コホートが「ユーザーを獲得した日付」のみしか選べない(新規訪問ユーザーしか分析できない)
- 分析の日付に自由度が少ない
そのため、より具体的なユーザー行動の変化を分析するには、セグメント機能を利用する必要があります。
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コホート分析がどういうものか理解いただけましたか。次回は、セグメント機能を利用した、より実践的なコホート分析について解説します。