「ハードルの高さ」はJavaだけではない
ハードルはJavaだけではない。OS X Lion以降スマートカードのサポートが廃止(「Smart Card Services」としてオープンソースプロジェクト化)されたため、手動でドライバをインストールしなければならない。e-Tax(WEB版)でYosemiteが公式サポートされないためか、市販ICカードリーダのMac用ドライバは軒並みYosemiteをサポートせず、インストーラの内容物を手動でコピーするという荒技を使わなければ電子証明書(住基カードに書き込まれる)を読み取れない。
このように、腕に覚えのあるユーザでなければ導入前に挫折してしまいそうなYosemiteのe-Tax(WEB版)環境だが、公式にサポートされるMavericksやMountain Lionでも大きく変わらない。ICカードリーダのドライバをインストールする部分は省略できるが、Javaランタイムやスマートカードリーダのドライバはもちろん、ルート証明書の準備も必要だ。
Windows(.NETベースのe-Taxソフト)も決してラクラクというわけではない。初期登録作業はまったく変わらず、ICカードリーダやルート証明書のセットアップも必要だし、インストール中に「ユーザーアカウント制御」などの警告も表示される。Macほどではないにせよ、e-Taxに使おうとPCを初めて導入するユーザでは太刀打ち困難なレベルだ。
確定申告の実作業自体は容易
と、ここまで非難めいた調子でつづっているが、確定申告の作業そのものは難しくない。紙にボールペンで書き込むことと大差なく、それがブラウザになっただけのことだ。近くに助けてくれる税務署員はいないが、確定申告経験者であればスムーズに進むはず。セットアップの煩雑さ・難しさと確定申告という実作業の容易さの落差が、かなり激しい印象だ。
国税庁のウェブサイトで公開されている「平成25年分の所得税及び復興特別所得税、消費税並びに贈与税の確定申告状況等について」によると、e-Tax利用者は全体の約27%、着々とその割合を増やしている。セットアップの難易度は高く、ウェブサイトのデザインを含めUI/UXには"お役所的な何か"を感じざるをえないが、税務署へ足を運ばずに確定申告できることの利点はマイナス面を補って余りあるからだろう。
ところで、2016年1月から「マイナンバー制度」が実施されると、e-Taxの利用価値はさらに高まると考えられる。決定事項ではないが、所轄のサイトにマイナンバー(個人の場合12桁の数値)を入力すると、源泉徴収票や社会保険料の支払証明書に相当する資料が、手もとのPCやスマートフォン/タブレットから入手できるようになるらしい。具体的な内容は発表されていないが、どうせなら納税者にとって導入しやすい・使いやすいシステムであってほしい。機会があれば、ぜひ取材してみたいと考えている。
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