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降雪量日本一の空港で飛行機が安全に飛び立つための取り組みを紹介

豪雪の青森空港でJALに密着! 離陸に必要なディアイシングとは

2015年02月20日 09時00分更新

文● 八尋/ASCII.jp

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ディアイシング作業のための「ディアイシングカー」とは

 ディアイシング・アンチアイシングは「ディアイシングカー」という作業車を使用しておこなう。JALは青森空港に「ELEPHANT-BETA」と「534S」と呼ぶ2台のディアイシングカーを所持している。ELEPHANT-BETAはタイプ1、タイプ4、水が入った3つのタンクを、534Sはタイプ1とタイプ4が入った2つのタンクを搭載する。2台とも、ディアイシングとアンチアイシング両方の作業が可能だ。

ディアイシングカー。手前が「534S」、奥が「ELEPHANT-BETA」

534Sの操縦席

除雪液を入れるタンク

防除雪氷液の射出口(534S)

防除雪氷液の射出口(ELEPHANT-BETA)

前についているのが操縦席(534S)

操縦席ごと高く上昇し、ディアイシングを行う(ELEPHANT-BETA)

 ディアイシング・アンチアイシングは、基本的に左主翼、尾翼、右主翼という順番で作業する。降雪量によっては、その間に胴体も除雪する場合もある。アンチアイシングに使用するタイプ4は、せん断力(物体内部のある面の平行方向に、すべらせるように作用する応力のこと)に弱いので、離陸時に溶液はすべりおちる。

ディアイシング・アンチアイシングの作業工程を説明してもらった。このヘルメットは、ねぶた祭りのために中村氏が手製で作成したとのこと。しかもちゃんとライトが点灯する

 ちなみに左主翼から始めるのは、作業を開始したことを機長が確認しやすいためで、最終チェックをするのも機長だという。離陸前に雪が降っていなくても機長から要請があれば作業することもあるとのことだ。

左主翼から作業開始

尾翼に移動、急に雪が降ってきた。青森空港ではすぐ天候が変わってしまう

右主翼に移動して作業

 この除雪氷液は、間接的にかかる程度は問題ないが、窓にかけるとヒビ割れの原因になったり、エンジンにかけると機内の空調に影響がでてしまう。それを防ぐためには、高度な技術が必要となってくるので、JALの整備士は必ずディアイシングの資格を所有している。

 JALでは作業員を対象に、初年度には座学を1日かけて行ないテストを実施、数日間かけて実技訓練を行なっている。また、毎年座学と実技訓練を実施している。ディアイシング・アンチアイシング作業には、航空機全般の知識と経験が必要なのだ。

JAL独自の工夫も!

 青森空港では、雪の影響などで滑走路に行くのに時間がかかるうえに、すぐ雪が積もってしまう。そこでJALでは、降雪状況や雪雲の動向によってはプッシュバック後自走する直前に除雪をする場合もある。これはJAL独自の工夫だという。除雪作業も実際に見学させてもらったが、確かに客が搭乗したことを確認して除雪作業にとりかかっていた。

 また、2機の飛行機を各1台ずつのディアイシングカーで同時に作業をしていたが、片方が先に作業が終わった。すると終わっていない方に向かい、2台で1機の作業を始めた。このように、普段からマニュアル通りの動きだけではなく自分の意志でも行動して協力し合うことで、作業効率を高めているのだという。

作業を終えたディアイシングカーが移動し、2台で作業を始めた

ディアイシング・アンチアイシング作業が終わると、すぐ飛び立っていった

比較的狭い空港、少ない作業員だからこそ、できることがある

 青森空港は、施設が狭い分作業員も多くない。部署は分かれているが、手が足りていなければ作業を手伝うことも普通だという。取材している間も、他部署同士の作業員の方が作業について話しているのを何度か目撃した。知識や経験が豊富なスタッフのこのような連携プレイが、青森空港での安全な離着陸、定時での発着を支えているのだ。

(次ページ「最強の除雪部隊『ホワイトインパルス』も見てきた!」へ続く)

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