GoogleのUX体系「Material design」
下の動画は、Androidに採用されるUX体系「Material design」を紹介したムービーです。シンプルかつ直感的に操作するイメージがユーザーに伝わるように設計されています。アニメーションなどが多用され、「Material」(素材)の名称通り、画面上で紙やカードに触れる感覚を実現しようとしています。また、実際のメモや書類と同じように、余白が多いことも「Material design」の特徴です。
機器に触れていないときのUX
アプリやゲームで重要なのは、「機器に触れていないときに記憶から呼び起こせるUX」。つまり、エピソードとしての感覚です。「あのゲームは楽しい」「またやりたい」とユーザーに感じさせたり、友人や家族に「あれ、面白いよ!」「使いやすいよ」と伝えたり、SNSなどでも気分を共有できるUX。こうしたUXの重要性は、なにもコンピュータやスマホのアプリ/ゲームだけではありません。
「読んでいて気分がいい本/ウェブサイト」「運転していて気持ちがいい自動車」「また泊まりたくなるラグジュアリーなホテル」など、機器に触れている/体験しているときだけでなく、「また、そこに戻りたい」という魅力をもたせる必要があります。そうした意味では、筆者の仕事であるマジックのUXも同じです。
マジックのUXとは…
「観客はただ騙されたいのではなく、紳士に騙されたいと願っている」と言ったのは、19世紀のフランスのマジシャン、ロベール・ウーダン。上のフレーズの「紳士に」は「ステキに」と言い換えてもいいかもしれませんが、ゲーム/アプリになぞらえるなら「ユーザーはただ使えるだけなく、気分良く使いたいと願っている」になるかもしれません。マジシャンは、観客が選んだトランプが当てるだけでなく、切れ目のないレモンの中から出現させ、観客を驚かせます。
よくマジックを見て、タネを明かすことに一生懸命な人がいますが、マジシャンの本当の秘密がUXにあることに気がついていない残念な人。「たんにできる」というトリックの構造と「観客をいい気分にさせる」ための演出には、天と地ほどの差があります。それは、コンピュータやスマートフォンの構造がわかったからといって、誰もがスティーブ・ジョブズにはなれないことと同じです。
昔からマジシャンたちは「どうやって観客のカードを探し出すか」よりも、「それをどんなふうに見せるか」に心を砕いてきました。その秘密を少し説明するなら、無駄なモノを排除して、スムーズにおこない、そして、あえて少しだけ予想を外すこと。それはマジックに限らず、アプリやゲームのUXの本質と同じだと僕は思っています。
前田知洋(まえだ ともひろ)
東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。
著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。現在、ビジスパからメルマガ「なかマジ - Nakamagi 2.0 -」、「Magical Marketing - ソシアルスキル養成講座 -」を配信中。
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