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グーグルはモバイルWebにどんな備えをしているのか?

2015年01月07日 07時00分更新

文● Matt Asay via ReadWrite

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アップルに追いつき、いよいよその流れは素晴らしいものになってきた

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そろそろグーグルが自分のルーツを思い出す頃だ。ここ数年、グーグルはモバイルWebをほとんど無視しており、アップルですら(そう、あのアップルですらだ)iOS上でのHTML5のパフォーマンス改善に多くの投資をするなか、Androidのネイティブアプリに力を注いできた。

結果、iOS8でのブラウザエンジンであるWKWebViewを含め、開発者はモバイルWebアプリのパフォーマンスが大きく改善された事を認めた。もっともそれはアップルにおいての話であり、Androidは別だ。

挙句の果てにはマイクロソフトですらグーグルを抜き去ってしまう始末だ。ある開発者によれば、「WinRT上ではHTML技術を使って、.NET/C++で作ったのと同様にシステムへのフルアクセスが可能なアプリを開発できる」という。

グーグルがChrome Developper Summitで明らかにしたことによれば、彼らはモバイルWebについて非常に大きな意味での再発見をしたという。

グーグルがWebに(また)恋をした

もしChrome Developper Summitに参加できないのであれば、グーグルはその様子をYoutubeで公開している。かいつまんで言うと、DivshotのCEO マイケル・ブレイはそのサマリーで大事な点に触れている。グーグルはアップルがそうしているように、モバイルWebアプリの改善に巨額の投資を行っており、その改善には機能面も含まれる。

ブレイのサマリーで注目すべきは

グーグルはモバイルWebでユーザーが必要とする事を叶えるために、60fps、つまり1フレーム辺り16msを実現しようと手を尽くしている。社がこの為に何をしているのかを全て列挙することだけでも難しいほどだ。

パフォーマンスの改善の他にもアップルが必死になって改善に取り組んでいるように、グーグルも取り組んでいる事がある。例えばapp manifest(あなたの作ったアプリが一体どのようなもので、どうやって起動するのかをChromeに対して定義する仕組み)などは有望だ。しかしながらサミットでの大きなニュースといえば、ServiceWorkerだ。ブレイはこれを「実に、本当に素晴らしいものだ」と紹介した。

どういうことだろうか? これは「ブラウザのネットワークレイヤへのプログラミングが可能になる仕組み」であり、つまり「オフライン時の問題を完全に解決できる」からだという。

オフライン時というのは重要な問題であり、今日のWebアプリとネイティブアプリとの対比において最も決定的な部分である。アレックス・ラッセルがトークで「タップした時動かないのであれば、それはアプリではない」と述べた。ServiceWorkerが(2014年末ごろに)登場すれば、間も無くブラウザ上でプッシュ通知を見ることになるだろう。この事は、簡単な機能の許可設定でWebサイトはユーザーに訪問してから数日後、数週間後あるいは数カ月後に通知を送ることができることを意味する。通知がモバイルプラットフォームにおいて更に重要性(およびインタラクティブな性質)を増す中、Webがこれに関与する様になるのは素晴らしいことだ。

言い換えれば、グーグルはWebをネイティブアプリと同等の所に持って行こうとしている所なのだ。WebアプリにはAppストアが抱えているような配布の問題が無い為、ある意味Webアプリはネイティブアプリより良いものになるだろう。グーグルはWebアプリをモバイルの第一と考えていることから、アップルとグーグルにより未来のモバイルが2つに分裂する恐れは少ないだろう。

なぜこのタイミングでWebなのか

しかしグーグルがこの結論に到達するまでに、なぜこれ程の時間がかかったのだろう? グーグルにとってWebが重要であるとするべき理由付けは難しくない。
この企業はWebで生まれ、Asymcoアナリシスによればネットユーザーあたり年間6.30ドルの収益を上げているという。

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Credit: Asymco

ネットにアクセスする人が増えれば、それだけグーグルも収益を上げる。モバイルにおけるユーザーあたりの収入は、デスクトップユーザーのものと比べてまだ低く、またあらゆる世代からまんべんなく収入を得られてるわけでもないが、それでもグーグルにとってインターネットはドル箱だ。

Androidを浸透させることでグーグルがより多くの人をネットに押しこもうとするのもこれで説明できる。しかしこれではモバイルWebについて取り組んでこなかったことの説明としては不十分だ。

EmberJSのトム・デールはグーグルが直面しているAndroidとWebとの競合について、ReadWriteのインタビューで初めて取り上げた。

グーグル、少なくともその中のあるチームはHTML5の強力な支持者であったが、グーグルにとっての2014年は自分たちがどうあるべきなのかについて悩み苦しんだ年だった。そこから発せられるシグナルに様々なものが入り混じったものだったとしても驚くことではない。私は思うに、グーグル社内でアップルに立ち向かうためにAppストアとプロプライエタリな開発環境でいくか、Webで行くかについてバトルがあったのだろう。

そしてWebへの回帰は、Androidの立役者であるアンディ・ルービンの退職へとつながる。

アンディが会社を去り、サンダー・ピーチャイがChromeとAndroidを引き継いだ事で、賢いものが勝ち残ったことになると思う。向こう数年でChrome(すなわちWebテクノロジ)とAndroidの結び付きは更に強くなるだろう。グーグルの主な収入源は広告であり続けることから、ユーザーがWebから離れるような選択肢はどのようなものであれ彼らにとって間違いだと思う。社内闘争の結果、彼らは再び、昔と同じ結論に行き着いたのだ。

Web第一か?

理由やタイミングがどうであれ、グーグルが自分のホームグラウンドに投資をし始めたのは素晴らしいことだ。

グーグルのこういった動きによって、最終的に私達はネイティブアプリかWebかという二択について悩むことが無くなるだろう。Forresterが説明するように、どちらも必要なのだ。グーグルによって、Forresterが予見していることは、想像しているより早く現実となるだろう。

ネイティブアプリは昔のクライアント・サーバー時代ではあらゆる所にあったが、PC時代ではWebアプリが取って代わった。これらのWebアプリはインストールやメンテナンスが容易で、セキュアだった。また異なる環境への移行コストもやすかった。(向こう5年の)モバイル時代でも歴史は繰り返されることだろう。ユーザーが情報をチェックしては、すぐに別のタスクにとりかかるようなアプリの場合は特に顕著だろう。

更にWeb寄りにということは我々にとっていいことだ。グーグルにとっては殊更に良いことだ。

Matt Asay
[原文]


※本記事はReadWrite Japanからの転載です。転載元はこちら


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