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テクノロジー虎の穴 第6回

通信衛星、GPS、地球観測……私たちの生活を支える様々な宇宙の技術

松浦晋也氏に訊く、はやぶさ2と宇宙のテクノロジーのこれから

2014年12月17日 09時00分更新

文● 松野/ASCII.jp編集部

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衛星写真が無料で提供されるようになる?

地球観測はこれから、と松浦氏は語る

――通信衛星、GPSと話が進んできました。今後、コモディティー化すると面白い宇宙の技術はどんなものが考えられるでしょうか。

松浦 「僕は、地球観測はこれからだと思っています。軍用の偵察衛星のほか、70年代から民生の観測衛星も飛んでいましたが、しばらくの間はアメリカが、あまり細かいものを撮ってはいけないと民生向けに制限をかけていた。その一方で、衛星画像の解像度を高める技術を研究していたんです。なぜ必要かと言えば、旧ソ連の核ミサイルの配置を知るためですね。不意打ちを食らわないためでもありますが、核軍縮交渉のカードにも使えたんです。ただ当然、冷戦が終わると必要なくなる。そこで何をしたかと言うと、これもクリントン政権の時ですが、偵察衛星レベルの画像を撮ってもいいよと通達を出したわけです。その衛星の走りがアメリカの『IKONOS』ですね。99年の打ち上げですが、今でも使い勝手が一番いい観測衛星だと言われています。」

――GPSの話と同じ構図ですね。民間に技術が解放されて、こうやって使えばいいのか、というのが分かってくると。

松浦 「現在は、25cm×25cmが1ピクセルとなる画像までは撮影してもいいよという決まりになっています。ただ、衛星写真は今まであまり一般に活用されてこなかった。よく出てくるのは、隣の国でミサイルが飛びそうになったときですね(笑)。あれは通信社が民間の地球観測衛星に撮影リクエストを出して、画像を買ってテレビなんかに出しているんです。これに関しては面白い話があります。衛星画像を扱っている商社がいくつかあるんですが、リクエストした時点で、同じ場所にリクエストが出されていて撮影済みの写真があると、商社はそれを安く売ってくれるんだそうです。で、ああいう発射場の写真なんかをメディアの人間が買いに行くと、必ず撮影済みになっている。誰が買ったかは言ってもらえないけど、まず間違いなく防衛省だろうと(笑)。公表されている防衛省の随意契約一覧を見れば分かるのですが、日本の防衛省は実はけっこうな額、アメリカの地球観測衛星の画像を買っていますよ」

――初めて知りました(笑)。

松浦 「活用といえば、今まではそんなもんだったんです。それがこれから変わるだろうと思っています。今年グーグルがSkyboxというベンチャー企業を買収しましたが、Skyboxは80cm×80cmが1ピクセルの画像が撮れる簡単な衛星を山ほど上げていて、高い頻度で撮影ができる。さらに姿勢を制御して、1点を映した動画も撮れるんですよ。

 今までの衛星画像は衛星の開発費や維持費を原価償却しなきゃいけませんから、それなりに高かったわけです。しかしグーグルは基本的に広告会社で、衛星画像で儲ける必要はありませんから、下手をするとSkyboxで撮った衛星画像がGoogleマップでどんどん出てくるようになるんじゃないかと。そうなればさっきの話と同じで、色んな人が使うようになって、おそらく何かが変わってくるんじゃないかなと思っていますね」

(次ページ、「『プライバシーの概念が変わってくる』」に続く)

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