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1999年以来の日本開催、国際電気標準会議(IEC)が2014年東京大会

2014年11月11日 18時30分更新

文● 大河原克行

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会見に出席した(左から)日立製作所の東原敏昭代表執行役社長兼COO、IECの野村淳二会長(=パナソニック顧問)、日本工業標準調査会(JISC)の野間口有会長(=三菱電機相談役)、パナソニックの津賀一宏社長

 国際電気標準会議(IEC=International Electrotechnical Commission)は、11月4日〜14日まで、東京・有楽町の東京国際フォーラムにおいて、年次大会「2014年IEC東京大会」を開催している。

1999年の京都大会以来、4回目

 11月10日には、IECが「2014年IEC東京大会」に関する記者会見を実施。日本工業標準調査会(JISC)の野間口有会長(=三菱電機相談役)は、「今年で78回目を迎えるIECが日本で大会を開催するのは、1965年、1983年、そして1999年の京都大会以来となり、4回目。84ヵ国から約2600人の出席者が登録されている。

日本工業標準調査会(JISC)の野間口有会長(=三菱電機相談役)

 日本からは、経済産業省の審議会であるJISCがIECに加盟しており、個別の技術分野の活動には産業界、大学、研究機関などが参加している。今回の日本でのIECの大会開催にも日本の産官学が連携し、50を超える個別技術分野での会合が開催されている。

 また、スマートグリッド、スマートコミュニティ関連の取り組みが今回の大会では重要なテーマになっている。国際標準化への日本の貢献だけでなく、海外からの参加者に技術や文化、生活に触れてもらういい機会である。2011年3月の被害から雄々しく立ち上がり、スマートな社会を作りつつあることを見てもらうのにもいい機会だ」とした。

大会コンセプト「Integration toward a Smarter World」

 IECは、電気・電子技術などに関する国際標準化や適合性評価等の活動を通じ、国際貿易の振興と製品やサービスの利用者の利便性向上に寄与する国際機関で、加盟国数は82ヵ国、規格数は約7000に達している。

 IEC東京大会は、主催国となる日本が独自の大会コンセプト「Integration toward a Smarter World」に基づいて、シンポジウム、技術展示会などを開催。日本の優れた技術や取り組みを世界に伝え、世界的な課題の解決に貢献するのが目的だ。

 「独自にコンセプトを設定したのは、今回の大会が初めてのこと。ホスト国である日本の責任として打ち出した」(JISCの野間口会長)とした。

 大会期間中、IECの方針を決める総会や上層委員会などの公式行事、技術委員会(Technical Committees/Subcommittee)ほか、一般が参加できる展示会やシンポジウムも開催されている。

 11月11日には、「イノベーションで市場を拓くための国際標準化」をテーマに国際標準推進シンポジウムが開催され、産業技術総合研究所の中鉢良治理事長の挨拶に続き、経済産業省産業技術環境局・片瀬裕文局長による基調講演などが行なわれる。

 常設展示では、NTT、ソニー、富士通、三菱電機、日立製作所、東芝、パナソニックの協賛企業7社が出展し、各社の最新技術などを展示したほか、協賛企業および団体26社による技術展示会も行なわれている。いずれの展示も無料で見学できる。

ICカード利用時のアクセシビリティ向上に関する実証実験

 さらに、一般社団法人ビジネス機械・情報システム産業協会が、ICカード利用時のアクセシビリティの向上に関する実証実験を実施。日本提案に基づき制定されたふたつの国際規格である、ISO/IEC 12905:ETA(JIS X 6905:情報端末の操作性を向上させるカード所持者優先情報)と、ISO/IEC 7811-9:TIM(JIS X 6302-9:触ってカードを区別するための凸記号)を活用し、同国際規格の利便性の認知拡大と応用領域の拡大を目指すという。

 IECの野村淳二会長(パナソニック顧問)は、「標準化は欧州が発祥の地であり、欧州がリードしているのは確かだが、参加している企業の数や委員の数では、欧州と同じ規模になっている。経済産業省をはじめ、標準化を国策として進めるという成果によるものである。IECの規格は、TPPにおいても電気安全の上で認められるものであり、実務的なメリットもある」などと述べた。

IECの野村淳二会長(=パナソニック顧問)

 なお、IECの大会開催国と、IEC会長が同一国になることは珍しいという。

共生自律分散でスマートシティをつなぐ

 会見では、出席した日立製作所の東原敏昭代表執行役社長兼COOと、パナソニックの津賀一宏社長が対して、スマートシティに対する取り組みについて言及。

日立製作所の東原敏昭代表執行役社長兼COO

 日立の東原社長は、「日立は、共生自律分散という考え方に基づいて、スマートシティをつないでいくことを狙っている。共生自律分散は、先頃開催した日立イノベーションフォーラムで会長の中西(=中西宏明執行役会長兼CEO)が初めて外部に公開したものであるが、私の経験では、JR東日本のATOSが、この考え方に基づいたものになる。

 駅をコンピューター化することで、その駅同士をつなぎ、安全な運行を行なうというもので、ひとつの駅のコンピューターが壊れてもまわりの駅同士がカバーし、リスク分散でき、しかも分散しているためレスポンスも速い。これを20年間かけて駅同士を少しずつつないできた。

 スマートシティにおいては、まずはひとつのスマートシティの中で熱とエネルギーの最適化をするが、別のスマートシティをつないでさらに最適化し、さらにこれを順番にスマートシティ同士をつなげていって、地域の熱やエネルギー、交通の最適化を図る。それが共生自律分散である。

 日立は、規格を決めて、これを早くグローバルに展開していきたい。ただこれは1社では難しい。標準化を進めてプレイヤーを募っていることが重要である」とした。

規格化を待って動き出すのでは遅い、手探りでやっていくことも大切

 パナソニックの津賀一宏社長は、「日立は大きな都市と都市を結んでいくことになるが、パナソニックのポジションは、どちらかというとコンシューマー寄りの企業であり、家や自動車のように、お客様が働いて稼いだお金で私有財として購入するというものが多い。

パナソニックの津賀一宏社長

 これまで情報の流れは独立していたが、リアルワールドと相互に流通していく環境を作り出し、これが社会インフラとつながる端末になってくるだろう。その端末は、従来のように単体で動くのではなく、システムで動くことになる。そのシステムも、どうブレイクダウンしていくのかも重要な要素だ。規格化も重要だが、手探りでやっていくことも大切だと感じている。従来のように規格化を待って動き出すのでは遅い。スマートソサエティの世界にもいち早く踏み出すことが必要だ」と述べた。

 また、「IoTは大きなチャンスを生む領域である。情報とリアルな世界が結びつく世界といえる。情報が吸い上げられて、リアルな世界に反映される。しかし、この世界がどんな形になるのかということは、なかなかモデル化できないだろう。シンプルなものでは表現できないし、進化したモデルがどうなるのかもわからない。先見性を持って、今IoTの世界を論じきれる企業も人もいないだろう。それだけ複雑な領域である。

 実証をやりながら、モデルを構築し、規格につなげていくという繰り返しによって、前に進んでいくことになるだろう。産業におけるパートナーシップをどう結ぶのかも鍵になる」と語った。


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