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前田知洋の“タネも仕掛けもあるデザインハック” 第51回

本の著者になるには? 今どきの書籍制作ワークフロー

2014年10月10日 09時00分更新

文● 前田知洋

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編集者からコンテが上がってきたら、ワープロ・アプリに移行

 原稿を書きはじめ、しばらくすると編集者からコンテ(レイアウトの提案)が送られてきます。この時代でもエンピツで手書きで送られてくること多いです。そのコンテに合わせて、ワープロソフト(筆者はPages)にドラフトのレイアウトをしていきます。

 文芸やビジネス書には、ほとんどが文字の書籍もありますが、僕の仕事はマジック。イラストや写真が多用されます。たとえば、今手がけている新刊のマジックのレッスン本には、500点近い写真が使われています。

 そこで、ドラフトのレイアウトに配置された写真の取り違えなどをしないように、僕がデジカメで撮影したダミー写真を仮割り付けをしておきます。同時に、それが「こんなシーンを撮影して欲しい」という、編集者や写真家への写真コンテにもなります。

編集者、デザイナーとのやり取りはPDF

 このころになると、学級新聞っぽい、本のドラフトができあがります。撮影も進行し、プロの写真家による画像データが送られてきますので、トリミングや拡大/縮小を含め、Pagesの写真と差し替えていきます。プロの写真がレイアウトされることで、学級新聞から急に書籍らしくなります。

プロの写真家の画像がデザイナーにレイアウトされると見違えるようになるとやっと本の姿が見えてきます。

 同時進行で、編集者による文字直しのやり取り(「てにをは」の単純な打ち間違いや、「的を射る/的を得る」のような誤用など)。こうしたファイルはPDFファイルでやり取りします。

本を書くならレーザープリンターが必須かも…

 文字直しをすることを「赤を入れる」なんて表現するように、一番効率がいいのはプリントアウトした紙に赤ペンで注釈を書き入れる、昔ながらのスタイル。それなら車や電車で移動中もチェックができます。著者か編集者が赤字を打ち直し、それを双方で読み直すことを繰り返します。ここはPDF修正のアプリの普及と発展を期待したいところですが、フリクションペン(消せるボールペン)の登場で、この作業は少しラクになりました。

カラーレーザープリンター。1回のトナー交換で1000枚くらいプリントできます。

 200ページほどの一般的な書籍の場合、このあたりで総プリントアウト数が600枚(200ページ×3回分)を超えます。コンビニのネットプリント(@¥50)だと3万円になりますので、出力単価の安い、レーザープリンターを買うのを悩む分岐点です。出版社で出力してもらい、宅配便というパターンもあります。このあたりの作業は、出版のプロセスを富士登山にたとえるなら5合目くらい(笑)。

今度は皆で顔を突き合わせる作業

 編集者と出版担当、著者が集まって、タイトル、値段や書籍に使われる紙、表紙のイメージなどを決めていきます。アートディレクターが(いる場合は)参加することもあります。ここをスムースに乗り越えるには、写真撮影の段階で、表紙や装丁などのコンセンサスがとれていることが肝心。

付箋の数だけ直す箇所が…。全部直してもドラクエのモンスターのように再び登場します(笑)。

 書籍は「女性向け」ということもあり、編集者、写真家、デザイナー(アートディレクター)、全員を女性にお願いしました。「レーザープリンターの色は正確に出るのか?」、「ドラクエのモンスターのように出現する誤字、打ち間違い」「出版記念イベントに人は集まるのか?」など、波瀾万丈の次回に続きます!

 新刊『前田知洋の女性のためのマジックレッスン』(東京堂出版)もどうぞよろしくお願いいたします。

前田知洋(まえだ ともひろ)

 東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。

 著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。現在、ビジスパからメルマガ「なかマジ - Nakamagi 2.0 -」、「Magical Marketing - ソシアルスキル養成講座 -」を配信中。

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