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もはや数少ないカセット機器、それでもニーズはある

新ダブルカセットでテープ聴き比べ アナログは本当にいい?

2014年09月21日 12時00分更新

文● 四本淑三

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アナログゆえ音の劣化は避けられない

 どちらのテープにしても、音が随分と変わることに驚かれたと思います。特に産まれてからデジタルメディアに囲まれて育った平成世代のみなさんはそうでしょう。

 たとえば一定のレベルで聞こえる「シャー」という雑音、これが「ヒスノイズ」で、磁気テープにアナログ信号を記録し、それを再生する際に必ず起きます。

 もうひとつ、音が濁ったように聞こえるのは、歪と「ワウフラッター」の影響です。テープやレコードのような回転系のアナログメディアでは、偏心や摩擦、ガタなどによって回転ムラが起きます。それによって変化した周波数と、本来の周波数との比がワウフラッターです※1

 カセットデッキの全盛期の80年代には、このワウフラッターが0.02%台の製品や、それを下回る製品も存在しました。W-890MKIIのワウフラッターは0.25%(W.RMS)で、決して良くはありません。ですが、70年代、80年代のラジカセやウォークマンのような携帯プレイヤーなど、特にスペックを謳わないカジュアルな再生装置は、この程度の性能だったはずです。

 最近の同世代の大人は「アナログの音を知らない今の若者は可哀想」とか「mp3で音楽を聴いていると耳が悪くなる」などと言いますが、再現性という点では現在の再生装置の方が優れているはずです。それは前述したヒスノイズ、ワウフラッターがないことに加えて、もう一つ。

 同じ機器で録音・再生していると気にならないのですが、メーカーや機種、あるいは個体差でテープの走行速度が微妙に違うため、コンパクトカセットはピッチを正確に再現できません。こちらの方が、よほど音楽的に耳が悪くなると思うのですが、いかがでしょうか。

※1 現在のワウフラッターの測定方法は、JIS規格 C5569 「録音再生機器における速さ変動の測定方法」で決められています。

(次ページでは、「それでもカセットに長生きしてほしい」

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