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アドビ初のPan-CJKはどのようにして生まれたのか

「源ノ角ゴシック」を実現させたアドビ西塚氏の勘と感覚

2014年07月29日 10時00分更新

文● 貝塚怜/ASCII.jp編集部

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アドビ Japan R&D 日本語タイポグラフィ シニア デザイナーの西塚涼子氏。「かづらき」「りょうゴシック」のデザインを担当したことでもしられる人物だ

 開発に3年をかけたアドビのPan-CJK(汎 中日韓)フォント「Source Han Sans(和名:源ノ角ゴシック)」が7月16日にリリースとなった。

 「日本語、中国語の繁体字・簡体字、韓国語いずれも1つのフォントファミリーでカバー」と聞くと、「ああそうなんだ。カバーできるんだ」とすんなり飲み込んでしまうが、Source Han Sansは、日中韓国語をカバーし、かつ「どの国にとっても自然」という点で画期的なフォントだ。

 同じ起源を持ち、近い意味を表す漢字でも、日本と中国、韓国とでは書体が異なる。繁体字と簡体字でも全く異なるし、各国に固有の漢字もあるから、話はさらに複雑だ。「どんな書体なら自然なのか」は国によって全く違うのだ。

 国ごとの違いや好みに対応しながら、同一フォントとしての統一感を持たせる……ちょっと無理そうに思えるこの試みを、アドビはどのように実現したのだろう? 日本語のデザインを担当し、中国、韓国の拡張部分についてもデザインを監修したアドビ Japan R&D 日本語タイポグラフィ シニア デザイナーの西塚涼子氏に聞いた。

目指したのは、「あ」を思い描いた時に浮かんでくる「あ」

—— 「Source Han Sans」はアドビ初のPan-CJKだったり、グーグルと協業で開発していたりと、何かと話題性の高いフォントだと思いますが、今回はデザインの部分を中心にうかがっていきたいと思います。どういう位置づけのフォントとして始まったんですか?

源ノ角ゴシックによる「あ」。限りなく「あ」な感じがする

 「私のデザインの中でですけど、アクを落としたというか……『素直に、すんなり読めるデザインのフォント』がもっとも初期のコンセプトです。

 アクを落としたというのは、『あ』を思い描いた時に、『あ』っていう文字はこんな感じだな、って浮かんでくる『あ』がそのまま素直にかたちになっているっていう、そういう意味です」

—— ということは、そこからまた方向性が変わっていったのでしょうか?

 「そうですね。はじめは、今よりもう少しトラディショナルなデザインを目指していたのですが、企画が進んでいく中で、『完成したらコンテンツにもインターフェースにも使っていきたい』という意見が出たんですね。そういう場合、トラディショナルすぎると、スカスカ空いた印象になってしまうんです。

 『長文を組んでも自然で、ウェブのコンテンツやユーザーインターフェースに使っても大丈夫』という隙間の隙間のところを狙って、グーグルさんからのフィードバックも反映しつつ、最初のコンセプトから徐々に舵を切っていったイメージです」

—— 基本的なコンセプトが決まってから、途中でコンセプトが変化していくというのは、タイポグラフィの分野でよくあることなんですか?

 「あります。今回は、少しモダンに振ったトラディショナルなところから、さらにモダンに寄ったので、大きく変わった方かもしれませんね」

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