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サーバールームでも導入可能なベストプラクティスを公開中

データセンターの省エネはEUに学べ?行動規範について聞く

2014年07月14日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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データセンターの省エネを推進しているグリーン・グリッドのフォーラムで基調講演を行なったマーク・アクトン氏に、省エネのベストプラクティスを公開する「EU行動規範(Code Of Conduct)」の取り組みについて聞いた。

小さいサーバールームでも活用できる省エネノウハウ

 ブームとしてのグリーンITが落ち着いた感があるが、ヨーロッパでは今でもデータセンターの省エネが喫緊の課題だという。今回、話を聞いたマーク・アクトン氏は、データセンターのエネルギー効率を向上させるべく作られた「EU行動規範」のプログラムを推進している。

EU行動規範 データセンター ベストプラクティス 選考委員会 委員長 マーク・アクトン氏

 EUで進められているこのEU行動規範はデータセンターの省エネのために実証されたベストプラクティスをリスト化する取り組み。日常業務、通常の更新サイクル、サーバーの追加、エネルギー効率化のプログラム、そして新規データセンターの設計などのシナリオが用意されており、現在は100以上が一般に公開されている。

 公開されているベストプラクティスは、最新技術を用いたものから、いわゆるローテクな取り組みまでさまざまだ。ホットアイルとコールドアイルを分けるとか、キャビネットでブランキングパネルを取り付けるなど、シンプルなものを集めて、効果の高いもの、低いものをスコア化している。アクトン氏は「実装すると高価なものもあるが、安価に実現できるものも多い。省エネへの実践が日々の業務で有用性を持ってほしいと考えている」と語る。事業者だけではなく、社内の小さいサーバールームの運用でも活用できるのが、ベストプラクティスの大きなポイントだ。

 また、さまざまな利用形態をカバーしているのも特徴。たとえば、コロケーションの場合は、ユーザーはラック内のみ対象だし、自前の建屋を持っている大手の金融機関であれば、ファシリティやIT機器など、すべてが対象となるだろう。また、既設のデータセンターと、新設するデータセンターではできることも異なる。「自分の責任範囲でできることをやろうというのが、ベストプラクティスの狙いだ」(アクトン氏)。

 EU行動規範は申請・承認のプロセスを経たデータセンターの所有者や運用者などの参加者(Participant)、ベンダー、コンサルタント、業界団体などの賛同者(Endorser)によって実践されることになる。参加者はアクションプランの提出と定期的なモニタリング、報告などを行なうことで、省エネの取り組みをアピールできる。また、エネルギー消費量が低いというスコアが獲得された場合は、年1回のデータセンターアワードにノミネートされる。

 2013年時点で、ヨーロッパ21カ国の225のデータセンターが行動規範の参加者として承認されているほか、米国で4カ所のデータセンターを運営するeBayが唯一北米の参加者としてエントリしているという。

エネルギー消費の危機感が米国やアジアと違う

 こうした行動規範の背景にあるのは、もちろんエネルギー消費の増大がある。EU28カ国の2003~2012年までの消費電力を見ると、全体の電力消費の増加率が4%なのに対し、業務用の消費電力の増加率は21%にも上るという。また、ある調査では2007年時点のデータセンターの総エネルギー消費量は、年間の消費電力量の2%を占め、2020年には消費量が倍になる見込みだという。

 アクトン氏は、特にヨーロッパは省エネの取り組みや考え方が、米国やアジアとかなり異なると指摘する。「ヨーロッパでは、電力コストが米国よりかなり高く、炭素税の導入が進んでいる」(アクトン氏)。電力消費の多いデータセンター事業者にはコストの影響が大きいので、行動規範のような施策に本腰を入れる必要があったわけだ。「ヨーロッパは新しい技術への適用が早いと思う。外気空冷の導入もヨーロッパの方が米国よりはるかに早かった」(アクトン氏)。

 省エネの機運が高まる中、2007年には行動規範の議論が開始され、翌年には、原型に当たるものが生まれた。東日本大震災やグリーンITブームよりもかなり前にヨーロッパではデータセンターの省エネが意識されていたことになる。「省エネに関する立法化の可能性、消費電力増加への危機感などがあった。メディアもデータセンターの非効率性を指摘し始め、グリーンピースの「Dirty Datacenter Report」などでやり玉に挙げられた」(アクトン氏)。こうしてスタートしたプログラムがスタートして時間は経つが、小さいことからコツコツという行動規範への関心は高まっており、PUEの値や表彰などにもその効果が現れているという。

 「アワードでも、単にお金をかけるということではなく、意気込みや改善のために心意気、自身のやりたいことをどれだけ効率的にできたかを評価したいと思っている」とアクトン氏は語る。

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