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イスラエルITいろはにほへと 第4回

加速する日本-イスラエルの経済連携

2014年07月08日 16時00分更新

文● 加藤スティーブ(ISRATECH)

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エルサレムのクラウンプラザホテルで現地時間の7月6日、「日本・イスラエル・ビジネスフォーラム」が日本貿易振興機構(JETRO)と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、中東協力センター(JCCME)の共同主催で開催された。

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イスラエル経済団体連合会のツヴィ・オレン会長

フォーラムの冒頭には茂木敏充経済産業大臣が登場。経済産業大臣のイスラエル訪問は初めてであり、今後いろいろな施策を実行していくという力強いスピーチを述べた。日本政府の進める「INVEST IN JAPAN(日本に投資を)」と呼びかける茂木大臣に対して、続いてあいさつに立ったイスラエル経団連のツヴィ・オレン会長は「イスラエルの投資が海外に流れるのは望まない。日本への投資よりも、両国は共同研究開発等の協業関係を」と述べた。

セッションでは今後、日本とイスラエルとの間でフォーカスすべき3つのテーマに関してディスカッションが開催された。

1つ目のセッションは「ベンチャー投資」。イスラエル経済省投資促進局センターのオデット・ディステル・センター長、日本通で知られるVertex Venture Capitalのデビット・ヘラー氏、日本からは三井物産代表取締役執行役員の木下雅之副社長、5月からイスラエルへ移住したサムライインキュベート代表取締役の榊原健太郎社長、エス・アイ・ピー代表取締役の斎藤茂樹社長、コランダムイノベーション取締役の武田健二CTOらが登壇した。

2つ目のセッションは「研究開発と先端技術」。衝突事故防止・軽減システムのモビルアイからアムノン・シャシュア会長が登場したほか、日本からはパナソニックの吉田 守常務取締役、富士フイルムの早川利郎執行役員、また日本のベンチャーとしてマッスルの玉井博文代表取締役とスパイバーの東 憲児取締役兼執行役が参加した。

欧米のテクノロジー企業の多くは、イスラエルに研究・開発機関を設けているが、日本の企業は、研究・開発という目的であまり拠点整備が進んでないのが実情。「ベンチャー投資」と「研究開発と先端技術」というセッションテーマは、それぞれが密接に絡むと相乗効果を発揮しやすく、本フォーラムの狙いもまさにそこにあるようだ。

「サイバーセキュリティー」と題した3つ目のセッションは、イスラエルのサイバーセキュリティー企業を招いて行われたが、今年5月にネタニヤフ首相が来日した際にも重要テーマとして挙げられており、今回政府間協議の場も持たれている。

フォーラムでは、参加企業の中から14社が各5分のプレゼンを行った。その中では、サムライインキュベートのイスラエル進出の動きが過去に例のない画期的なものとして注目される一方、イスラエル政府関係者や経済界の中からは同社の榊原社長への戸惑いの声も聞かれた。従来の日本企業トップのイメージを打ち破る一方で、首相官邸でネタニヤフ首相と1対1の面会を与えられるといった厚遇に賛否両論の声があがったからだ。

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フォーラムのあと首相官邸で行われた面会での、茂木経産大臣(左)とネタニヤフ首相(右)

今回、イスラエルと日本との間の経済交流を促進するため、日本の経済産業省とイスラエルの経済省との間で産業R&D協力に関する覚え書きが交わされたことは大きな成果の一つだ。この覚え書きに基づいてNEDOとイスラエル産業技術開発センター(MATIMOP)の間でも、共同研究開発やプロジェクトの公募・審査・助成といった支援の実施方法を取り決める覚え書きが結ばれ、具体的な連携が加速することが予想される。

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覚え書きに署名する茂木経産大臣(右)と、イスラエルのナフタリ・ベネット経済相(左)


(取材協力:岡田一成/JICイスラエル代表)

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